88ゲーム回想録(33)「シルフィード」


シルフィード
発売元:ゲームアーツ
発売時期:1986年12月
定価:6800円
機種:PC88SR以降

 


テグザー」でPC88SRの普及に貢献したゲームアーツ
当然ながらそんなSR向け新作に注目が集まる事になる。
雑誌の記事で発表された「シルフィード」は
縦スクロールのシューティングゲームだった。
その技術力の高さを伺わせるデモプログラムも公開され、
発売前から期待のタイトルとして名前が上がる事が多いゲームとなった。
ところが「1985年8月の発売を目指します」と言っていた本作は延期に次ぐ延期。
開発が頓挫してもう発売されないのではないか?とすら囁かれた頃、
1986年10月にやっと発売に漕ぎ着けた。
予告した発売時期からは1年2ヶ月の遅れだが、
開発は「テグザー」と同時期に開始しており、
シルフィード」だけで2年半の開発期間を要していた。
そして蓋を開けたそれは、
「スプライト機能を持たないパソコンで面白いシューティングなんて無理だ」
と揶揄していた多くの人を黙らせる完成度であった。

 

ゲーム内容に入る前にこのパッケージアートにも着目したい。


このカッコいいアートを担当したのは末弥純さん
末弥純さんと言えばウィザードリィのアートを担当した人でもあり、
当時のパソコンゲーム雑誌を購読していた人なら馴染みが深いと思う。


めっちゃカッコイイ。
これがそのまま動く世の中にはまだなっていない。
おっと、話を「シルフィード」に戻そう。


ディスク2枚組。
ゲームを立ち上げるとオープニングが始まる。
このオープニングからして凄かった。


‥‥HOW MANY AGES HENCE,
SHALL THIS OUR LOFTY SCENE BE ACTED OVER.
IN STATES UNBORN AND ACCENTS YET UNKNOWN.

ワイヤーフレームで描かれた宇宙母艦へと入っていく。

続いてワイヤーフレームで登場機体の紹介。

…COSMIC CENTURY 3032,EARTHMEN FOUND AN ALIEN SHIP.
BY ANALIZING IT.
HUMAN RACE STARTED TO GO OUTER SPACE.
AND BUILT THE UNITED UNIVERSE.
BUT,INCREASING OF HUMAN LIVING PLANETS,
MEANS THAT OF OUT-LAW PLANETS.
ANTIUNITED UNIVERSE LEADER XACALITE RAIDED THE SHIPYARD,
AND CAPTURED GLOIRE, THE MOST NEW BATTLESHIP.
NEXT,XACALITE RAIDED THE UNITED UNIVERSE 
FORCE DEFENCE COMPLEX TO GET THE PLANETARY BUSTER MISSILES.
RECEIVING THE EMERGENCY CODE FROM THE COMPLEX,
THE U.U.F COMMAND KNOW THE MEANING OF THE SAME TIME 
GUEERRILA OPERATIONS.
NO TIME FOR MASTERING THE FLEETS.
YGGDRASSIL THE COMPUTER,
ORDERD THE SOLO ATTACKING TO GLOIRE BY SA-08"SILPHEED".
BECAUSE MOST SUCCESSFULL.

‥‥CAN YOU COMPLETE THIS MISSION ?


2枚組のディスク、このデモだけでディスク1枚を丸々使っているらしい。
今見ればなんて事無いオープニングかも知れないが、
当時の88SRでワイヤーフレームがグリグリ動くこと自体凄いし、
かっこいいBGMとともに流れるこれは、凄い技術の上で成り立っていたのだ。
当時、このオープニングが繰り返し流れていたパソコンゲームショップも多かったぜ。
余談だがオープニングで表示される上記英文は
シェイクスピアのシーザーの演説からの引用である。

 


ゲームがスタートすると、
自機の正面に巨大な顔が出現する。
敵軍の総大将であるザカリテだ。
「ワシは宇宙の帝王ザカリテ。グロアールある限り貴様らごときに倒されはせん」
88がしゃべったー!88がしゃべったー!!
…とまるで「クララが立った」ときのようなテンションになった思い出。
FM音源のCSMモードを使っての音声合成で、
この部分の開発だけで3ヶ月を要したとのこと。

 


画面は斜め奥に進んでいく。
ゲーム自体は縦スクロールシューティングと同じだが、
画面全体が斜め奥にパースがかかっているような感じだ。
この表現が出来ているのは、キャラクターがポリゴンで描写されているから。
(キャラクターは奥にいけば小さくなるし、左右に移動すると形状が変わる)
ポリゴンによるゲームの構築が一般的になったのは、
プレイステーションセガサターンの世代からであるが、
技術自体は昔からあった。
ただし、昔のゲーム機やパソコンのスペックでは表現力に乏しく、
ゲームで採用するにはドット絵の方が有効だったのだ。
そこをあえて技術力でカバーしたゲームアーツ

操作は8方向移動とショットのみというシンプル設計。
両翼にそれぞれ砲塔が装備されている。
ジョイスティックにも対応している。
奥から手前へ敵や障害物がギュンッと飛んできて、
一般的な縦シューよりもその段階で難しい。
ダメージを受けるとシールドメーターが減少する。


