夢見館の物語
セガ
メガCD/1993年12月10日/AVG/7800円
メガCDが登場し、メガドライブでも大容量が必要なゲームが実現可能になった。
そんな中で動画を組み合わせてインタラクティブに遊ぶ事が出来る
新ジャンル「バーチャルシネマ」も登場していた。
第1弾が「ナイトトラップ」で、第2弾が本作「夢見館の物語」だった。
“パソコンで読む小説”ノベルウェアシリーズなどをリリースしていた
システムサコムが開発している。
もともと本作はスーパーファミコンのCD-ROMシステム向けに
開発されていたソフトだったが、CD-ROM自体が発売中止となり、
システムサコムがセガに持ち込んでバーチャルシネマに組み込まれた。
妹「ねえ、ほら見て、ちょうちょ」
兄「ホントだ。ぼーっと光ってる」
妹「なんてキレイなんでしょう。
ねえ、本当にお花畑に行くのか、ついて行ってみましょうよ」
兄「ねえ、もう帰ろうよ。お母さんに叱られるよ。
あのお花畑のブネの木には、
昔から恐い悪魔が住みついているから満月の晩には絶対に近づいちゃダメだよって、
おばあちゃんが言ってたじゃないか。
それにあんまり長い間、光るちょうちょを見ていると、
その人もいつの間にか同じ蝶になってしまうんだよって。」
妹「あらぁ。悪魔なんているもんかって言ったの、お兄ちゃんよぉ?
それにあたし、あんなに綺麗なチョウチョになら、一度ぐらいなってみたいわ」
兄「そんな~、ああ!待てよ!待てったら!」
兄「ここは、どこなんだろう?
昨日まではこんなお屋敷は無かったはずなのに、いつの間に、どうして?」
妹「お兄ちゃん、おいでよ、早くおいでよ、あたしはここだよ」
ここからフリー操作となる。
主観視点で妹を探して屋敷の中を探索する。
画面は3Dで造形されているが、
実際は“3D空間を移動している動画”を表示して
3D空間にいるように見せているものである。
従って自由に屋敷を移動するのではなく、
方向を指定するととあるポイントまで移動する動画が再生される。
例えばスタート地点で方向ボタンで右を押すと・・
このように90度向きを変える動画が再生されるというわけだ。
この構成だと大量の動画データが必要となるわけで、
CDのメディアでなければ実現が難しかったというわけである。
この方式を採用して有名になったのは日本では「Dの食卓」。
本作はそんな「Dの食卓」の16ヶ月前にリリースされていたのである。
屋敷は1階、2階、地下の3階層あり、
1階には標本室、音楽室、談話室、
2階には寝室、遊戯室、画家の部屋がある。
部屋を繋ぐ廊下には特に謎解きは仕掛けられておらず、
この6部屋(+地下などの隠し通路)を往復してフラグを立てていく構造になっている。
この限られた場所を行き来していれば
特に行き詰まる事無くゲームが進むようになっており、
謎解きチャレンジではなく、体験としてのゲームを目指していたように思える。
次に行く場所がわからなくなっても、
とある場所に行けばそれすら教えてくれるという良心的な設計だ。
1階【談話室】
ここではまずダイヤリーを入手する。
これがあると途中セーブが可能となる。
ところでこの屋敷は至る所に顔写真が飾ってある。
実はこれらは特に謎解きに絡まないのだが、
なんとも不気味な風景を演出している。
2階【寝室】
2階の寝室に入ると蝶になった人間に遭遇する。
「誰?ああ、新しいお客さまね。ようこそ、おいで下さいましたわ。」
「人間のお客様なんて、本当に久しぶり。
だって満月の晩にこのお屋敷に来るお客様なんて、
皆すぐに蝶になってしまうんですもの。」
「ねえ、あなたはまだ蝶にならないんでしょう?
あっ、もちろんそのためにここまで来たんだってのはすぐにわかるわ。
さっき来た女の子だってそうだったもの。
でもその前に、ぜひお茶をご一緒していただきたいんだけど。」
2階【遊戯室】
ここにも蝶がいる。
「おや、また誰か来たね?一晩にお客が二人も来るなんざ、珍しいこったねぇ。」
「はは~ん。さてはあんた、さっきのおチビちゃんの兄貴だろ?
兄妹そろって狩人の館になにようさね?
女の子は蝶になりたがってたが、あんたは違うようだね。」
『わぁ、キレイなお花、こ~んなにいっぱい、あはは』
「おい待ちなよ、今のはあんたの妹の声だね。妹に会いたいんだろ?
