88ゲーム回想録(40)「うる星やつら~恋のサバイバル・バースディ~」


うる星やつら~恋のサバイバル・バースディ~
発売元:マイクロキャビン
発売時期:1987年6月5日
定価:7800円
機種:PC-8801mkIISR以降
ディスク3枚組

 


マイクロキャビン初の原作モノAVGとして
1986年12月にめぞん一刻がリリースされた。
それから半年後、同じく高橋留美子原作の「うる星やつら」を題材とした本作が登場。
うる星やつら」のパソコンゲーム化としては
うる星やつら エンジョイあたる編」「うる星やつら ラブリーチェイサー」
「試験に出るうる星やつらに続いて本作で4本目となる。
また、ファミコンうる星やつら ラムのウエディングベル」は既に発売されていた。
が、それらは他ゲームのキャラ替えであったりしたもので、
本格的に「うる星やつら」の世界観ベースでゲーム設計をしたゲームは
本作がであった。
その意味ではファン待望のタイトルであったと言えるだろう。

うる星やつら」の原作はこの年1987年に連載終了。
4年半放送されたアニメは前年1986年3月で最終回を迎えていたが、
OVAや劇場映画はこのゲーム発売以降も制作されており、
息の長い人気コンテンツであった。

 


ゲームがスタートすると、
「最初」「プロローグ」「ゲーム」「以前のつづき」
という選択肢が表示される。
「ゲーム」を選ぶとプロローグシーンを飛ばしてゲームが始まる・・
のはわかるのだが、「最初」を選ぶと
了子のイメージシーンが少しだけ挟まったあとにプロローグが始まる。
なんで選択肢を分けたのかよくわからない。(^^;

 


「ごめんくださーい!」手紙の束をかついだ黒子が、諸星家を訪れた。
「よー、黒子。久しぶり」あたるは興味津々に応対した。
その横にラムがいる。
了子お嬢様のメッセージをお届けしました。」


「わっ、誕生パーティの招待状だ!」
『明日は私の15歳の誕生日。
つきましては明朝10時より、
面堂邸分館において、バースデイ・パーティを催します。

余興として、楽しいゲームを企画しましたので、
お友達もお誘いの上、奮ってご参会下さい。面堂了子

「なお、ゲーム優勝者には、了子様から熱いキッスが贈られます!」
黒子が、あたるにそっと耳うちする。


「必ず行くって、了子ちゃんに伝えて」彼はにこにこ顔で答えた。
「うちも一緒に参加するっちゃ!」ラムがあたるに飛びついた。


「優勝者にキッスだと?ゆるさん、ゆるさーんっ!」終太郎が了子にわめいた。
「やーね、お兄様ったら。実の妹にシットなさって…」
「するか、アホらしい!」
「そうだわ。トップのご婦人には、お兄様がキスなさったら?」
「……ラムさんも参加されるのか?」
「鬼っ娘ですか?諸星様と一緒に来られます」横から黒子が告げる。
終太郎はひとしきり顔をほころばせて笑った後、急に真顔に戻って黒子に命じた。
「サングラス部隊を直ちに分館前に集合させろ」
「何をなさるの、お兄様?」
「知れたこと、諸星を迎え撃つ用意だ。明日こそ、ヤツを亡き者にしてくれる!」


翌朝。面堂了子バースデイ・パーティの余興会場は、招待客でひしめいていた。
「皆様、本日はようこそ。さっそく余興のご説明をさせて頂きます。
ゲームの趣旨は至って単純、
分館大広間のパーティ会場に辿り着いて頂くというものです」

黒子は簡単な挨拶を述べると、いきなり本題に入った。
「トップの殿方には今後一年間、了子様のステディとして、親しい交際が許されます」
「おぉーっ」男達が期待にどよめいた。
「同じくご婦人には、若の熱いキッスが贈られます」
「キャーッ」今度は女の子の歓声が上がった。
「さらにパーティ会場には、豪華なお食事が用意されてます」
「やったー!」


