88ゲーム回想録(26)「J.B.ハロルドシリーズ」


殺人倶楽部(マーダークラブ)
(リバーヒルソフト)
1986年8月/AVG/7800円

 


この時代、ゲームの世界でサスペンスモノと言ってもまだまだ稚拙で、
映画や小説、テレビドラマ等と並べて比べられるようなものでは無かった。
その多くが「言葉探し」や「紙芝居レベル」に終始するものばかりだったのだ。
(それはそれで味はあるものであるが)
「グラフィック、サウンド、シナリオ…全てをプログラマーが作りました」
なんてゲームも珍しくない。
シナリオライター起用!』なんてだけで話題になったものだ。
そんな時に登場したこの「殺人倶楽部」は、
ミステリーゲーム世界のレベルを押し上げた作品と言ってもいいだろう。
セリフ回しや事件のトリック、渋いグラフィック、
ハードボイルド小説を読み進めるようなゲーム展開は、
大人のゲームとして認知されるに至った。

 


8日、AM1:00頃、ハウリントンカレッジ通用門近くの駐車場にて、
車中より男性死体を発見。
死因は、ナイフにて背中から受けた数箇所の刺し傷による出血多量。
被害者は、ビル・ロビンズ、34才、ロビンス商会社長。
現在、操作難航中・・・・・

 


主人公はリバティータウン警察署の刑事課勤務J.B.ハロルド。
被害者ビル・ロビンズの事件を捜査するため刑事部屋からゲームが始まる。

 


判明している全ての関係者のもとへ捜査に行く事が出来る。
そして新たな関係者や関連する場所が判明すると行けるポイントが増えていく。

 


関係者に聞き込みをすると、名前、職業、趣味や特技まで、
様々な事を聞く事ができる。
こうして膨大な関係者情報を掻き集めると、
証言のウソや矛盾に気づくようになる仕組みだ。
怪しいと思ったら検事に「家宅捜査」や「逮捕状」の許可を申請。
真犯人を逮捕して取調室で自白させたらクリアとなる。

ここで面白いのは、ゲームのパッケージ付属品にある。
本作には「捜査手帳」が付属しており、
該当ページに関係者の写真を貼ったり、
情報を書き込んでいったりするプレイスタイルなのだ。
捜査の後半はゲーム画面よりもこの捜査手帳を読み込む事の方が多くなる。
これが何とも楽しかった。
(付属品には他に「依頼者からの手紙」と「事件当日の新聞」があった)

膨大なプレイ時間が必要なゲームだったが、
見事なミステリー体験だった。

 

 


マンハッタンレクイエム
(リバーヒルソフト)
1987年7月/AVG/8580円

前作から11ヵ月後に続編の「マンハッタンレクイエム」が発売された。
前作が大好きだった俺様はすぐに飛びついた。
ゲームの建付けは変わらなかったのだが、
本作には俺様を挫折させる大きな仕掛けが用意されていた。
当時、「コマンド総当りで解けるAVGはつまらん」という風潮があって、
各社、アクション要素を入れてみたり、
パズルゲームの謎解きを入れてみたりして工夫をしていた。
そしてリバーヒルソフトが本作で取った手段というのは、
「何も考えずにコマンド入力し続けているとハマる(クリア不可能になる)」
という仕組みだった。
前作が「聞き込み1000回のゲーム」だったのに、
真逆のプレイをしないと解けないという巧妙な罠だ。
すでにハマっていた事に気づかなかった俺様は、
長時間プレイしてもまったく捜査が進展せず、
あとで雑誌でこの仕組みを知り心が壊れた。orz

 

 


殺意の接吻 KISS OF MURDER
(リバーヒルソフト)
1987年12月/AVG/5800円

本作はシリーズ3作目ではなく、
「マンハッタンレクイエム」の拡張シナリオという形をとっている。
グラフィックやプログラムを流用した別シナリオが遊べるというもの。
ただしプレイには前作「マンハッタンレクイエム」を所持している必要がある。
前作でトラウマを抱えた俺様は当然プレイする事は無かった。

 

 


D.C. コネクション
(リバーヒルソフト)
1989年6月/AVG/9800円

正式なシリーズ3作目。
だんだん定価が高くなっていくなぁ(^^;

さて、88でリリースされたJ.B.ハロルドシリーズはこの4本だが、
シリーズはさらに続いていた。
シリーズ4作目「ブルー・シカゴ・ブルース」
レーザーアクティブという珍しい機種で登場。
シリーズ5作目「シアトル・パープル・ヘイズ」
シリーズ6作目「サンフランシスコ・ブラック・ベル」
シリーズ7作目「孤立する死者 -BOSTON SOLITARY CORPSE-」
携帯電話アプリとして登場している。

また、シリーズはリバーヒルソフトが倒産した後も様々な機種でリメイクされ続け、
近年ではNintendoSwitchなどでも遊ぶ事が出来る。

ちなみに俺様のオススメのリメイクは、
かっこいいジャズミュージックが鳴り続けるPCエンジン版「殺人倶楽部」と、
海外で撮影した実写ムービーが挿入される
セガサターン版「ブルー・シカゴ・ブルース」である。
(PCエンジン版「殺人倶楽部」をプレイして俺様のトラウマは解消されていた)