やっぱりセガが好き第70回「エル・ヴィエント」


エル・ヴィエント
ウルフチーム
1991年9月20日/アクション/8500円

 


ウルフチームメガドライブ6作目。
同年12月20日メガCDで発売する「アーネスト・エバンス」
1993年3月30日「アネット再び」と世界観を共有する三部作の1作目だ。
クトゥルフ神話をモチーフとし、禁酒法時代のアメリカを舞台にしている。

本作は主人公の少女アネットを操作して進めるアクションゲームだ。
美少女キャラを操作するアクションゲームはまだ少なかった時代だが、
メガドライブにはすでに日本テレネットからヴァリスIII」が、
メサイヤから魔物ハンター妖子 第7の警鐘」が登場しており、
何匹目かのドジョウ感はすでに出ていた。


「風」が迫りつつある……
その巨大な鎌首をもたげ、
来るべき凶々しい世界の創造のために…

大いなる「風」の力
~エル・ヴァエント~が胎動を始めた…


ニューヨーク、1982年
摩天楼は邪悪な闇の力に覆い尽くされようとしていた。
異界の邪神「ハスター」を信仰する狂信者達が
ハスター召喚の儀式を企てていたのである…


ハスターを召喚し人類の滅亡を企む教祖ヘンリー


ハスターの魔力を受け継ぐ少女レスティアーナ

教団とともにハスター召喚のために暗躍する
シカゴマフィアの首領アル・カポネ


超高層魔術建築エンパイアステートビルに邪神が降臨する


凶々しき野望を打ち砕くため、
今、一人の少女が疾る!!


邪神、ハスターの血と共に
教団に立ち向かう宿命の少女、アネット


「なぜ私達の邪魔をするの、アネット?
同じハスター様の血を引く仲間でしょう?」


「……同じ人間だからよ!!」

魔都N.Y.を舞台に凄絶な戦いの火蓋が切って落とされる!

 


頭身高めのアネットを操作するサイドビューアクション。
左右移動、しゃがみ、Bボタンでジャンプ。


ジャンプ高め。

Aボタンの通常攻撃はブーメランで、一度に2発まで出せる。
Cボタンの魔法攻撃はMPを消費するので連続使用には限度があるが、
待っていれば回復する。


最初に持っているのは火球攻撃。
まっすぐ飛んでいくだけだが、ブーメランよりは攻撃力が高そう。

画面の左上に「EXP」が表示されている。
このゲームは敵を倒すと経験値を貯める事ができ、
一定値に達するとHPの上限が上がる。
これはゲームオーバーになってコンティニューしても継続されるので、
ゲームが難しくて進めなくても、
コンティニューするたびにラクになるという親切設計だ。
(コンティニューは3回しか出来ないけど・・)


ちなみにこのゲームは一度倒した敵は出てこない。
これはどういう事がというと、敵を倒さずに進めば進むほど、
後半に成長が足りなくなり難度が増すということ。
時間制限は無いから、倒せる敵は全員倒して進むべし。


窓から鉢植えを落としてくる敵w
微笑ましい(^^;

 


扉から建物内部に入る場所もある。

 


倒すとバラバラになったり、大爆発したりする敵もいて
ハデな演出も散見される。

 


ステージ1のボスは戦車。

 


「久しいな、アネット」
アル・カポネ!!あなたがハスター信者に手を貸しているのね!」
「そうだ。そして君はまた邪魔をしようというんだな」
「いくらお金のためとはいえ、いい加減にしないと本当に恐ろしいことになるのよ」
「カネ…か、それもある。
だが3年前に失敗したハスター召喚を成し遂げたいという気持ちもあるな」
「そんな……狂気だわ!ハスターが復活したらみんな滅んでしまうのよ!」
「何とでも言うがいい、俺の心は変わらん……。
ラシュモアに行ってみろ、面白いものがお前を待っているぞ」

ステージクリアごとにこのような会話シーンが挿入される。
このあたりも含め、全体的にヴァリスに類似したフォーマットになっている。
(ヴァリス1作目はウルフチームが開発したタイトルである)

 


ここがアル・カポネの言うラシュモアだろうか?
そもそもラシュモアがどんな場所なのか知らんけどw


誰がなんのために設置したのかわからないコースがグニャグニャのリフトとか、
乗ると壊れる丸太橋とか、そんな丸太に埋め尽くされた縦穴とか、
風車みたいなのの上を渡ったりとか、
ここ一体どこやねん!
SASUKEの会場か?

