やっぱりセガが好き第98回「キューティー鈴木のリングサイドエンジェル」


キューティー鈴木のリングサイドエンジェル
アスミック
1990年12月12日/プロレス/6800円

 


このゲームについて語る前に、
女子プロレスラーキューティー鈴木”と、
当時の女子プロレスについて解説しなければならないだろう。
今でこそテレビタレント並のルックスをしている女子プロレスラーは珍しくない。
だが1980年代の女子プロレスにはアイドルレスラーの需要は無かった。
その頃の女子プロレスと言えば「全日本女子プロレス」の事だが、
女子プロレスファン層は主に若い女で、宝塚のイメージに似ていた。
ビューティペアクラッシュギャルズに代表されるように、
強くてハンサムでカッコイイ、
女子が憧れる選手が女子プロレスに求められていた。
また、そういう選手の引き立て役として、悪役はわかりやすく悪く、
レディースやヤンキーのようなキャラクターだった。
そこに男性ファンをターゲットにしたアイドルは必要無かったのだ。
やがて女子プロレスは進化し、プロレスの攻防レベルが上がっていった。
格闘技のテクニックを取り入れたり、
体を大きくして男子プロレスのような肉弾戦の迫力を魅せたり。
そんな流れの中心になっていたのがブル中野北斗晶などの悪役レスラー達だった。
そうすると女子プロレスのリングにも男性ファンが増えてくる。
アイドルレスラーと呼ばれる選手も少しずつ増えてきていた。
しかしながら、アイドル的なかわいさと強いプロレスラーを両立させるのは難しい。
体を大きくするためには太らなければならない。
また、女子プロレスラーにもプロレスラーの怪物性を求められていた時代である。
アイドル的な売り方をされているレスラーは、
ファンから少し下に見られていたイメージだ。
さて、話をキューティー鈴木に戻そうw
中学時代と高校時代に2度、
全女のオーディションに応募していたキューティー鈴木だが、
身長が応募条件に満たなかった事もあり、落選。
1986年に発足された新団体「ジャパン女子プロレス」へ応募
練習生となる事に成功する。
まだ高校在学中だったため、
地元の川口から同じく練習生の尾崎魔弓と一緒に通っていた。
同年9月にデビュー。
リングネームを「キューティー鈴木」と命名したのは秋元康
ジャパン女子プロレス旗揚げには芸能事務所のボンド企画も関わっており、
秋元康もその流れでアドバイザーとして関与していたのだ。
ジャパン女子プロレスの当初のコンセプトは
「プロレス版おニャン子クラブであった。
おニャン子クラブと言えば
「普通の女子学生がアイドルをやっている」というのが
ファンに受けたグループである。
つまりはどこにでもいる手の届きそうな存在。
もしかしたら特に体力的に秀でていたわけでもなく、
体格も小柄であったキューティー鈴木がレスラーとして入団できたのも、
そんなコンセプトゆえだったのかも知れない。
そして案の定、普通の女の子だったキューティー鈴木弱かった。(^^;
だが“かわいくて弱いレスラー”は不思議な現象を起こす。
同期の尾崎魔弓も美人だったが、ヤンキー顔でサディスティックに見える選手。
そんな尾崎魔弓が試合で弱いキューティー鈴木をボコボコにする。
それに耐え続けるキューティー鈴木
この構図が観客にウケ始めた!
そこからメディアに取り上げられ、
キューティー鈴木は「女子プロレスラーにこんな美女がいる!」
といった取り上げられ方でメディアに紹介され、
瞬く間に最も有名なアイドルレスラーに駆け上がっていく。
レスラーとして試合をする傍ら、ラジオ出演、写真集やイメージビデオ発売、
ドラマ出演、CM出演、レコード発売、雑誌の表紙を飾る・・など、
売れっ子タレントとして忙しい日々を送っていた。
そんな渦中の1990年に発売されたのが
メガドライブの「キューティー鈴木のリングサイドエンジェル」である。
ゲーム内で実名なのはキューティー鈴木だけで、
他の実名レスラーも「ジャパン女子プロレス」の名前も登場しない事から、
おそらくタレントであるキューティー鈴木との
単独契約で開発されたゲームなのだろう。

 

まず最初に操作する選手を9人から選ぶ。

 


キューティー鈴木
AGE 20
STA 155
WEI 58
B 85 W 59 H85
必殺技:キューティースペシャ
女子プロレス界の新しいヒロインとして、
人気実力ともに急上昇中の新人美少女レスラー。
キュートなルックスからは信じられないほどのパワーを持つ少女。
9人の中では最もコンパクトなボディだが、豊富な技とスピード、
そして誰にも負けない強い闘志で体格差をカバーしている。

