88ゲーム回想録(39)「ラストハルマゲドン」


ラストハルマゲドン
発売元:ブレイングレイ
発売時期:1988年7月16日
定価:7800円
機種:PC-8801mkIISR以降

 

人類がなぜ滅びたのか、今となっては、もう知る術もない。
この星は完全に死に絶えた。
地表で息づくものは、その姿を土に変え、大地の一部となり溶けていった。

ただ、荒廃した地表が限りなく続くこの景色を幸いにも目をとめる者はいない。
今・・・一つの歴史が幕を閉じたのである。
しかし、星はその力の偉大さを誇示するかのように、
地の奥底に眠る生命体を呼びさました。
新しき歴史を生み出すがために・・・


『この地が、我らに帰ってきたのだ。』


魔族の台頭である。
星は新しき世界の幕開けに、異形の衆を呼び覚ました。
この大地で生きていけるもの達を。


『美しい大地だ。』
『我々魔族以外は全て滅んだようだな。』
『うむ、いよいよ魔族の時代がおとずれたのだ。
さっそく魔界に帰り、報告するとしようか。』


『かはっ』


『何者だ!!』


『ぐほぉっ!』

二つの生命ある者が一瞬にして消えた。
星は、魔族の存在を認めなかったのだろうか。
いや、今出現し、この殺戮を行った新たなる異形の者に、星さえも驚いた事だろう。


彼は天より降りてきた。
星が地底より魔族を呼び覚ましたのと同じく、
天空は、彼方より何者かを呼びよせたのであろうか。


『この・・・ことを・・・魔界に・・・報告せ・・・ねば・・・』
その口から一つの目玉がこぼれ落ちた。
瞬間、その目を足にはさみ込み、天空へと飛び立つ者がいた。


『スケルトンよ。お前の意志、しかと受け継いだ。』

新しい歴史は壮大なる本当のハルマゲドンで幕を開けた・・・

 


『ふふん、外の様子はどうだった。』
『まあ、これを見てくれ。魔族の者を集めるのだ。』


鬼の目が妖しく光ると、先程の地上での光景が次々と映しだされていった。


映写が終った。

ガーゴイル
『このホログラム、先程俺が偶然天空よりみたものだ。皆のものいかに思う。』

スライム
『スケルトンとミノタウロスの一族のものだな。』

ミノタウロス
『わが一族の者がいともたやすくやられるとはな。』

ケルト
『地表にまだ生物がいようとは思わなんだわ。』

Gスネーク
『いや、地表の生物は、虫ケラさえも絶滅した筈だ。』

アンドロスフィンクス
『では一体何だというの。

我々は、人類が地表の王となる遙か以前より、地中に君臨していたのよ。』

その時、突然ガーゴイルが苦しみ始めた。


『ぐおっ。』
羽の生えし黒き使い魔は、一声吠えるとビクンビクンと、小刻みに震え始めた。
『か、体が・・・体が・・・ぐえっ!!』


その表皮を突き破り現れた薄紫色の細管が頭部に突き刺さると、
彼は気の抜けたデクのように、ゆっくりと話し始めた。
『この者の声帯を借り、お前らに伝える。
我らテリウス星系連合は、この星を131番目の植民星と決定し、植民を開始した。
大人しく従うならば良し、歯向かうならば殺すまで。
時間は与えぬ。答えは一つ。今、答えるのだ。』


『何をぬかすかっ!』
魔族の一人が、その鋭い爪を大きく振り上げた。


『わ・・・かっ・・・た・・・後悔・・・する・・・な・・・』


『ふざけるな。異星からの侵略者だと!舐めた真似するんじゃねえ。』
ドラゴンニュートは雄叫びをあげた。
『闘いだ!この星を魔族の楽園とせんがため、あくまで闘うのだ』


ゴーレム『まあ、待て。我々の地表での行動には制限がある。
・・・何だ、この振動は!』


オーク『地表だ!地表をスクリーンに映しだせ。』


ミノタウロス『何だ、あの光は。あの光をアップにしろ。』


サイクロプス『あれは石板か?何か文字が書いてあるぞ・・・
星の軸を戻し安息の地に変えたるもの、地表の長となり平定を誓うものとする。
-黙示録27章- ・・・どういう意味だ!!』
ハーピィ『地表で・・・地表で何か別の意志が働いているようだわ。』