 


ボス戦も積まれた丸太の上でw

 


「なかなかやるわね、アネット」
「あなたは?なぜ私の名前を知っているの?」
「レスティアーナ。貴女と同じハスター様の血を引く選ばれた人間よ」
「………!?」
「ハスター様は私が召喚してみせる。貴女に邪魔はさせないわ!」


「な…何を言っているの?あなたはハスター召喚のいけにえにされてしまうのよ!」
「…うそをついても無駄よ!
私はハスター様の無限の力を取り込むことが出来るのよ!!」

「あなたはだまされているわ!」
「何とでも言うがいいわ。私の邪魔をするのならそれなりの覚悟をしておくことね」
「待って!レスティアーナ」
「ひとまずはさよならアネット」

 


水龍を全て倒すと2つ目の魔法をゲット。


魔法ボタンを押しっぱなしにすると、2つ目の魔法が使う事ができる。
(右上のアイコンで確認できる)
魔法は5つまで増えるのだが、後に入手する魔法ほどタメ時間が必要となる。
今回手に入った水の魔法は、地を這う攻撃。
ここのように通路を塞ぐ炎を消すときにも使う。

 


グニャングニャンのスライムのようなボス。
中のコアみたいなのに攻撃を当てないと体力が減らない。




「アネットめ、ことごとく我々の邪魔をしおる」
「………」
「このままではハスター様の召喚すら妨害されかねんぞ!!」
「ヘンリー、あなたアネットを恐れているの?
あんな小娘、なにかしようものなら私がとどめを刺すわ」
「とどめ……か。アネットに敗れたお前が言っても今一つ信頼できぬ台詞じゃな」


「なに!?」
「いいか、お前はハスター様を身体に取り込む事だけを考えるのだ。
余計な事を考えるな!」

「……それは生贄になれという事なの?」
「何を言っている。お前は生贄になるのではない。ハスター様そのものになるのだ!」
「…………」

 


ステージ4は何だかわからんけどイルカに乗って海を進む。

 


巨大なキャラを出したいのはわかるけど、
ドットがデカいよ!(^_^;

 


海を渡り切ると3つ目の魔法をゲット。


縦に長い風の魔法。
敵がワラワラ出てくるシーンで便利になる。

 




「カポネさん!いい加減にハスター教団とは手を切って!」
「しつこいな、アネット。あまりしつこいと本当にただではすまなくなるよ」
「そんなこと言って……本当にハスターを復活させるつもりなの?」
「…………」
「とてもシカゴマフィアのボスとは思えないわ。
本当に危険な事が何かすら解ってないんですからね」
「…………」
「お願い。この件から手を退いて下さい。あなたも騙されているんですよ!」
「…………わかった。キャニオンの寺院をお前が越えられれば、手を退こう」
「キャニオン…グランドキャニオンにある寺院ですね」
「ああ、俺も奴らのやり方にはうんざりしていたのだ。嘘は言わん」
「わかりました。きっと越えてみせます!」

 




ステージ5のボスは手前に小さい泡があると攻撃が掻き消されて本体まで届かない。
風の魔法で泡を少なくした隙きを狙おう。

 


「アネット!無事だったか?」
「アーネストさん!!」
「突然カポネから連絡があってな、
ハスター教団の奴らが何か目論んでいると聞いて慌てて来たんだ」
「カポネが…そう、良かった」
「ハスター絡みならデトロイトにいるジークを訪ねてみろ。
ハスター教団のにはあいつが詳しいからな」
「うん……ありがとう!」
「当然のことさ。
カポネとは俺が話をつけといてやるからお前は安心して先へ行くんだ」

 




ステージ6のボスは3つの箱のどこに入ってるか当て続けると勝てるw
隅でしゃがんでいれば相手の攻撃は当たらない。

 


ジークフリード………さん?」
「アネットですか。何とも騒々しいことですね」
「ごめんなさい……でも聞きたい事があったから……」
「ハスター教団の事でしょう。連中また何か企んでますからね」
「レスティアーナという娘がハスターを召喚しようとしてるんです」
「ああ、よく知っていますね。
でもハスターを召喚させようとしているのはヘンリーという司祭ですよ」
「……ヘンリー?」


「そう、ヘンリーは強大な力をを与えるといってレスティアーナを騙し、
ハスター召喚の生贄に使おうとしているのです」
「な……なんて事なの」
「よく聞いて下さいアネット。
今、ヘンリーを乗せた飛行機が召喚の儀式場となる
エンパイアステートビルへと向かおうとしています」
「召喚の儀式をしようというのね」
「ヘンリーをエンパイアステートビルに入れてはいけません。
いいですね、レスティアーナを倒すのではなく、ヘンリーを倒すのです」
「うん…わかりました」
「気をつけて、相手は強大ですよ」
「はいっ。ありがとうジークさん」

 


こういう飛行機の上の戦いがゲームに登場するたびに
未来少年コナン」の影響を感じてしまうのは俺様だけだろうか?

