やっぱりセガが好き第80回「火激」


火激
ホット・ビィ
1991年4月26日/アクション/7700円

 


1988年にカネコが開発しタイトーが販売した
同名アーケードタイトルの移植である。
また、「インセクターX」に続くホット・ビィのメガドライブ参入第2弾であった。
本来は本作が第1弾になる予定だったらしいが、
開発が難航し、延期を重ねてようやく発売に漕ぎ着けた。

 

アーケード版リリース当時。
1985年に1作目が公開され、
1988年まで6作まで作られた劇場映画「ビー・バップ・ハイスクール」によって
ヤンキー(不良)ブームが起こっていた。
当時の男子学生は、学生服をボンタン(幅の拾い学生ズボン)や
長ラン(裾の長い学ラン)に着替え、
“ボンタン狩り”という遊びで他校生との親交を深めていた。
その波はビデオゲームにも及び、「熱血硬派くにおくん」を代表として
ヤンキー世界を描くゲームが登場する。
本作もそんなヤンキー世界を題材としたゲームである。
ちなみに本作に登場するヤンキーには
ビー・バップ・ハイスクールの登場人物に類似したヤツも出てくるw

 


元プロボクサーの“慶”は、滅法強いが決して弱い者いじめはしない硬派の正義漢。
しかし、そんな慶の腕前に目をつけた悪名とどろく極悪ツッパリ軍団“火激”の総長が、
仲間に引き入れようと近づいてきた。

総長:オレの軍団に入れ、おまえの腕なら副隊長にしてやるぜ。
慶:断わる!俺は、てめえらのような
 腐りきった奴らの仲間にだけは絶対ならねえ……。
総長:ほほう、オレの誘いを蹴るとはいい度胸じゃねえか。
 だが、断るからにはそれなりの覚悟はできてるんだろうな。
慶:…………。
総長:後で泣きをみるぜ・フッフッフ……。

それから数日後……。
慶のかわいい弟が何者かに襲われ、病院にかつぎ込まれた。

慶:医者の先生、弟の、弟のケガは!?
医者:一命は取りとめたものの重体です。ふむ、それにしても酷いことをする…。
慶:くそう、奴らだ。こんな事をするのは奴らしかいねえ!
 この仇は、きっと取ってやるぞう!!

医者:あっ、君、どこへ行くのかね!?

こうして、慶は単身「火激」のアジトに乗り込んでいった。
がんばれ慶、負けるな慶。明日の正義を信じて街の巨漢をぶちのめせ!

※上記のストーリー設定はメガドライブ版で追加されたオリジナルである。

 


火激軍団右参謀
政美
二十歳
元暴走族頭。
傷害致死によりその筋に三回‥‥
拳法の心得を持つ。

 


火激軍団
左参謀

二十歳
対立組織との抗争で多数を殺傷。その筋より逃走中。
女装の趣味がある。

 


火激軍団 総長
国籍‥‥?
年齢‥‥?
姓名‥‥?
住所‥‥?
全てにおいて不明。

このゲームでは対決する相手はまだいるのだが、
ゲーム冒頭、なぜかこの3人だけ紹介画面がある。
全員分入れようとして力尽きたのかな?(^_^;

 


第1隊隊長「安次」
ザコ兵隊からようやく幹部に昇格したばかりの一番下っ端のボス。
兵隊に毛が生えた程度の強さでパンチ力・スタミナ共弱い。

舞台はスラム街の一角にある廃ビル。
1階から9階までタイマン勝負に勝ちながら上がっていく死亡遊戯方式。
(つまり全9ステージ)

 


まず弱いザコヤンキーが1人ずつ出てくるので、
それらをみんな倒すと幹部とのタイマン勝負になる。
(ベルトスクロール要素は無い)
十字キーで部屋の中を8方向に移動。
Aボタンでジャンプ、Bボタンでジャブ、Cボタンでストレート。
ジャブはスピードは速いが何度もヒットさせないと相手を吹き飛ばせない。
ストレートは一撃で相手を吹き飛ばせるが、
連打はできないのでタイミングを狙う必要がある。
BボタンとCボタンを同時に押すとダッキングで相手のパンチを避ける。

 


体力制で、体力が無くなって吹き飛ばされると、
街の喧嘩なのになぜかレフェリーが現れてカウントを数える。(^^;
ときおりアイテムが出現。
ハンバーガーは体力を10回復。缶詰めは20回復。
グラブを取るとしばらくの間、ジャブが速くなる。

 


レフェリーの10カウント(8から数え始める)が入り、敗北すると、
松という名前のオバちゃんパーマの男にマンホールに落とされる。
ヤンキー社会は敗者に厳しい世界だぜ。

なお、これらの基本構成はアーケード版からかなり改変されている。
まずアーケード版は縦画面のゲームだ。


▲アーケード版の画面

また、廃ビルを上っていく構成は本作のオリジナルで、
アーケード版では周囲を火激軍団の幹部達に囲まれて、
順番にタイマン勝負をするという内容だった。

ただ、アクションの内容はよく覚えていないので、
本作がどこまでプレイ感の違うものなのかは判断できない。
ただ、難度が高くて大味なゲームだったという印象だけは残っている。
(タイマン前にザコヤンキーと戦うシーンはメガドライブのオリジナルだ)

「やるのかコラ!」「終わりかよ」「舐めんじゃねーぞ」「やるじゃ~ん♪」
といったボイスが頻繁に流れてくるのはアーケード版からの特長で、
そちらはメガドライブ版でも再現されている。

