88ゲーム回想録(24)「マスター・オブ・モンスターズ」

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マスター・オブ・モンスターズ
(システムソフト)
1988年10月/SLG/8000円

 

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1979年に創業した福岡のコンピューターソフト会社「システムソフト」。
初期は「ロードランナー」や「チョップリフター」などの
海外ゲーム移植で有名になったが、
システムソフトのオリジナルタイトルとして全国的に名が轟いたのは
1985年にPC98向けにリリースされた「現代大戦略」のシリーズであった。
これまでもウォーSLGはパソコンで多く登場していたが、
それらは仕組みが複雑過ぎたり、表現がわかりにくかったりで、
一部のコアなファンだけが理解できる内容だった。
「現代大戦略」はそれらを多くのユーザーが理解できるように再構築し、
ウォーSLGの旨味に誰もが気づくような建て付けを実現させた。
「現代大戦略」の功績は
ゲームスタート時にユニットを1から生産する事にした点だと思う。
当初は「戦争が始まってから生産を1から始めるなんてリアルではない」などと
既存のSLGファンからは揶揄されたらしいが、
だからこそ初心者が勝利までのロジックを順序立てて理解できたのだと俺様は思う。

そんな「現代大戦略」は88、X1、FM-7MSXと8ビットパソコンに移植され、
幅広いユーザーに普及した。
1987年3月には98向けに「大戦略II」がリリース。
それと同時期に88で「SUPER大戦略」がリリースされた。
俺様が熱中したのはその「SUPER大戦略」だった。

そして「SUPER大戦略」によってウォーSLGの楽しさを知った俺様。
パソコン雑誌で98向けにリリースされた「ファンタジーナイト」の存在を知る。
それは大戦略のユニットをドラゴンなどの
ファンタジーキャラクターに置き換えたものだった。
当時のバソコンゲームでは“剣と魔法の西洋ファンタジーが大流行。
大戦略のシステムとファンタジー世界観の合体は、
とてつもなく魅力的なゲームソフトに思えた。
俺様は88への移植を待った。
残念ながら「ファンタジーナイト」は移植されなかったが、
かわりに「大戦略+ファンタジー」のタイトルがリリースされた。
それが「マスター・オブ・モンスターズ」である。
(前置きが長くてスマン)

 

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基本的なシステムは「SUPER大戦略」から引用されている。
ヘックスと呼ばれる6角形で構成されたマップ上でゲームを行う。

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大戦略では参加プレイヤーごとに国を選ぶわけだが、
このゲームでは“マスター”を選択する。
そして敵国のマスターを倒す事が目標となる。
ユニットの召喚や大魔法(1ターンに1回だけ使える)は、
マスターがMPを消費して行う。
マスターによって召喚できるモンスターが異なる。
召喚できるモンスターは以下の通り。

 

ウォーロック
ドラゴン(召喚MP 51/Neutral/MaxHP 32/格闘 9.2/装備無し)
天使(召喚MP 36/Law/MaxHP 30/格闘 2.2/稲妻 6.2)
ロック鳥(召喚MP 51/Neutral/MaxHP 32/格闘 9.2/装備無し)
セイレーン(召喚MP 13/Law/MaxHP 16/格闘 1.1/音波 10.2)
サーペント(召喚MP 74/Neutral/MaxHP 62/格闘 12.2/装備無し)
ユニコーン(召喚MP 20/Law/MaxHP 26/格闘 12.2/装備無し)
トロール(召喚MP 18/Neutral/MaxHP 32/格闘 13.1/装備無し)
戦士(召喚MP 12/Law/MaxHP 26/格闘 3.3/装備無し)

ネクロマンサー
ドラゴン(召喚MP 51/Neutral/MaxHP 32/格闘 9.2/装備無し)
デーモン(召喚MP 34/Chaos/MaxHP 31/格闘 5.1/稲妻 4.3)
レイス(召喚MP 10/Chaos/MaxHP 15/格闘 1.2/死の波動 4.2)
マンティコア(召喚MP 20/Neutral/MaxHP 32/格闘 5.3/装備無し)
クラーケン(召喚MP 64/Neutral/MaxHP 60/格闘 3.8/装備無し)
ミノタウルス(召喚MP 17/Chaos/MaxHP 31/格闘 6.2/装備無し)
ゴーレム(召喚MP 20/Chaos/MaxHP 26/格闘 12.1/装備無し)
バーバリアン(召喚MP 12/Chaos/MaxHP 30/格闘 5.2/装備無し)