あたるとラムはやや遅れて到着した。
南向きのドンと構えた門をくぐる。
スタート地点は熱気にあふれていた。
「ダーリンがぐずぐずするからゲームの説明を聞き損ねたっちゃ」
「どうせ大した事でもあるまい」
…ゲームの説明を聞かれてキッスの事がバレると面倒だからな。
「サクラや竜之介、わあ、コタツネコまでいるっちゃよ」
広場のそこここからは、ざわめきに混じって、
“やるわ、やるわ。あたし、やるわ!”“頑張るぞー”“負けるもんかっ”
と意気込む声が聞こえる。
「何だか、面白そうだっちゃ!」ラムがわくわくして言った。


黒子によって、スタートの合図が打ち鳴らされた。
「うわおぉーーーーっ!」
“ドドドドドーッ”
招待客達はクモの子を散らすように、一斉に思い思いの方向へ突進していった。

 


本作は一般的なアドベンチャーゲームとは構成が異なる。
どちらかというと「探索チャレンジゲーム」といった感じ。
まず本作のメインはシナリオ進行ではない。
迷路のようになっている面堂邸の中を歩きまわって、
了子の待つゴールに辿り着くために、
フラグ立てを(ほぼノーヒントで)積み重ねていくのだ。

用意されたコマンドは以下の通り。

移動、話す、見る、取る、使う、戦う、くどく、食べる、引く、押す、
脱ぐ、消す、抜く、ほどく、買う、場所。持ち物、SAVE、音楽


ノーヒントなのでまずは隈なく探索するしか無いのだが、
なんとこのゲームには
そこに行くだけでゲームオーバーになる場所がいくつも点在している(^^;
例えばスタート地点から「南」へ移動してしまうと、
ゲームから棄権した事になり即ゲームオーバーだ。
制作者もこの構成はあまりにヒドいと思ったのか、
このときのゲームオーバー画像は結構描き込まれた絵になっているw


▲ゲームオーバー内容と関連性が無い構図w

素直に北へ進むと、落とし穴に落ちている参加者達を発見。


「あわれだっちゃねー」

 


ランと遭遇。
クドこうとするとラムから電撃を食らうが、めげずにクドくとタイ焼きを貰える。

 


怪しげなケーキを発見。
貰うだけ貰っておこう。

 


サクラさんと遭遇。
このように探索していると様々な参加者と遭遇するが、
同じところに戻ってもまた会えるとは限らない。
なぜかというと、このゲームの登場人物は
(一部を除いて)マップ移動を常にしているからだ。
なので人物に出会ってフラグを立てなければ進めないのに、
探索し続けてもなかなか出会えず、
煮詰まってしまう事がたびたび起こる。
また、気づかずに先に進んで積んでしまったりもする。
オマケにこのゲームではコマンド使用回数が決まっていて、
特定の回数を超えると時間切れでゲームオーバーになる。
コマンド総当りでは解決できないというわけだ。
当時普通のAVG感覚でプレイしていて、全然クリアできず、
あまりの難易度の高さに挫折を繰り返していた。

本作を攻略するにはまずマッピングは必須だ。
そして、どこに何があって、誰がいつどこら辺をウロウロしているか、
誰がどんなものを求めているか?などの調査メモを書き込んでいくのだ。
ちなみにパッケージには簡易マップも付属されているから、
それをコピーしてメモを追記していっても良いだろう。
そして何度もゲームオーバーになりながら、増えていく情報を整理して、
最適なルートを編み出していくというわけである。

 


竜之介のおやじが通路を塞ぐ。

 


別の場所では竜之介がサイフを落として困っていた。

 


ゲームオーバーにならない落とし穴もあるようだ。
ベルトコンベアーで別の場所へ運ばれる。

 


サイフを見つけたので竜之介に届けた。
すると「ひょっとこカギ」をくれた。

 


「ひょっとこカギ」を使って鉄柵門を通過したあたる達。

 


しのぶと遭遇。
サクラのおはらい棒をゲット。

 


ときおり宝箱を見つける事ができる。
宝箱を開けるには受付で貰ったレーダーを使うと良い。

 


地下通路でカードを発見。
“電話機から北へ4ブロック移動した地点で、大声で次の言葉を唱えよ……”
だって。

 


とある場所で合言葉を唱えたら、出てきた黒子から「スイッチャー」をゲット。
このスイッチャーは、2箇所ある大砲で使うと、花火を打ち上げる事ができる。

 