一同が会している。

サイクロプス
『各一族より、一名ずつ代表を出すのだ。
とにかく地表で何か起きているのか探らねばならん。』

ゴブリン
『うむ。地表では思うように行動できんからな。
他の種族の助けが必要というわけか。』

オーク
『まあ、昼と夜は何とかなろう。しかし、サルバンの破砕日はどうするのだ。

一瞬にして押し潰されてしまうぞ。』

アンドロスフィンクス
『シャーマンの壺を使えば良い。

幸い、我らは地表では、サルバンの破砕日しか行動できぬしね。』

ドラゴンニュート
『異星体との闘いに加えて、地表での謎の解明か・・・

我らは、そこまでして地表に住まねばならぬのか?』

ゴーレム
『そうだ。地表を制するものこそ、この星の支配者だ。

我々の住める地表にしなければならぬ。
なぜ、サルバンの破砕日が起きたのか、あの石板が何なのか、知らねばならぬ。』

ハーピィ
『そうね、さっそく出発させましょう。』

そして、各種族の猛者達が集められた。


ケルトン『我々に任せておけ、調査などせんでも異星体など蹴散らしてくれるわ。』
魔族より選ばれし12名の勇者を待ち受ける運命、
それがとてつもなきものであることを、
この星さえも予測できなかった・・・

ラスト・ハルマゲドンの世界を存分にお楽しみ下さい。

 

本作を発売したブレイングレイは1987年に設立したばかりの新しい会社だった。
中心人物は光栄から独立した飯島健男さん
だがブレイングレイのデビュー作である「抜忍伝説」は、
システム設計が散らかっていて遊びにくく、俺様は何度プレイしても楽しめ無かった。
実際、「抜忍伝説」は発売後早い段階でワゴンセールに並んでいたのを覚えている。
なので2作目である本作「ラスト・ハルマゲドン」も半信半疑で購入していた。
だが、このオープニングを見てすでにこのゲームの魅力に撃ち抜かれていた。
人間が滅亡した世界。
そこに生きるのはファンタジー世界のモンスター達。
そして侵略者となる異星人と全面対決
なんて魅力的な世界観!

 


本作はディスク7枚組。
このディスク枚数からも壮大な冒険が待っている事を予感させた。

 


まずは選ばれた精鋭モンスターを3つのチームに分ける。
冒険中は時間が経過する。
昼に行動するチーム、夜に行動するチーム、
サルバンの粉砕日という月のはじめの24時間に行動するチームを編成するのだ。
以下が精鋭モンスター達だ。

 

昼限定モンスター

 

夜限定モンスター

 

サルバンの粉砕日限定モンスター

 

無所属モンスター

プレイヤーは無所属モンスターを2体ずつ各チームに編成する。
名前を変更する事も可能。

 


ゲームがスタートすると荒れ果てた大地に放り出される。
オープニングにもあったように、
ゲームの目的は異性体との戦いに勝利する事と地表の謎を解明すること。
周囲をうろついていると異性体とのバトルとなる。
「エモノがいたぜ」


初期レベルでは普通に全滅する事もザラ。
全滅するとセーブした場所からやり直し。


昔のパソコンRPGは戦闘が厳しい。
何度も全滅しながら偶然勝利するまで頑張ろう。
レベルが上がってくれば段々とラクになる。
体力が消耗したら魔界の入り口に入ると回復できる。


死んでしまったモンスターも生き返って全回復するぞ。
が、回復は24時間で1度だけ。
1度回復したあとに厳しい戦闘が続くとジリ貧になっていく。
チームが切り替わるまで粘るしかない。
初期は魔法もアイテムも無いし。

しばらくこの苦境に耐えているとレベルが上がる。
このゲームではレベルはパラメータごとに設定されている。
細かく強化されていくので単調なレベルアップ作業が緩和されている気がするが、
チームが切り替わると、そのチームも1から強くしなければならないので、
展開はとてもスローモーだ。
ゲーム開始時の数時間は魔界入り口の近くでずっとウロウロするしかない。
昼チームも夜チームも、ようやく安心して探索ができるレベルになった頃。
悪夢の「サルバンの粉砕日」がやってくる。
ここに来て、まだ一度も成長していない全員レベル1のチームが登場するのだ。
しかも「サルバンの粉砕日」になると時間が10倍遅くなる(^^;
さらに魔界での回復は1回しか使えない。
これが何を意味するのかわかるだろう。
戦闘を繰り返していれば体力はどんどん減っていく。
回復手段は1回だけ使える魔界と、数回だけ使えるアンドロスフィンクスの回復魔法。
それらが尽きれば「サルバンの粉砕日」終了まで耐えなければならない。
しかもその地獄が終わるのは通常の1日の10倍。
全滅したらゲームオーバー。