 


キングダム加藤
AGE 20
STA 175
WEI 60
B 83 W 60 H80
必殺技:ダブルアームスープレックス
大人っぽいルックスと大型のボディから漂うイメージのとおり、
正統派のヘビー級パワーレスラーだ。
どんな相手にもクールな態度と妥協のない攻撃で、常に全力を出し切るタイプ。

 


メガデス斎藤
AGE 22
STA 175
WEI 70
B 85 W 60 H85
必殺技:ブラッディSPアタック
全日本レディスプロレスリングのクラッシャーウーマン。
ヒール(悪役)の中では実力・人気(?)ナンバーワン。
アブドラ・ザ・ブッダーの特別コーチを受けたスジ金入りのワル。

 


ミアモーレ矢島
AGE 21
STA 169
WEI 52
B 70 W 55 H75
必殺技:ジャーマンスープレックス
ひとたびリングを降りれば、OLのようなフツーの女の子。
頭を使った効果的な戦い方で体格面のハンデをカバーしている。
正規軍では最年長。粘り強いマイペース型。

 


シンディ中野
AGE 19
STA 165
WEI 50
B 72 W 55 H75
必殺技:ロメロスペシャ
小粒の体を活かした変幻自在・スピーディな動きには定評があるが、
パワー・スタミナの無さで一歩伸び悩んでいる。
9人の中では唯一のティーンエイジャー。

 


ハロウィン.I.佐藤
AGE 20
STA 176
WEI 59
B 77 W 56 H83
必殺技:スコーピオンデスロック
ロック少女風のルックスがカワイイ日系二世。
テクニック・パワーともに十分兼ね備えた女子プロレスきっての実力派少女。
怒るとコワイ。
ショーマンシップたっぷりのアウトロータイプ。

 


ガンズ大山
AGE 20
STA 171
WEI 60
B 78 W 58 H82
必殺技:バックブリーカー
少年っぽさの中に色気が光る、中性的な美少女。練習熱心。
基本がしっかりしていて体格もあるので、ベテラン勢にウケがよく、
将来が楽しみなタイプ。

 


ケイリー勝原
AGE 22
STA 173
WEI 59
B 81 W 60 H85
必殺技:ジャンピングヘッドバット
デビュー当時は正規軍のマスク・ウーマンとしてリングに昇っていたが、
メガデスに誘われてヒール(悪役)に転向した過去を持つ。

 


ライティング原田
AGE 22
STA 172
WEI 57
B 79 W 60 H85
必殺技:ボディアタック
メガデス・斎藤のスケ番時代の仲間。
性格の残虐さを見込まれ、メガデスの強い勧めで、
女子プロレス入りを決意。
テクニックはまだまだだが、ラフファイトならだれにも負けない。


せっかくだからキューティー鈴木で進めていこう。

 


ゲームは5大タイトルを獲得するのが目的で、
トーナメント戦やリーグ戦を勝ち抜いていく。

 


試合開始前に必殺技を変える事ができる。
ずっと同じレスラーを使うので、飽き防止のためなのかも知れない。

 


画面はリングを横から見た感じで、
リングは横3画面分ぐらいある。
では二人のレスラーが離れたらどうなるのか?というと、
1画面以上離れたら画面が2分割に分かれるという変則仕様。


突然空間に敷居線が出現するのは慣れないと混乱する。

 


方向ボタンで移動、同じ方向を2回押すと走る。
相手に接触すると自動的に組み合う。
Aボタンでボディスラム、Bボタンでパイルドライバー。
上ボタンを押しながらAボタンでバックドロップ、
上ボタンを押しながらBボタンでブレーンバスター。
これ以外に最初に選んだ固有技が出せる。
組んだあとにどちらの技が成功するかは微妙なところだが、
より速くコマンドを入れた方が決まっている気がする。
(もしくは連打の速い方かも)
離れた状態でAボタンはパンチ、Bボタンでキック。
相手が倒れたらAボタンでフォール、Bボタンで立たせる、
Cボタンで関節技。
(このゲームは関節技をいくら仕掛けても全然ギブアップしてくれない)
その他、走りながらの打撃や、コーナーからのダイビング技なども設定されている。

 


顔グラフィックの横にあるバーは体力ではなく気合メーター。
技が成功すると上がり、攻められると減る。
気合メーターが高いときの方が技の破壊力が増す。
また、このメーターが点滅しているときにしか出ない技もある。
体力的なものはレスラーの表情で表現されている。
苦しそうな顔のときは3カウントが決まりやすい。