ソーサラー
ドラゴン(召喚MP 51/Neutral/MaxHP 32/格闘 9.2/装備無し)
天使(召喚MP 36/Law/MaxHP 30/格闘 2.2/稲妻 6.2)
ペガサス(召喚MP 18/Law/MaxHP 30/格闘 3.4/装備無し)
セイレーン(召喚MP 13/Law/MaxHP 16/格闘 1.1/音波 10.2)
サーペント(召喚MP 74/Neutral/MaxHP 62/格闘 12.2/装備無し)
トロール(召喚MP 18/Neutral/MaxHP 32/格闘 13.1/装備無し)
リザードマン(召喚MP 10/Neutral/MaxHP 24/格闘 2.3/弓矢 4.2)
戦士(召喚MP 12/Law/MaxHP 26/格闘 3.3/装備無し)

ウィザード
ドラゴン(召喚MP 51/Neutral/MaxHP 32/格闘 9.2/装備無し)
デーモン(召喚MP 34/Chaos/MaxHP 31/格闘 5.1/稲妻 4.3)
レイス(召喚MP 10/Chaos/MaxHP 15/格闘 1.2/死の波動 4.2)
グリフォン(召喚MP 22/Neutral/MaxHP 31/格闘 8.2/装備無し)
クラーケン(召喚MP 64/Neutral/MaxHP 60/格闘 3.8/装備無し)
ミノタウルス(召喚MP 17/Chaos/MaxHP 31/格闘 6.2/装備無し)
ゴーレム(召喚MP 20/Chaos/MaxHP 26/格闘 12.1/装備無し)
バーバリアン(召喚MP 12/Chaos/MaxHP 30/格闘 5.2/装備無し)

モナー
ドラゴン(召喚MP 26/Neutral/MaxHP 38/格闘 9.2/装備無し)
天使(召喚MP 36/Law/MaxHP 30/格闘 2.2/稲妻 6.2)
デーモン(召喚MP 34/Chaos/MaxHP 31/格闘 5.1/稲妻 4.3)
グリフォン(召喚MP 22/Neutral/MaxHP 31/格闘 8.2/装備無し)
マンティコア(召喚MP 20/Neutral/MaxHP 32/格闘 5.3/装備無し)
サーペント(召喚MP 74/Neutral/MaxHP 62/格闘 12.2/装備無し)
クラーケン(召喚MP 64/Neutral/MaxHP 60/格闘 3.8/装備無し)
ミノタウルス(召喚MP 17/Chaos/MaxHP 31/格闘 6.2/装備無し)
トロール(召喚MP 18/Neutral/MaxHP 32/格闘 13.1/装備無し)


ゲームはターン制で順番に行動を行う。
ユニットであるモンスターはマスターと隣接したヘックスに召喚できる。

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召喚したモンスターは次のターンで移動できる。
他マスターを倒す事が目的なわけだから、
倒すべきマスターを包囲するようにユニットを進めていく。

モンスターの最大召喚数は、マスターが支配している塔の数になっている。
より多くのユニットで攻めるために塔を占領していこう。

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(塔にはモンスターの体力回復の機能もある)

侵攻を進めていくと、敵モンスターと接触し始める。

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隣接すると戦闘を仕掛ける事ができる。
さて、ここでは有利になる相手を選ぶ事が大事なわけだが、
戦闘に影響するパラメータは複雑だ。
このゲームではターンごとに「朝→昼→夕→夜」と変わっていくのだが、
LAW、NEUTRAL、CHAOSというパラメータにより、
得意な時間帯と苦手な時間帯が決まっている。
地形適正、攻撃の属性などがある他、
空を飛ぶやつ、海に潜るやつなどがおり、
それらを総合してどのモンスターがどのモンスターに攻撃するのが適切かを考える。
大戦略の場合は「航空機に対しては対空兵器」などわかりやすかったが、
本作はそのあたりがマニアックになってしまっている。

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このゲーム最大の面白い点は、
ユニットに経験値とレベルアップの概念がある点だ。
大戦略にも熟練度という概念はあったが、
本作ではレベルが上がるとドラゴンがドラゴンロードになるなど、
ユニット自体が別のものに変わる。(グラフィックも)
これがなかなかに熱い。
ただし、COMはレベルアップしそうなモンスターを積極的に狙ってくるようで、
モンスターを無事にクラスチェンジさせるのは困難だ。

8つのマップを連続でクリアしていくキャンペーンモードでは、
次のマップにレベルの上がったユニットを引き継ぐ事ができるが、
逆にレベルアップできずに進めると煮詰まってしまうという厳しいものであった。

 


さて、こんな感じで、
その後のシミュレーションRPGに発展する偉大な基礎を提示した本作だが、
今現在に本作を遊ぶ事はオススメしない。
COMの思考時間に起因して、ゲーム全体のプレイ時間は長尺で最適化もされていない。
いまプレイしたらツライ事が多いだろう。
また、本作はその後タイトル名を冠するシリーズ作が10本ほど登場しているが、
本作の影響を受けた多くの名作と肩を並べるものは生み出せていないように思う。