88ゲーム回想録(60)「プラジェータ」


プラジェータ
発売元:エニックス
発売時期:1989年12月
定価:7800円
対応機種::PC8801FH以降
ディスク3枚組
サウンドボードII対応

 

漫画やアニメを見ていて、
ビデオゲームで実現したら面白そう」と子供が直感的に思えるタイトル。
80年代の小学生達にとって「プラレス三四郎プラモ狂四郎
そう思える最右翼であった。

 

「プラジェータ マルスへの挑戦」の広告にはこのように書かれていた。

『プラジェータ』とは、プレイヤーが自分で組み立てたベースキットに
規定のパーツを組み合わせて完成された小型ロボットを
外部コンピュータリモコンによって操作し、
他のプレイヤーのものと格闘させるゲームである。

まさに「プラレス三四郎」や「プラモ狂四郎」を思わせる設定である。

舞台は未来の日本。
日本各地の専用アリーナで戦う。


ライト、ミドル、ヘビー、無差別級の全てを制覇するとチャンピオンになれる。
そして現在、若干14歳の少女マルスがその座についている。


副題が「マルスへの挑戦」である事から、
このマルスに勝利する事が最終目的なのだろう。

 

バトリングに勝てば、賞金がもらえる。
パワーアップパーツを買いそろえていけば、きみのプラジェータはどんどん強くなる。

迫真のバトリングモード!
バトルシーンは完全アニメーション・アクション!
個性的な動きの巨大キャラがなんと20種類以上登場!
勝利のカギは相手の動きを見切ることだ!

プロのライターによる秀逸ストーリー展開!
衝撃のエンディングをきみは直視できるか!?

 

このゲームは「アクション+アドベンチャー+RPG」という
新感覚のゲームジャンルになると告知されていた。
上記の広告文から推測すると、
各地を転戦しながらシナリオが進む部分がアドベンチャーゲーム風になっていて、
試合自体はプレイヤーが直接ロボットを操作する格闘アクション。
そして試合の結果でパーツが増えていき強化していく成長要素がPRG風・・
といったゲームだったのでは無いだろうか?


このような魅力的なゲーム構成で、
多くのパソコン少年達が期待を寄せた「プラジェータ」だったが、
1985年頃の雑誌広告から、
何年経ってもリリースされなかった。
「もうプラジェータはリリースされないのではないか?」と誰もが諦めかけた頃、
4年の歳月を経て店頭に並んだ。
対応機種が「PC8801FH以降」というのは珍しい。
これはCPUクロックを「8MHz」に設定できる機種でしか遊べないためだ。
初期の広告ではX1turbo版も予定されていたが、
残念ながらリリースされたのは88版だけだった。

 


1995年、コンピュータ・ネットワークの急速な発展は、
年々悪性化するコンピュータ・ウイルスや、
ハッカーによる不正アクセスの増加を促した。

さらにその状況は、通称“ラウンド・ギア”と呼ばれる、
ネットワーク侵入システムをも生み出す引き金となったのである…


事態を重く見た情報管理局MAIは、これに対抗すべく、
防御用ラウンド・ギア(インターセプター)の開発に着者した…。
“プロト・イメージ・ジェネレーター”


略称“プラジェーター”の誕生である。


We pay our respects to IMAGE RANGER who is active in everyday.




『はじめまして・・。私はあなたのパートナーをつとめる
水咲 麗香(みずさき れいか)といいます。よろしく・・・。』

『新宿A地区、東京都庁の中央ネットワーク・システムにラウンド・ギア侵入。
スタートアップタイミング・チェック。至急アクセスします。』
『初陣ですね。がんばって下さい・・・。』

タイトルメニューなどもなく、早々にゲームが開始される。
ところでこのオープニングで「おや?」と思われるかも知れないが、
「プラレス三四郎」風のクラフトバトル世界観を一切捨てている。
コンピューターウイルス駆除をロボットバトルに具現化した世界観
置き換えられている。

なお、どことなく機動警察パトレイバー』の雰囲気に似ているのは、
ストーリーやデザインを担当された佐山善則さんが当時、
TVシリーズ機動警察パトレイバー』のデザインを担当しており、
その影響を受けてのものらしい。

 


横から見た固定画面で、1vs1のバトルを行う。
ジョイスティックに対応していて、
プラジェーターを操作して相手ロボットの体力を0にしたら勝利。
先に自分の体力が0になったらゲームオーバー。


負けたエリアから何度でもやり直しできる。

 


十字ボタンで前後移動、垂直ジャンプ、しゃがみ。
Aボタンでキック、Bボタンでパンチ。
しゃがみキック、ジャンプキックはできるが、
ジャンプ中としゃがみ中にパンチは出来ない。
上記が全てであり、必殺技など挙動が増える事は無い。
攻撃が当たるときにどれだけ近づいているかで相手に与えるダメージが変わる。
ガードなども無いので、前後の間合い調整が全てのゲームになっている。
敵により行動パターンが違うので、
そのパターンを読んで「攻撃を受けずに攻撃を与える」ような動きを考えるゲーム
になっている。
格闘ゲームというより任天堂の「パンチアウト」に似ている。