温泉マークと遭遇。
しつこく追ってくるぞ。

 


女子達がなぜかビーチボールで遊んでいる。怪しいw
ボールを取って渡しに行くとゲームオーバーになるので
取ったら逃げようw

 


サクラさんと遭遇。
妖怪に囲まれて立ち往生している。
おはらい棒を渡すと、「花柄のカギ」をくれた。

 


スケ番三人娘登場。
ラムに電撃で追い払ってもらおう。

 


テンが盗んだ花柄のカギを取り戻す。

 


スタート地点横の電話で了子にかけると、
「黒子に秘密兵器を託しました。受付でお受け取り下さい」
とのこと。
その後、受付で「タコ」をゲット。

 


スケ番産任娘がゴムカッパを着て再登場。
何とか倒して「ゴムカッパ」をゲット。

 


タツネコと遭遇。タイ焼きを食べさせたら眠りこけてしまった。

 


竜之介の親父にビーチボールを渡すと通して貰えるようになる。

 


その先にある庭園の噴水。
スイッチャーを使うと地下への階段が現れる。
あ、スイッチャー使う前に池の中のピラニアを何とかすること。

 


地下道は終太郎によって塞がれていたが、
黒子が新たな抜け穴を開通していた。

 


地下道を抜けると終太郎が襲ってきた。
オマケに真吾にラムを連れ去られる。

 


タコを盾にして終太郎を撃破w

 


電飾魔境へ。
ここでゴムカッパを着ないと感電してゲームオーバー。

 


ツタに襲われるあたる。

 


ツタから脱出した南に行くと真吾が立ちはだかる。

 


何とか真吾を倒して先にある小屋へ。

 


ラムを救出。

 


ラムの不意をついて北へ向かうあたる。

 


サングラス部隊に囲まれピンチに陥るが、
タコを渡すと通してくれる。

 


了子ちゃーん、今行くからね!!」


「はい、ごほうび!!」
「やったーーーっ!」


ゲームコース管理制御室に入り込んだラムは、そこで二人を目撃した。
「…ダーリンのぶわかーっ!」


“ドババババッ☆”ラムの身体から電撃がほとばしる。
いち早く逃げ出す了子
計器がそこここでスパークして弾け、火を吹いた。
警報サイレンがけたたましく鳴りわたる。臨界点だ。
「もうだめたーっ!」
「逃げろーっ!」
ゲームコース管理制御室はパニックに見舞われていた。


“どっかーん☆”
“がっしゃーん☆”
“ちゅどどどーんっ!☆”


スタッフロールは無し。
ちなみに了子の元へ無事辿り着けたとしても、
例えばこたつねこを眠らせていなかったり、
ラムをまかずに来たりするとバッドエンドとなる。

 

本作はオリジナルストーリーだが、
面堂家を舞台に面堂了子の仕掛けた大掛かりなゲームに参加させられる・・
という構成は原作エピソード「面倒邸新年怪」(12巻収録)を
参考に組み立てられている気がする。

BGMはアニメの主題歌から4曲が採用されている。
プロローグに「殿方ごめん遊ばせ」
通常プレイ時にずっと鳴り続けているのが「パジャマ・じゃまだ!」、
ゲームオーバー時には「宇宙は大ヘンだ!」
エンディングでは「愛はブーメラン」が流れる。
よく知っている曲でプレイできるのは原作モノAVGとしてポイントが高い。

 

セリフ回しも原作をよく研究していて雰囲気出てるし、
作画レベルも原作から丁寧にトレースしていて高水準。
だが、前述したように本作はチャレンジが前提の探索ゲームで
どうすれば上手く進めるのか路頭に迷い、挫折しやすい構成。
ライトに「うる星やつら」の世界を楽しみたいプレイヤーにはハードルが高過ぎた。
マイクロキャビンはその後、
めぞん一刻 完結編」「きまぐれオレンジロード」「ホワッツマイケル」といった
原作モノAVGを生み出していくが、
それらは一転してストーリー重視のオーソドックスな構成になっており、
選択肢総当りでも何とかエンディングまで到達できる内容になっている。
「原作ファンがどのようなゲーム化を望んでいるか?」
を察知しての方向転換だったのではないかと思われる。