 


飛行機のコアみたいなのを撃ち続けるボス戦。

 


「はっはっはっ……なかなか強いなアネット」
「…あなたがヘンリーね」
「まさかカポネの手を退かせるとはな……とんだ誤算だったわ」
「レスティアーナを返しなさい!」
「もう手遅れだ。レスティアーナの魂はすでにハスター様のものになっている。
後はハスター様のいけにえとしての役目を果たさせるだけだ」
「そんなことはさせないわ!」
「これ以上ムダな努力を重ねたいというなら、我々の建てた神殿、
エンパイアステートビルに来い。
レスティアーナと共に待っておるぞ!」

 


さて、いよいよ最終ステージとなるエンパイアステートビル
エレベータなどを使ってビルを上へ上へと登っていくのだが、
このステージに出てくるコウモリが大問題。


大量に出現してアネットを追尾。
アネットに接触するとずっとひっついて体力を減らす。
ひっつくと攻撃がうまく当たらない。
そうなる前に魔法で駆除すればいいんだけど、
このコウモリは倒しても無限に湧いてくる。
しかも倒しても経験値が増えない。
意地悪かよ!


ステージ地形もヒドイ。
例えばこの終盤の地点。左の突起にジャンプで乗ればいいのだが、
失敗するとスタート地点まで真っ直ぐに落ちていくという
嫌がらせにしか思えない設計・・。

 


なんとか最上部に辿り着き、
ボス戦に突入する頃にはHPが残り少なく・・。


このステージに来るまでは
比較的良心的なバランス調整がされているゲームだったんだけど、
最終ステージでバランス崩壊してるよ・・。
ちなみにこのステージで経験値が入るのは、
途中に数体出現する硬い兵士だけなので、
コンティニューしても体力アップしての再挑戦は望みが薄い。

俺様の考えた最善策は、このステージ以前のステージで、
コンティニュー3回を全て使って限界までレベルアップする事だ。
(その場合、最終ステージがワンチャンスになるけどね)

 


ドラゴンに変身したレスティアーナとは
どうしても消耗戦になる。
攻撃をなるべく避けながら効率的な魔法攻撃を当てていこう。

 


戦いに勝利したアネット。
風が邪悪な息吹を、平和の歓喜へと変化させるのを彼女は感じた。
しかし、レスティアーナがその足元に醜い骸を晒しているのを見ると
深い寂しさが込み上げてくる。
魂を奪われたレスティアーナをハスターの呪縛から解き放つには、
これしか方法は無かった……。
そして人類を救うにもこれが唯一の手段だったのである……。
ハドソン側から差し込む夕陽が、ビルの瓦礫を朱に染めてゆく……。
今、戦いは終わったのである。


PRODUCED BY
MASAAKI UNO

DIRECTED BY
HIROYUKI KAYANO

EXECTIVE PRODUCED BY
MASAHIRO AKISHINO

MAIN PROGRAMED BY
SMALL TARO

PLANNING AND STORY WRITTEN BY
CHISHIO OTSUYAMA

MAIN CHARACTER DESIGNED BY
KAZUTOSHI YAMANE

MUSIC COMPOSED BY
MOTOI SAKURABA

GRAPHIC DESIGNED BY
MASAYUKI MATSUSHIMA
KIYOKA TAJIMA
YUJI USHIJIMA
TOMONOBU KIZUKI


二人とも、今の内にせいぜい喜んでいるがいい……。
あと数年で世界は恐慌に襲われ、戦乱と混乱に満たされる…。
私が創り上げたこの素晴らしい構図を
たかがハスターごときに邪魔されてたまるものか…!


MUSIC SUPPORTED BY
RYOTA FURUYA

GRAPHIC SUPPORTED BY
YAMA CHAN

COOPERATION BY
CHIKAAKI TOKUHIRO
JUN HOYANO

SUB PROGRAMED BY
HIROSHI IZUMINO

BUS INESS WORKS
KIMITO IIJIMA
TABA CHAN

SPECIAL THANKS TO
KAZUYUKI FUKUSHIMA

ALL PLAYERS AND ALL CHARACTERS

ALL PRODUCED BY
WOLFTEAM

 


結局、最後はヘンリー教祖は登場せず。
そしてジークフリードは敵なのか?味方なのか?
全ての答えは三作目の「アネット再び」へ続く・・と思う。
(二作目の「エドワード・ランディ」は本作の数年前のお話)

ゲームとしては「ヴァリスIII」や
魔物ハンター妖子」とも見劣りしない力の入った作り。
最終ステージ以外は難易度のバランスも良かった。
レベルデザインゲームとしての割り切りが激しく、
「こんな地形の場所ある?」と苦笑いしてしまうような箇所が多い。
また、いまなぜここにいるのか良くわからないステージもあったり、
展開がプレイヤーに説明不足だったり、
世界観演出が大雑把なゲームに思えた。
キャラクターデザインはとても優れており、
特に主人公アネットは魅力的に描かれている。
本作でキャラクターデザインを担当したのは、
萩原一至先生のアシスタントをしていた山根和俊さん。
「エル・ヴィエント」は雑誌「BEEP!メガドライブ」で
コミカライズ化されている。
残念ながら未完で連載が終わってしまったが、
山根和俊さんはその後、本職の漫画家となる。

本作をプログラムしたのは、「グラナダ」の豊田利夫さん。
(パッケージ裏にも「グラナダスタッフが贈る」と記載されている)