よし、それなら一つ賭けをしようじゃないか。
あんたが自分一人の力で妹と会えるかどうか、どうだい?」
なお、次に向かうべき場所を示すのはこの部屋のこの額縁。
覗き込みと場所の映像が浮かび上がる。
2階【寝室】
再び寝室へ。
「ああ、良かった。急にどこかへ行っちゃうんですもの。
何か私、失礼な事をしたのかと思って、もの凄く心配だったのよ。」
「何を探しているの?」
「まだ探しものは見つからないの?
探しても見つからないものなんて放っておけばいいのに。」
「ねえ、もう少しここに居られるんでしょ?
ほらケーキだってあるし、お茶だってすごくおいしいのよ。
だから、その、迷惑でさえなかったら、なんだけど…」
棚の前のイスの下からカギを発見。
ちなみにこのゲームではAボタンを押すと持っているアイテムが表示。
左右で選択し、Cボタンで使う事ができる。
「もう見つけちゃったの?つまらない。
でも、どこのカギかなんて、教えてあげないからね。」
「ねえ、あなた。黙ってレディの部屋を探しまわるなんて、失礼だと思いません事?」
「まだ何か探しものかしら?」
2階【画家の部屋】
先程のカギを使用すると画家の部屋へと入る事ができる。
ここにも蝶がいる。
「おや、誰かお客さんかな?」
このラクガキみたいな絵を調べるとトラップが作動してしまう。
ロウソクに囲まれた密室へ落ちる。
一瞬焦るけど、ロウソクのうちの一本を消すと、
隠し扉が開いて1階の標本室へと抜ける。
1階【標本室】
ここにもやはり蝶がいる。
このようにこのゲームではほとんどの部屋に番人のように蝶がいる。
みんな見た目は一緒だが部屋からは移動しないので間違う事は無い。
「誰だ、きみは?」
「どうだね、美しいだろう。蝶こそはもっとも清らかな美しい魂の形だと思うね。
「そして私はこの館を訪れて、やっとその姿を手に入れたんだよ。
君も早く人間などという薄汚い姿を離れたらどうかね。」
「ははははははは。この部屋のコレクションが気にいったかね?
これらは全て、私が集めたものなんだよ。
そう、汚らわしくも人の姿をしていた時にね。」
この部屋の本棚から一冊の本を取り出して朗読する主人公。
「閉ざされた部屋の姿かたちを合わせるべし、
闇は闇に、光は光に、あるべき姿に戻すべし
さすれば、な、汝の灯しする炎によりて、求める印は自ず照らし出される事であろう」
「こんなところで何をしているんだね。
蝶になりたくてこの館に来たのなら、さっさと狩人の所に行きたまえ。」
それにしても主人公はなぜこのページだけ声に出して読んだのだろう?w
別の本の下からカギを発見。
「ふっふっふっふっ。部屋のカギを見つけたようだね。
弁解しておくが隠したのは私ではないよ。
ははは、そうだね、悪戯好きな妖精の仕業だ、とでも言っておこうか。
いや、まったく、この館に居ると退屈しないよ。」
このカギでこの部屋から最初のエントランスへと出る事ができる。
2階【画家の部屋】
さっき調べ損ねた画家の部屋へ。
「やあ、また来たね。ここが気に入ったかい?
はっは、まあ、好きなだけ探検してくれたまえ。」
「ねえ、きみ。地下室にはもう行ったかい?
蝶になりたいのだったら…
いや、それとも君は、行くべきではないかもしれないな。」
柱の横にカギを発見。
「おやおや、そんなカギが紛れ込んでいたとはね。
どこかで役に立つといいんだが。」
1階【音楽室】
先程のカギを使うと音楽室へ入る事が出来る。
やはり蝶がいる。
「あら?坊や、こんなところで何をしているの?」
「うふふ、蝶がしゃべるなんて驚いた?
信じられないかもしれないけど、私も昔は人間だったの。
ううん、私だけじゃないわ、この館の蝶たちはみんなそう。」
「もし、この館に迷い込んでしまったのなら早くお逃げなさい?
ここに居ればいつかは狩人に見つかって、蝶にされてしまう。
そしたら、もう人間に戻ることなんてできないのよ?」
「坊やは蝶になりたいの?
蝶になってしまったら、二度と人間の姿には戻れないのよ?」
「私も昔は人間だった。街の小さなステージで仲間たちとピアノを弾いていた。
でも、今じゃもう、鍵盤を叩くことすらできないのよ。
私が悪いのはわかっている、でもあの時はどうしようもなかったのよ。
他に行く所が、逃げられる場所がなかったんだもの。」
「ねえ、蝶になろうなんて考えないで、
それが素敵な事だなんて思って欲しくないの。」
「早く!ここから出ておいきなさい!狩人に見つかったらお終いなのよ!」
2階【遊戯室】
「まったくホントにおチビちゃんだねぇ。
あーしろこーしろといちいち言われなきゃ何にも出来ないのかい?」
ダーツの下からマッチ発見。
『あなたは誰?私は、ううん、一人じゃないわ、お兄ちゃんと一緒。
お兄ちゃん、どこ?お兄ちゃん!?』
1階【標本室】
標本室の奥の隠し部屋へ。
『いや、私、やっぱり蝶になんかなりたくない!