2体のロボを倒すとボスが登場。
ボスを倒すと次のエリアヘ。
そのときにポイントを割り振ってBODY、HANDS、LEGSを強化できる。

結局、このゲームのカスタム要素はこれのみで、
「アクション+アドベンチャー+RPG」と言われていたプラジェータは、
アクション部分のみを再利用した別モノゲームとなっていた。

全6ステージをクリアするとエンディング。
特に世界観をサポートするようなエピローグは無く、
「お つ か れ さ ま」とだけカメラ目線で言われてスタッフロールへ。

ストーリー/キャラクター・メカニックデザイン
佐山 善則

アクションシーンプログラム
金子 健

アクションシーングラフィック
佐山 善則
真島 真太郎
稲垣 喜彦
正木 範和

ビジュアルシーンプログラム
小寺 春樹
宮 佳成

ビジュアルシーングラフィック
佐山 善則

デジタイズ
稲垣 喜彦

ミュージックコンポーズ
宮 佳成

ミュージック
宮 佳成
川名 純
日産 進

パッケージフォト
増田 裕一

パッケージモデル/モデラー
石川 雅夫

パッケージモデル/プロデューサー
石川 英晶

パッケージモデル/アシスタント
丸山 聡

協力
FIREBALL SYSTEM
模型工房 来夢緑
談話室 ぱるぷんて
M.P.RUN
川口 貴雄
望月 敬三
恋野田 和
茂木 健一
日高 徹
狩野 健二郎
三嶋 弘二
まさこ
みちよ

プロデューサー
山本 秀樹
菊本 裕智

ディレクター
佐山 善則

 

ちなみに「マルスへの挑戦」だった頃の広告には、
以下のスタッフクレジットが掲載されていた。

プログラム
茂木健一

シナリオ
スーパーソニック
高橋昌也

グラフィック
佐山 善則
真島 真太郎
正木 範和

サンクス
MIMプラン

音楽
すぎやまこういち


一度破綻したプロジェクトを佐山善則さんが中心となって再構成した感じだろうか?
素材だけ使ってまったく別のスタッフが仕上げたわけでも無さそうだ。
ちなみに製品版にすぎやまこういちさんの楽曲は一曲も採用されていない。
広告では「ポップ感覚のオリジナル音楽全22曲以上!」と書かれていた。
その22曲が実在したのかどうかは不明だ。

佐山善則さんはその後、
アニメ『宇宙の騎士テッカマンブレード』や『VS騎士ラムネ&40炎』などの
メカデザインで活躍される方で、
高校時代に仲間達とスタジオ・ジャンドラを結成。
パソコンゲーム「ザース」の制作に参加している。
ザースは「ネクサス・リーダー・シリーズ」と呼ばれる4部作の第4部が描かれていた。
本作「プラジェータ」も第2部に相当するが、
第1部や第3部は発売されていない。(第3部は「YUKA」というタイトルだった)
世界観を共有するシリーズであるなら、
本来は「マルスへの挑戦」がそれにあたるシナリオであったはずで、
それがまるっきり違ったものに差し替えられた本作によって
シリーズは暗礁に乗り上げてしまったのかも知れない。

 


プラジェータは、なぜこんな結末を迎えてしまったのか?
開発のきっかけは眞島真太郎さんとプログラマーとで作っていたテストプログラムだ。
それは単に88で大きなキャラを動かせないかの実験だった。
「このテストプログラムにストーリーを付けられないか?」
と相談されたのが佐山善則さん。
そこで数枚の絵やプロットのようなものが出来上がったところで、
いつの間にか雑誌に広告が出ていたという。
その時点でプログラムはロボットが立ってしゃがんで蹴るといった動きをするだけ。
さらにメインプログラマーが大学院進学を理由に抜け、
中身も存在しない、明確な立案者もいないという状態で
「こんなゲームあったら楽しい!」という世間の期待と想像を集めてしまった。
そこから形にしようとシナリオライターが何人も入れ替わるが、
結局は形にならずに抜けていったという。
まさにプラジェータは蜃気楼を追いかけるようなプロジェクトだったのだ。
最終的には佐山善則さんが強引に商品にしたのは奇跡的と言わざる得ない。

にしても、まるで詳細まで完成しているかのような広告や雜誌記事の内容を
あれだけ見事にデッチあげた人、凄いよな。


さらに余談であるが、
宇宙の騎士テッカマンブレード』の後番組として、
プラジェータのアニメ化も計画されていたらしい!
だが当時はまだバーチャル世界への理解が広まっておらず、
決定権のある年配の人には理解されなかったという事だ。
プラジェータのアニメこそ見たかったなぁ~。