どうしてもジリ貧になってしまう場合、
戦闘に勝利したときに貰えるジンを使って「道具」を作ろう。
アンドロスフィンクスの特性に「道具作成」がある。
作成できるものの中で「ギゾマの玉」「アムスの玉」っていうのが回復アイテムだ。
体力が消耗するたびにそれをやるのは凄く面倒臭いけど(--;;
同じようにミノタウロスの特性に「武器作成」「防具作成」があるから、
強い防具でも与えておけば死にづらくなるだろう。
1ヶ月に1回しか使わないチームに高価な装備を与えるのは非効率に思えるが・・。
余談だが、このゲームのアイテム名は、名前から内容を想像するのが困難だ。
ゲーム画面に表示される名前でマニュアルを参照しないと意味わかんない。

ぶっちゃけ「サルバンの粉砕日」だけ長すぎてゲームのテンポが悪い。
「サルバンの粉砕日」が来るたびに弱体化するのもテンション下がるし、
3チーム平等の時間で「朝・夕・夜」とかでいいじゃん。

 

モンスターがレベル5になると、容姿が変化する。


いわゆる進化ってやつだ。
このキャラは進化したらどんな見た目に変わるのかな?
ってのがとてもワクワクする。

このゲーム以前のRPGで成長に合わせてキャラクターの容姿が
変わるゲームってあったっけな?
装備によって着ているものが変わるのはあったけど、
キャラクターデザインそのものが変わるのって思い当たらない。
それだけ革新的な設計だった。

 


マップ上には石板と異星体のキャンプが点在している。
最初にやっていくべきはこれらを巡る事だ。
石板は全部で108枚あるのだが、
これら全てを読まないとこのゲームはクリアできない。

地表は文明が崩壊しているから探索はシンプルだ。
石板を読みつつ、少しずつ強い敵が出てくるフィールドへ行動範囲を広げる。
ここで普通にプレイしていると困った事が起こる。
その石板がすでに読んだものかどうかわからなくなってくる。
すると最終的に残り数個という状態で
見逃した石板を探してフィールド全体をさ迷う事になる。
そうならないためにソフトに添付されたマップを使う。


石板を見つけたらその座標にシールを貼る。
ただし、クリア後に再プレイするときに使えないのが難点。
なので一度マップをカラーコピーで複製し、
オリジナルは使わずに保管しておいた方がいいだろう。
(いまさらだけどww)

 

ウロウロしていると天変地異のイベントが発生する。


天変地異が起こるとパーティ全員がダメージを負う。

 

石板を24枚まで読んだ頃、急に敵が強くなったので、
この手前で経験値稼ぎをする事にした。
レベル9なるとモンスターが再び次の形態に変身する。

そしてさらにモンスターがレベル17に到達したとき、
モンスターの体に大きな変化が起こる。


なんとここで他のモンスターと合体できる。


スライムの場合、ゴブリン、サイクロプスガーゴイルから選択。
細胞を融合するだけなので、合体しても相手側が消える事は無い。
選択したモンスターの特性、装備できる武器・防具、
使用できる魔法が追加される。
もちろん容姿も合体後の姿に変わるのでそれもお楽しみだ。


スライムは合体後にスリムイルになった。

 

パーティの中に飛行能力があるモンスターがいる場合、
スペースキーで空を飛ぶ事が出来る。
海上の離島などに行く場合には飛行は必須。


飛んでいった先にこのような施設があった。
中に入ってみると、ここから3Dダンジョン探索になる。


オートマッピングなんて便利なものは無いので、
ノートにマッピングしながら進もう。

 

このようにしながら探索を進めていくと、
地球が滅亡するまでの歴史と、
モンスター達の起源がわかってくる。

もしチャンスがあれば、
長い冒険の末に訪れる壮大な物語の結末を見届けてみて欲しい。

企画・原作
飯島健男

技術
渡辺裕志

企画補佐
鈴木 力
須藤 敦
恩田やよい
大久保ゆかり

技術補佐
佐藤 洋
林 修一
折原雄治
有賀達夫
青木雅行

美術
武井一
西塚耕一
小林功一郎
中井 覚

音楽
葉山宏治
猪瀬勝幸

協力
原秀則
島 哲朗
松本康
伊佐一美


本作をプレイしていると軽快で耳に残るBGMが響く。
その後「超兄貴」で名を馳せる葉山宏治さんのデビュー作となる。
(猪瀬勝幸さんとの共作)