嫌だよ、やめて。お兄ちゃんどこに居るの、助けてー!』
ここでマッチを使って特定のロウソクに火をつけたり消したりする。
ヒントはダーツ。
正解すると地下への階段へ降りる事ができる。
地下
地下はまず廊下に出る。
廊下の先には木人みたいなのが座っている。
悪い予感しかしない(^_^;
木人の横の扉に入ると、
花瓶だらけの部屋に出る。
蝶はいないが花から声だけ聞こえてくる。
「誰か来たよ」
「本当だ」
「男の子だね」
「うん、男の子だ」
「女の子も来た」
「うん、女の子も来たよ」
「もうすぐ蝶に変わるよ」
「月の魔法がかかっているよ」
「綺麗だろうね」
「うん、とても綺麗だろうね…誰か来たよ」
花瓶の部屋の隣は水晶玉のようなものが飾られた部屋になっている。
ここを一歩前に進むと‥。
溺れて死ぬ(爆)
そして兄妹揃って蝶になるのだった。
THE END
えーと、セーブしないで遊び続けてしまったので、
最初からやり直す事になった。
こまめにセーブしようぜ。(^^;
水晶玉の部屋を入ってすぐ横を向くと花一輪を発見。
花瓶の部屋に戻る。
「ほら、もうすぐだ」
「もうすぐだ」
「仲間が増えるね」
「友達が増えるね」
「うれしいね」
花の無かった花瓶に挿す。
水晶玉の部屋に戻ると水が無くなっており、
柱を渡って水晶玉のところまで行く事が出来る。
近づくと水晶玉の中は蝶がいる事がわかる。
蝶を手に入れた。
すると光りに包まれた人間が現れる。
「ははは、よくここまで来たね坊や。私の事は知っているか?
姿も見せずに恐縮だが、この館の主だよ。
みんなは狩人などと洒落た名前で呼んでくれているがね。
ところで君はどうやら迷い子のようだが、この館の住人からもう話は聞いたろう。
ここは選ばれた者だけが住まう事を許される魂の館なんだ。
四年に一度、満月の下に森の花達が一斉に咲き開く特別な夜。
この館は月の魔法を浴びて姿を現す。
そしてここには森中の花の魂達が、蝶の姿をとって訪れる。
坊やは知っていたか?
蝶というのは、花の魂だという事を。
だがその蝶達と共に月の光の下で、
心の底から彼らの仲間になりたいと願った人間はね、
人の姿をサナギとして捨て去り、蝶となる事が許される。
そう、この館に居る蝶は、皆、人の世を捨ててき者達ばかり。
ある者は現し世を忌み嫌い、ある者は己が才能に絶望し、
またある者は友に裏切られ、傷つけられ、そして疲れ切った。
今、君が持っている魂は君の知り合いかい?
しかしその子もまた、蝶の姿を望んだのだ。
従って君には彼女をこの館から連れ出す資格はない。
ふっ、良い子だから、ここから出ようなどと思わぬ事だ。
君もその子と一緒にここで暮らすと良い。
お望みなら、いつでも蝶の姿にして差し上げる。」
ここからは妹とともに脱出の道を探すのだが、
廊下に出て木人(?)の方を振り向くと、
木人がムクリと起き上がって襲われ、ゲームオーバーである。(^^;
1階【標本室】
「君の持っている蝶はまだ不完全だよ!早く地下室に戻してあげなければ。」
2階【遊戯室】
「おやおや、綺麗な蝶だねえ。それがあんたの妹かい?
さーて、賭けは終わりだね、あたしの勝ちだ。
どうしてかって?あたしは最初に言ったはずだよ。
あんたが自分一人だけの力で妹と会えるかどうか賭けをしようってね。
あんたは十分、あたしの力を借りたじゃないか。
まさか、あれを全部自分一人でやっただなんてお言いじゃなかろうね。」
「ねえおチビちゃん、もう一度、勝負しよう。
この館はもうすぐ消えてしまう。お月さまが陰って行くのと同時にね。
それまでにあんたが館の外に出られるかどうか、それを賭けようじゃないか。」
2階【画家の部屋】
「君!その蝶はどうしたんだい?赤い羽をしているね、まだ青くない。
…そうか、地下室から取って来たんだね。
その蝶は君の知り合いか何かかい?