隕石をショットで破壊すると強化アイテムが出現する事がある。
アイテムの種類は以下の通り。

【W】ショットの威力が3段階まで強化
【S】移動速度が1段階アップ
【F】ボタン押しっ放しで連射できるようになる
【B】バリアを張って敵弾を無効化する(直接激突されると無くなる)
【A】自機の周囲に3個の隕石が回ってガードする
【D】画面内の敵を一掃する
【H】シールド回復
【I】一定時間無敵
【N】5000点
【R】シールド全回復(破損も回復)

シールドメーターが無くなったあとにダメージを受けると、
1発目でスピードアップの効果が無くなり、
2発目で砲塔の一つが使えなくなり、連射効果も無くなる。
3発目で自機は破壊され、ゲームオーバーとなる。
全20面もある大ボリュームのゲームだが、コンティニュー機能は無い。
ゲームオーバーになると音声合成
「ハッハッハッハッ、お前は弱かった!」と罵られる。
これがやたらと悔しい・・。
ゲームのボイスでここまで悔しいのは
ファミコン版「水戸黄門」の「残念でしたなぁ~肛門様」と双璧だ。

 


エリア1のボスキャラ登場。

 


ボスを倒すと補給艦へ着艦。


補給艦ではシールドが少し回復する他、
両翼の装備をそれぞれ変える事ができる。
装備のバリエーションはスコアが5万点追加されるごとに増えていく。
スコアは左右それぞれでカウントされている。
つまり片側の攻撃ばかりでスコアを稼いでいると、
逆側の装備は全然増えない。
装備のバリエーションは以下の通り。

【FORWARD BEAM】
初期の武器。

【PHALANX BEAM】
前方に扇状に、側面にも2方向に発射する武器。連射性は低い。

【V-BEAM】
前方にV字方向に発射する武器。連射可能。

【LASER CANNON】
前方にレーザーを発射。火力が高い。レーザーを反射する敵がいる。

【AUTO-AIMING
敵のいる位置に発射されるビーム。装備した側にいる敵にしか発射されない。

初期武器以外を装備しているとき、出撃中に2回ダメージを受けると、
次から2エリアの間、装備不可能となる。
これはとても厳しいペナルティだ。

 


エリア2をクリアすると宇宙ステーションみたいなところに着艦した。


やっと武器が1つ増えたけど、やはり片翼だけだ。

 


エリア3では惑星の地表が画面内にフレームインしてくる。
しつこいようだけど、88のスペックでこういう事するの本当に凄いからね。

 


エリア4では敵軍の要塞内に突入する。
形がハンバーグに似ているw
俺様の周囲ではハンバーグステージと呼んでいたww


要塞内部。
しつこいようだけど、88のスペックで(以下略)


ところでエリア3と4はほとんどアイテムが出現しない。
アイテムを吐き出す隕石が登場しないためだ。
何よりシールド回復が全然出来ないのはキツイ。
これはあえてそういう難しいバランスにしたのではなく、
地表の表示にCPUパワーを取られていたため、
出現させる事ができなかったからだとか・・。
(だったらその分、難易度下げてよ・・)

 


エリア5をクリアすると中間デモ。
5エリアごとに内容の異なる中間デモを見る事ができる。
ちょっとしたご褒美だ。

 

装備の種類も増えてきた。
ここから攻略が楽しくなっていく雰囲気だが、
エリア5までに受けた損傷がたいして回復しておらず、
エリア6であえなくゲームオーバー。
「ハッハッハッハッ、お前の力はそんなものか!」と罵られる。
(罵りワードも5エリアごとに切り替わる)

 


まずこの「シルフィード」。
88SRというシューティングに向かないスペックで、
ちゃんと遊べるシューティングに成り立たせているのがスゴイ。
そしてそれをポリゴンや音声合成という難易度の高い手法で実現しているのもスゴイ。
合わせて言うとBGMも耳に残るキレキレなデキであった。
だが俺様は手放しに「名作」とか「傑作」とか呼ぶ事は出来ない。
このゲームを購入した当時から現在まで、
俺様は自力で2度目の中間デモを見た記憶が無い。
つまり全20エリアのうち1/4そこそこしかこのゲームの内容を知らない。
高すぎる難易度ゆえだ。
アグレッシブにスコアを稼いでいかないと全然増えない装備。
シールドの損傷や武器の故障が次のエリアにも継続し、
ジリ貧になっていく構成。
そしてゲームオーバーになるとエリア1からやり直すしかないストイック過ぎる設計。
100円入れたら続きから遊べるアーケードゲーム以上に厳しいゲームだった。
なので俺様にとってこの「シルフィード」は高嶺の花的な存在なのであった。

オープニングで隠しコマンドを入力すると
先の面からいきなり遊べる事は知っているが、
大好きなゲームだけに、
未クリア面を飛ばして先の面を見てしまうことには抵抗があった。
なので俺様はいまだ88版の“グロアール”(最終ボス)を見た事がない。