88ゲーム回想録(41)「バック・トゥ・ザ・フューチャー」


バック・トゥ・ザ・フューチャー
発売元:ポニカ
発売時期:1986年12月
定価:6800円
機種:PC-8801mkIISR以降
ディスク2枚組

 


バック・トゥ・ザ・フューチャー」は、
1985年にロバート・ゼメキスが監督した傑作SF映画。
科学者のドクが開発したタイムマシーンで
過去に来てしまった高校生マーティ・マクフライが、
何とかして未来へと戻ろうとするお話。
本作は「バック・トゥ・ザ・フューチャー」1作目を
アドベンチャーゲーム化したタイトルである。

 


ドクはここ数日、僕に黙ってどこかへ雲隠れしている。
一体どこへ行ってしまったんだろう?
いきなり電話がかかってきた。
>とる でんわ
「マーティか、私だ。」
電話はドクからだった。
「ついに長年の研究を試すときがきた。
夜の1時15分にツインパインズショッピングセンターの駐車場まで来てくれ。」
「Ok ドク」そのとき、一斉に時計が鳴った。
「8時か!やった、25分ぴったり遅れたぞ。」
遅刻しそうだ。僕は大急ぎで学校へ向かった。

 


また遅刻してしまった。これで4日連続。
オマケに見つかったのがストリクランド先生で
マクフライ家の人間は、落ちこぼればかりだ。」
なんて嫌味まで言われてしまった。

 


僕はいまロックに夢中。
今日は学校のダンスパーティーのバンドのオーディションの日だ。
僕のグループ「ピンヘッド」なら絶対合格だと思った。
しかし結果は落選。今日はついてない。

 


放課後、ガールフレンドのジェニファーと街を歩いていた。
街ではゴールディウィルソンを市長に再選しようと派手に宣伝している。
ジェニファーは、
「あなた達の演奏は素晴らしかったわ。音が大きすぎただけよ。
デモテープをレコード会社に送れば絶対よ!」
と励ましてくれた。
しかし、僕には自信がない。

 


そんなとき、中年女性が声をかけてきた。
彼女は寄付を求めているのだ。
>寄付する 25セント
女性は1枚の紙切れをくれた。
「パンフレットを差し上げましょう。時計塔の事が詳しく書かれています。」
ジェニファーは、今夜電話してと言ってパンフレットに番号を書いてくれた。
“愛してるわ”というメッセージとともに。

 


家に帰ってみると、父の車はペシャンコになってレッカー車に引かれてきていた。
明日の夜はジェニファーとドライブの約束だったのに。
家の中では父の上司のビフが文句を言っている。
「欠陥車とも教えないで、俺に車を貸したな!」
「ビフ、今までどこも悪いとこなんて無かったんだ…」
父は弱々しく言い返すのが精一杯だ。
結局父は、ビフの起こした事故の責任を取らされたようだ。
父はハイスクール時代からビフに頭が上がらないらしい。

 


夕食の時間になり、一家全員が揃った。
僕の家族は5人。頼りない父と最近太り気味の母、それに兄と姉がいる。
姉が僕に「さっきジェニファーって言う娘から電話があったわよ。」と教えてくれた。
すると母が「男の子に平気で電話してくる娘は、好きじゃないわね。
私の若い頃は、そんな事しなかったわよ。」と僕に言った。
それを聞いた姉は母に聞いた。
「どうやって男の人と知り合うの?」
母は微笑みながら答えた。
「偶然よ。おじいさんが偶然お父さんを車でハネたのを私が看護したのよ。
そして次の週末に学校で“深海のダンスパーティ”があって、
はじめてデートしたのよ。
ダンスフロアでお父さんがキスしてくれて…、そう言えば雷の凄い夜だったわね。」
仕方なく自分の部屋へ行った。

 


