
ゼリアード
ゲームアーツ
1987年12月
7500円
PC-8801mkⅡSR以降
「テグザー」や「シルフィード」など、
常にスペック以上の表現をプログラム技術で超えてくるゲームアーツ。
そんなゲームアーツが当時流行りのジャンルである
アクションRPGに挑戦したのが本作「ゼリアード」であった。
なお、本作が発売された1987年には、
「イース」「ガンダーラ」「ソーサリアン」「ハイドライド3」
といったアクションRPGもリリースされている。
恐るべきレッドオーシャン!
そんな「ゼリアード」であるが、
本作で最も注目されたのは音声合成によるボイスであった。
ゲームアーツが本作の一番の売りをボイスと定めていたかどうかは知らないが、
「シルフィード」や「ぎゅわんぶらあ自己中心派」で培った音声合成の技術は
本作でも印象的に使われていた。
そして誰もが見る事が出来るオープニングは語り草になっているほどである。
(以下、青字が実際に流れる音声合成音である)
今より二千年の昔
人の知らぬ、異空の彼方より
魔王、現れたり
悪鬼魔獣を従え
地上の緑を汚し
世界の王と成る
フェリシカの王
魔王を倒さんと
聖地ゼリアードの精霊に祈らん
フェリシカの王
精霊より借りたる
聖なるクリスタル
エスメサンテの涙を使いけり
魔王の力、失せ
地底に封ぜられり
再び地上に平和は訪れたり
エスメサンテの書
第六章
-暗黒の日-より
『エヌゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ・・』

『我二千年の眠りより蘇り、再びこの世に君臨せん』

『ざぁぁぁーーーーーーっ(雨の音)』

暗く重い雲は、国中を覆っていた。
雨はまるで何かを嘆くように、降り続いている。
そしてその雨を見つめるひとりの少女がいた。
フェリーサ・ラ・フェリシカ姫、フェリシカ国王の一人娘である。
彼女は太陽のような笑顔と、鈴のような声で国中の人々に慕われていた。
『まぁ、いやな雨』
フェリーサ姫がバルコニーから見下ろす庭には、花が雨に濡れて光っている。
『砂が降る、なぜ?』
突然、色とりどりの花は灰色に変わっていき、雨音も重く変わる。
今まで恵みの雨だったものは、乾いた砂と変わり地上を埋め始めた。
木や花は砂の重みで折れ、川や湖は砂に埋もれていく。
緑なす国は、砂漠に変わっていくのだった。

『これはいったい、何者の仕業?』
「我を封じ込めし者の末裔よ、二千年の怨みを込めた呪いを思い知る知るがいい。」
『◯△×◯△×◯△×◯△×◯△×◯△×』(魔王のボイスだが全く聞き取れず)
『キャーッ』

「我が力が満ちし時、神々の沈む夜にいけにえとしてもらいにくるぞ。」
魔王の声は、国中に響き渡った。
『姫様がー、姫様がー(超棒読み)』

フェリーサ姫は魔王の呪いによって石にされ
108日の間振り続けた砂の為に国は砂漠と化した。
もはやすべての望みは絶え、滅びだけが待ち受けているようだった。
人々はフェリーサ姫の不幸に涙するしかなかった。

「おお、我が愛しい娘よ。石となっては私の声も届くまい。
もはや我が国は滅びるしかない。
それまでせめて、そなたの側でこうしていよう。」
しかし人々の流す涙は、もう一つの力を呼び覚ました。

聖地ゼリアードに眠る精霊は、人々の嘆きの声を聞き王の前にその姿を現した。
「私は聖地ゼリアードを守る精霊。
魔王が復活した今、再び世界は黒い力により暗い時代を迎えるでしょう。
フェリシカの王よ、魔王の力を封じるためには
聖なるクリスタル「エスメサンテの涙」でもう一度、結界を造る以外にありません。
だがこの国の者では魔獣を倒し、クリスタルを取り戻せる者はいないでしょう。
しかしこの世に一人だけ、魔王に対抗できる力を持つ者がいます。
その運命の者はすでにこの国に来ています。
その者だけが、魔王の手下より
「エスメサンテの涙」の9つのクリスタルを取り戻し、
この国を救うことができるでしょう。
フェリシカの王よ、その者が現れるのを待つのです。
そして全てを話しなさい。
きっとその者は貴方と、この国を救うために働いてくれるでしょう。」
そう語ると精霊は、ゆらめくように消えていった。
フェリシカ王は夢のような出来事に、自分の正気を疑った。
これは悲しみのあまり、自分の造りだした妄想であったと。
しかし次の日、夢は現実となった。

「なんという不思議な国だ、この城以外はすべて砂漠とは。
本当にここに私がやらねばならない事があるんだろうか。」
精霊の光に導かれ、デューク・ガーランドはフェリシカの国に到着した。