 


場外乱闘も可能。
場外以外と広いw
20カウント以内に戻らないとリングアウト負けになる。

 


トーナメントでは3回勝つと優勝。

 


リーグ戦は4試合。トーナメントと交互に行われる。
とにかく勝ち続ければいい。

 


アイドルレスラーを題材としているだけあって、
エロいプロポーションでキャラクターが描かれている。
(ボディは全キャラ共通)
また技のアニメーションもよく出来ており、キレがある。


走り込んでのドロップキックなどは躍動感があってヒットさせると気持ちいい。

 


5大タイトルを制覇するとエンディングだ。
スタッフロールとともに各選手のコメントも表示される。


「優勝なんて大したことじゃないよ。簡単には出来ないけどさ。
おめでとうとは言っとくよ。」


「とりあえず、ありがとー。でも簡単じゃないわよ。
だってガンズが負けてるじゃないの。」

 

- SYSTEM CREATOR -
HIRANO

 


「あんたってけっこうやるじゃない。けど、あたしには勝てないわ。
今度やったら負けないよ。」


「ハロウィンだってけっこうやるじゃない。
でも今度試合しても私が勝ってみせるわよ。」

 

- PROGRAMMED -
SAEKO
NAKAMICHI

 


「幸運だったな!だがそう続かないぜ!俺がぶちのめしてやるぜ!」


「あら、じゃあ今度試合したときは幸運なんかじゃ言い訳できないわよ。
絶対負けないからね。」

 

- GRAPHICS -
K AND K

 


「なんだてめーは!俺は負けてねーぞ!逃げてねーで戦いやがれ!
てめーなんざぶちのめしてやる!」


「そんなことかんけー無いわ。またやったってきっと私が勝つよ。
そんなに青筋立てないでよ。」

 

- DIE MUSIK VON -
DON

 


「まあ、凄いじゃない、おめでとう!
でも今度戦うときは、わたくしが勝たせてもらうわよ。」


「あら、顔にヒビが入ってるわよ。なーんだ化けるのうまいわねー。
メッキってはげやすいのよ。」

 

- ORIGINAL CONCEPT -
NARISAWA

 


「くっやしー、あなたって凄いのねー。今度はあたしが勝つからね!おめでとう!」


「なに言ってんのよ。あなたも強いわよ。
頑張ってもっと強くなって決勝で会おうね。」

 

- PRODUCER -
KAZUYUKI-TAKASAKI

 


「へっ、なかなかやじゃない。けっこう強かったし、あんたが優勝すると思ったよ」


「やだ、ありがとう。
でもキングダムにそう言ってもらえると自信持てそうな気がしてきた。」

 

- SPECIAL ADVISOR -
HIROSHI-OKAMOTO

 


「優勝したからってヘラヘラするなよ。お前に負けたのが余計に悔しいだろ。
今度やったらやっつけてやるぜ。」


「なによー、文句あるっていうの。
それに何度やったってあんたには負けやしないから!」

 

- EXECTIVE DIRECTOR -
TOSHIYUKI-FUTAMURA

 

 

本作はメガドライブ初のプロレスゲームであった。
実名の女子プロレスラーを起用した事で、イロモノ的な扱いを受けていたが、
女子プロレスを題材とした美少女ゲームとしてプレイすると、
あの時代でありながら実によくまとまっていると思う。
ただし、プロレスゲームとしては
試合の組み立てがワンパターンにしかならずイマイチだし、
キューティー鈴木ファンにアピールするポイントも乏しい。
つまるところ誰に向けて売っているゲームなのか不明瞭だっのだ。

 


ちなみにマニュアルには、上記のような超人的な必殺技が4つ記されているが、
どれも今回のプレイ中には発生する事は無かった。
ちゃんとコマンドを覚えないと出ない技なのかな?
(マニュアルには特に出し方は書いていない)

余談であるが、本作のパッケージは偏光シートになっており、
角度を変える事でリングコスチュームのキューティー鈴木と、
私服のキューティー鈴木が切り替わる仕組みだった。

開発したのはコピアシステム
東映動画やアスミックの下請けを主に行っていた開発会社で、
PCエンジンの「パワードリフト」、
スーパーファミコンの「スーパーエアダイバー」、「雷電伝説」、
プレイステーションの「ルパン三世カリオストロの城-再会-」などを開発している。
のちに社名を「シャングリ・ラ」に変えている。