 

さて、本作の変身と合体でモンスターが容姿を変えていく構成。
何かを思い出さないだろうか?
そうだ、「ポケットモンスター」だ。
ゲームボーイで「ポケットモンスター」が登場するのは、本作の8年後。
もし「ラストハルマゲドン」が順調にシリーズを積み重ね、
ゲーム機でライトユーザー向けのチェーンがされていれば、
ポケットモンスター」より前に
複数のキャラでユニットを編成するゲームの決定盤になっていたかも知れない。

 

せっかくなのでその後、本作の関連タイトルについてもご紹介していこう。

本作88版をオリジナルとするラストハルマゲドンは、
パソコンではX1、MSX2X68000FM-TOWNSPC-9801
ゲーム機ではPCエンジンファミリーコンピューターに移植された。
まず特筆するのはTOWNS版で、なんとCD-ROM3枚組!
ボイスが追加され、BGMはCD-DAにアレンジ。
大容量のほぼ全てがサウンドに使われていたようだw
いまプレイするならPCエンジン版が最も入手しやすくプレイしやすいだろう。
なお、ファミコン版はあの橋本名人がディレクターを務めている。

88版発売から3ヶ月後には
「ラストハルマゲドン エイリアン図鑑」というタイトルがリリース。
こちらはゲームに登場するエイリアンを図鑑形式で見る事ができるソフト。
モンスター側の能力や合体後の変化を調べられるならまだしも、
エイリアン側の情報にはたいして興味わかないけど・・。(^^;
(ぶっちゃけ紙の攻略本の方が便利だと思うし(爆))

 

その後、ブレイングレイは本作のモンスターを日本の妖怪に置き換えた
「ラスト・ハルマゲドン番外編・妖怪変紀行」を発表した。
そのインパクトは衝撃的で、大きな期待を集めた。


なお、イメージイラストは
月刊コンプティークのライターをしていたデイヴ菅原さんが描いたらしい。


このイラストに描かれている妖怪は、小泣きじじい、座敷わらし、
キジムナー、のっぺらぼう、芭蕉の精、一つ目小僧、崖き小僧、
砂かけババア、雪女、カミナリ赤子、古タヌキ、おっかむろ。
水木しげる先生の描く妖怪に類似していた事もあり、
権利関係でもめたという噂も囁かれた。

 

人間達の起こした公害問題で住みにくくなった地球を脱出し、
とある惑星に移住した日本妖怪達。
だが同じ目的でやってきた西洋妖怪と生存権を賭けて争いになる。
やがてエンディングに向かってその惑星の正体が明らかになる。
…というようなストーリー設定だった。

西洋妖怪と戦うチーム、住処を守るチーム、探索チームの3派に分かれており、
朝昼夜の変化に合わせて戦略的にイベントを進めなればならない
難易度の高いゲームだったらしい。

日本妖怪はマニアックなものが多かった。(おたふく、送り鼠など)
西洋妖怪はメジャーなドラキュラ、狼男などの他に、
ジェイソンやチャッキーなども登場した模様。

エピローグ。日本妖怪と西洋妖怪が仲直りし、
冷凍睡眠されていた人間の赤ん坊を育てて種の繁栄を助ける事にする。
だが数万年後、繁栄した人間が起こした公害問題で
その惑星も住みにくくなっていたというオチ。

コメディ色の強いシナリオで、
ゲーム中にデザイナーの飯島健男さんが登場し、
「なんでアイテムを取ったのにグラフィックが変わらないの?」
などと横やりコメントを入れてくる構成だったらしい。


▲こちらはMSX2版の開発中ビジュアルシーン。やはりコメディ色が強いタッチだ。

 

そして結局、「妖怪変紀行」は発売中止となった。


▲雑誌に掲載された発売無期延期のお知らせ。

 

ブレイングレイの作品はほぼ飯島健男さんが
ゲームデザインを一手に構成していたらしいが、
その飯島健男さんは、運営方針の相違からブレイングレイを離脱。
開発中止はそれが起因していると言われている。
また、PCエンジンでも
「ラストハルマゲドンⅡ」というタイトルが予定されていたが、
そちらも同じ時期に発売中止となっている。

 

その後、飯島さんが設立したのがパンドラボックスで、
そこからラストハルマゲドンの世界観に類似したタイトルが発売される。
それがメガCD版「アフターハルマゲドン外伝 魔獣闘将伝エクリプス」である。
なのでこのタイトルはシリーズ作ではない。