城の中に入った彼は、フェリシカ王のもとへと案内された。
「デューク・ガーランドよ、そなたが精霊の申していた運命の者。
どうかこの国と石にされた姫を救ってもらいたい。」
「フェリシカ王殿、私は精霊の導きでここに来ました。
その魔王がいかなる者でどのような力を持っているかは知りません。
しかし私以外の者では倒せないというのならば、
この命かけてその使命を果たしましょう。」
「おおっ、頼んだぞ。」
『フッフッフッフッハッハッハッハッ』

「お前ごとき若造が俺を倒すとは片腹痛いわ。」
フェリシカ王とデュークの前に突然、魔王の姿が現れた。

「きさまが魔王か。」
「魔王様と呼べ、魔王様と。
今ここで、お前を殺してしまうのは簡単だ。
だが、わしもいささか暇を持て余しておる。
せいぜいわしを退屈させぬように、頑張るがいい。
どのようにしても、わしを倒すことは不可能だがな。」
「ふざけるな!俺は必ず9つのクリスタルを取り戻し、
貴様をもう一度地中に封じ込めてやる。
待っているがいい。」
「フフフッ、わしが造りあげた迷宮は深く広い、道に迷って泣くがよい。
フム、わしの手下の者にも知らせておこう。
迷宮に入る者がいない今、久しぶりに人間の肉が食えると喜ぶだろう。」
『フッフッフッフッハッハッハッハッ』
魔王の姿は笑い声だけを残し、消えていった。

「ゆくぞ、待っているがいい魔王。
貴様と手下を倒し、必ずこの国を元の美しい姿に戻してみせる。」

ついに運命の扉は、開かれた。
魔王の造りあげた迷宮は深く、魔王までの道は遠い。
はたしてデューク・ガーランドは魔王を倒す事が出来るのだろうか。
話題になったのは確かなのであるが、優れた表現力への賞賛というよりは、
場の雰囲気を壊す棒読みボイスに失笑という側面が強かったように思う(^◇^;)
ただし、本作のボイスは「シルフィード」や
「ぎゅわんぶらあ自己中心派」と比べると、
かなり聞き取りやすいものに進化している事は書き残しておきたい。

ゲーム本編はサイドビューのマップで構成。
買い物や会話などを行う町マップとダンジョンのマップがあり、
ダンジョンのボスを倒すと次のマップへ移行するという流れになっている。

ダンジョンの中での操作はシンプルで、
テンキーで移動、しゃがみ、ジャンプ。
スペースキーで剣を振る。
通常は横斬り、2か8を押しながら剣を振ると縦斬り、
落下中に剣を振ると下突きとなっている。
魔法が使えるようになっているとシフトキーで魔法が使用できる。
ただし魔法の使用回数は有限である。

これらの操作設計はナムコの「ドラゴンバスター」を参考に
組み立てられていると思われる。
さて、このダンジョンであるが、
「心理学的な影響を利用して設計されている」
と宣伝されていた。
例えば道が2つに分岐していたとする。
心理的に「こっちは選びづらい」という方が正解ルートになっていたりするわけだ。
本作は
ボス部屋までのルートをいかに体力を消耗せずに辿り着けるか
というゲームである。

そのためには最短ルートを見つけ出し、
アクションを上手く成功させる必要がある。
それをこのマップ設計が困難にしているのである。
失敗するたびに町に戻るわけだが、町の施設をご紹介しよう。
なお、施設の中でも「いらっしゃいませー」などのボイスが再生されている。

宿屋(教会)
体力や魔力を回復してくれる。
最初の町では教会に行くと無料回復となる。

銀行
このゲームではダンジョンで体力が尽きるとお金が0になってしまう。
銀行に預けたお金は無くならないので、転ばぬ先の杖である。
ちなみに本作ではモンスターを倒してもお金は落とさない。
かわりにアルマスというものをたまに落とす。
銀行でこのアルマスを換金して買い物に使う。
なんでこんな面倒なシステムかというと、
「町によってアルマスのレートが違う」という仕組みを入れたかったからみたい。

武器屋
武器と盾が売っている。武器は全て剣である。
一部を除き攻撃力の違いのみである。
盾は消耗品なので、壊れるたびに買い直す必要がある。

魔法の道具と薬の店
使えるようになった魔法の回数を補充したり、消耗アイテムを購入する。

賢者の館
一番重要なのがココ。
このゲームでは貯めた経験値を賢者の館でレベルに変換してもらうシステムだ。
本作にレベルや経験値を確認する術はなく、
レベルアップ時に余剰な経験値が持ち越される事もないので、
頻繁に賢者の館へ訪れる必要がある。
さらに町によって賢者の館で上げられるレベルに上限設定がされている。
(最初の町ではレベル3まで)
つまりどういう事かというと、
本作はステージごとにレベル上限で難易度設計がされており、
その上限でもアクションが上手くいかないプレイヤーは先に進めないゲーム
なのである。
俺様は本作をアクションRPGでは無く
「成長補正のあるアクションパズルゲーム」だと思っている。
当時も早い段階で挫折したし、
今回このレビューのために行った再プレイでも最後まで進める事は出来なかった。
リリース当時も多くの挫折者を生み出し、
音声合成の奇妙さだけが話題となるタイトルとなってしまったのである。