今日の事を考えているうちに、いつの間にか眠り込んでいた。
真夜中、電話の音で目が覚めた。
>とる でんわ
「ハロー」ドクの声だ。
「マーティ、すまんが用事を頼みたいんだ。ビデオカメラを忘れてな。
家へ寄って持ってきてくれ。」
そう言うと電話は切れてしまった。
>いく
僕はドクに会い行くための支度を始めた。
次の中から必要なものを選んで下さい。
・カセットプレーヤ
・パンフレット
・マッチ
・とけい
・サインペン
・さいふ
スケートボード
メモちょう
・サングラス
・くし
・めんきょしょう
・ドライヤー
(上記から5つ選択)

行き先は? 
>ツインパインズ

 


ショッピングセンターの駐車場には、
見慣れたドクのバンと愛犬アインシュタインがいた。
そのとき、バンのハッチが開き、エンジン音とともに銀色に輝く車が出てきた。
デロリアンだ!しかも後部は改造され、まるでSF映画に出てくる車のようだ。
車のドアが開き現れたのは、なんとドクだった。
「やあ。マーティ。今夜は私の生涯の中でおそらく最大の実験になるだろう。
さぁビデオを回してくれ。」

 


ビデオカメラを向けると、ドクは急にまじめな顔になり話しだした。
「みなさん、私はドクター・エメット・ブラウンです。
今日はこれから私の次元転移論理に基づく実験を行います。」
そう言うとドクはアインシュタインを車に乗せた。
「第1実験開始!」
「現在、1985年10月26日、午前1時19分、
私の手元の時計とアインシュタインのしている時計が
一致している事に注目して下さい。」

ドクはデロリアンのドアを閉めた。
ドクの手には、ラジコンの送信機があった。
それを操作するとデロリアンはいきなり唸りをあげて駐車場の端まで行ってしまった。
「140Km/hに達したとき、常識を越えた現象が起こるはずだ。」
そう言うと、ドクはデロリアンを自分達に向かって発進させた。
ぶつかる!と思った瞬間、デロリアンは光に包まれて、消えてしまった。

 


路面には炎の後が2本残っているだけだった。
「1時20分ちょうどだ!」
ドクは再びカメラに向かって話し始めた。
「いま私はアインシュタインを1分後の未来へ送りました。
午前1時21分0秒ちょうどに、あの車は現れるはずです。」
「3・・2・・1・・0」
秒読みと同時にデロリアンが現れた。
車を止め、ドアを開けると、中からアインシュタインが飛び出してくた。
ドクは時計を見比べて叫んだ。


・・とまあこんな風にコマンドを選択するとお話がガンガン進む構成。
画面は映画の映像をそのまま取り込んでいる。
(当然、当時の取り込み画像だから粒子は粗い)

コマンドはシーンによって必要そうなものが整理されて選択肢に現れる。
画面が映画そのままという事はどういう事か?
つまり「映画と違う展開は用意されていない」という事である。
結果として映画と違う行動をすればテキストだけで軌道修正されるか、
ゲームオーバーとなる。
1時間56分の映画の内容をまるまるゲームに落とし込んでいるのは凄いが、
ただ画像とともにあらすじを読んでいるだけなので、
ゲームとしての面白味に欠ける。
というよりこれなら映画観ればいいじゃん、と(爆)。
サウンドは無音。
バック・トゥ・ザ・フューチャー」と言えば耳に残るBGMも大きな魅力。
せめてそれは再現して欲しかった。

 


スタッフロール無し。

 


さて、時代背景からこのゲームの存在を読み解いていこう。
1986年と言えば、レンタルビデオ店がやっと普及し始めた頃。
映画などのビデオソフト販売はされていたが、
1本の価格が1万4千円とか、そんな感じの高額商品。
家で映画を観るのはテレビの洋画劇場での放送を待つのが一般的だった。
そんな状況の中で、前年に公開された映画の内容をそのまま確認できる本作は、
「面白かった映画をもう一度楽しむ為の数少ない選択肢」だったのかも知れない。
ああ、あれだ。
劇場アニメの映像をそのまま使った漫画ってあったじゃん。
アレだよアレ。