余談であるが、メガドライブ版のパッケージには
「爆笑バイオレンスアクション」と書かれているが、
特に“爆笑”するシーンは無いような・・。

 


ラウンド2の相手は第2隊隊長「桃田」。
モヒカン刈りがGOODな2Fのボス。
最初にドラム缶を爆発させてびっくりさせてくれるが、
これもあまり強くない。

 


だんだんコツがわかってきたのだが、
ジャブの場合は相手が追ってくるところをバックしながら打つ。
ストレートは相手が横ラインを合わせて近づいたときに特定の距離で打つ。
これで的確に相手を吹き飛ばす事ができる。
EASYモードで遊んだからかも知れないけど、ジャンプやダッキングはほぼ使わず。
何より横のラインを合わせるのが重要。
壁に追い詰められたら回り込んで逆側に移動。
これを繰り返せば攻略はラクだ。(まあ、EASYモードだけど(^^;)

 


第3隊隊長「竜二」。
砂袋で攻撃してくる汚い奴。
当たるとややダメージ大きいので注意。
マユ毛のない爬虫類系の顔は迫力充分!




第4隊隊長「浩」。
通称キンちゃん。
ねじりはち巻きをして、いつも何かを食べている。
元すもう取りで、動きはにぶいが強烈な張り手が武器。




第5隊隊長「お杉」。
緑のツナギとマイクがトレードマーク。
動きがすばしっこく、体力も結構ある。
平ボス筆頭格。




左参謀「太」
パンチも速くスタミナ充分。
さすが火激の大幹部のひとりだ。
対立組織との抗争で多数を殺傷した実績を持つ。
不意打ちが得意で女装の趣味がある。20歳。




右参謀「政美」
元暴走族出身。傷害致死3回。
拳法を得意とし、特に目にも止まらぬ速さの正拳突きには要注意!
動きの速さと技の切れ味は軍団No.1。20歳。




直属隊隊長「松」
要領の良さだけで伸し上がった総長の知恵袋で、
慶に敗れたボス達をマンホールに投げ捨てる冷酷非情の男。
黄色の戦闘服と鉄球で武装するが、その強さはさて?


今までボス達をマンホールに叩き落としてきた残虐非道の松だが、
なんと一撃で倒せるw
こういう個性好き。

 


そして最上階へ。
一緒に連れてるスケは、ケバいアーパーギャル!

 


火激軍団・総長
氏名・年齢・国籍・住所すべて不詳。
いつ、どこからこの街にやって来たのか誰も知らないが、
けた外れの強さと残忍な性格で街中の不良をまとめ上げ、火激軍団の頂点に立つ。
その異様に老けた容貌は、戦う前からすでに相手の戦意を失わせる力を持っている。


そして総長を倒してエンディングへ。


主人公の慶は硬派な奴かと思ってたけど、
総長から奪ったアーパーギャルの尻を撫で回すスケベっぷりを最後に披露。
(撫で回す手はアニメーションしていますw)

 

SCREENPLAY
ONE TWO DIAMOND

PROGRAMMING
MR.NAGAYA
CUBE AND TODA

GRAPHIC DESIGN
MIKE YOROZUYA
MOTOR GUNMA

MUSIC COMPOSED BY
KANEKO CO.,LTD.
MECANO ASSOCIATES

MUSIC ARRANGED BY
MECANO ASSOCIATES

SOUND DESIGN
M.SUZUKI

DIRECTED BY
PROFESSOR BANBAN

PRODUCED BY
DRAMATIC A GO GO

PRESENTED BY
HOT・B

 

 

ちなみにオリジナル版には尻を撫で回すエンディング画像はなく、
最後まで硬派な世界観でまとめている。


▲アーケード版のエンディング画像

 

さて、本作メガドライブ版「火激」は、
実に珍しいトラブルを起こしている。
本作の発売日となる1991年4月26日の読売新聞に
こんな記事が掲載されていた。

家庭用TVゲーム ユーザーの皆様へ
4月26日発売のホット・ビィ社製のゲームソフト「火激」は、
当社製作による業務用ゲーム「火激」とは全く関係のない別のゲームですので、
ここにユーザーの皆様にお知らせ申し上げます。
(株)金子製作所

アーケードの移植ゲームなのに、
移植元の会社が「このゲームは移植元とは無関係」という宣言をする。
これは一体どういう事だろうか?
普通は移植元の権利を持っている会社が認めなかったら販売できないのではないか?
販売停止でも内容修正でも訴訟でもなく
「原作側が新聞掲載で無関係を訴える」という異例の結末。

そもそもカネコはこのゲームのどこに問題を感じていたのだろうか?
内容の改変はあるものの、ゲーム内容はそれなりに遊べるものになっている。
「商品レベルに達していない」と問題になるようには思えない。

ひょっとして「尻を撫でる」エンディングによって
硬派な世界観がブチ壊された事に怒ったのだろうか?

はたまた、パッケージの裏表紙で、
「アーケードの迷作が帰ってきた。」
などと自虐的な売り文句をホット・ビィが勝手につけた事にキレたのか?

 

それにしても、あきらかに移植ゲームなのに、
「これは無関係」などと新聞に記事を載せるなどというのは
何か大人げない私情のもつれがあったのではないかと興味が尽きないぜ。(^_^;