それを連れてこの館を抜けだすつもりなんだとしたら、うーん。
これは少し問題だぜ。」
「ほら、そこに時計がある。それを君にあげよう。
その針がちょうど12時を示した時、月の魔法は消え失せるんだ。
気をつけたまえよ。」
「君がこの館に留まろうと出ていこうと、それは自由だ。
世界中の誰にも君の意志を束縛する権利はないのだからね。
ただここもそう悪い場所ではないよ、世の中に絶望さえしていればね。」
長椅子の横に時計発見。
「ほら、そこに時計がある」というセリフに反してわかりにくい場所にあるなぁw
時計を手に入れると、一定数歩くごとに時間が進む演出が起こる。
12時までに脱出の道を見つけないとゲームオーバーとなる。
無駄な行動は出来なくなるってわけだ。
1階【音楽室】
音楽室のバイオリンの裏に燭台を発見。
「灯りさえあれば暗い所だって大丈夫でしょ。さ、早くそれを持ってお逃げなさい。」
「まだ分からないの?
一度、青い蝶になってしまったらもう二度と人間の姿に戻ることは出来ないのよ?」
「時間がもうあまり無いわ。早くお逃げなさい。」
「とにかく早く館から出る事だわ。月の魔法が完全に消えてしまう前に。」
2階【寝室】
「あら、まだ羽が赤いのね。月の魔法が完全にかかりきっていないんだわ。
ねえ、その蝶をいったいどうしようって言うの?」
「その蝶を人の姿に戻したいっていうならわかるけど。
そのためにはここから出なくちゃいけないし、そんなこと出来っこないわ!」
「お茶ももう冷めてしまったわ。あなたはまだ何かを探しているの?」
「まだ探しものは見つからないの?
探しても見つからないものなんて放っておけばいいのに。」
テーブルの上に水晶を発見。
「あなた!その水晶をどうする気!?それには月の魔法を弾く力があるのよ!
下手をすればお屋敷の外に出ちゃうかもしれないわ!」
「お屋敷の外に出れば月の魔法が解けてしまう。
時が流れている大人になってしまう。私は嫌!大人になるなんて絶対に嫌だわ!」
1階【談話室】
部屋の奥の暖炉で燭台を使う。
すると奥へと進む事が出来る。
突き当りには何かハメるっぽい窪み。
体当たりしたらカギが落ちてきたw
談話室に戻り、カギを酒棚で使うと、
中からレリーフを入手できる。
わかりやすーい(^^;
レリーフを窪みにハメるとハシゴが降りてくる。
このあと、周囲に扉がある部屋が続くが、
間違った扉に入るとエントランスに戻されてしまう。
最後の謎を解明しよう!
この鏡の前まできたら、水晶を使って脱出だ。
「行くんじゃない!待て!」
振り返ると屋敷は姿を消していった。
そして蝶になった妹も元の姿に戻ったのでした。
CAST
BOY
Ai Orikasa
GIRL
Satomi Koorogi
HUNTER
Kenyuu Horiuchi
COLLECTOR
Kinryuu Arimoto
PIANIST
Ai Orikasa
LADY
Satomi Koorogi
ARTIST
Yasunori Matsumoto
GAMBLER
Akiko Takeguchi
STAFF
COMPUTER GRAPHICS
S.S.D.
MUSIC COMPOSER
Yuji Nomi
SOUNDS EFFECTS
S.S.D.
MUSIC EFFECTS
Yuji Nomi
VOCAL RECORDING
AUDIOタナカ
COORDINATOR
Keiichi Onogi
Hisaya Takabayasi
SUPERVISOR
David S.Stone
やけに制作スタッフが少ないなと思ったけど、
スタッフロールをよく見るとシナリオライターとかプログラマーとか、
いるはずの人がまったくスタロッフロールに出てこない。
もしかしたらシステムサコムのメンバーはみんな非公開なのかも知れない。
本作は厳密に言えばジャンルはホラーではなく、
ダークファンタジーとでも言うべき世界観で、
“恐怖”表現こそ少ないものの、スペック的な低さを逆に利用して
油絵調の画面表現をする事で、不気味で幻想的な雰囲気作りに成功している。
何より、これまでのゲーム機には無かった手法で構築された本作は、
当時の俺様に脳汁がビュルビュル流れ出るゲーム体験であった。
のちにセガサターンで「真説・夢見館 扉の奥に誰かが…」という続編が、
「月花霧幻譚 ~TORICO~」という外伝が発売されている。
だが体験としてのセンセーショナルさは、本作を越える事は無かった。