88ゲーム回想録(18)「道化師殺人事件」

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道化師殺人事件
(シンキングラビット)
1985年3月/AVG/7800円

 

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ロンドンから南へ50マイル、
古くからの港町ブライトンに巡業中のサーカスの一座があった。
テントも張り終え、あとは開幕を待つばかりのその日の朝、
ピエロの死体がシャワーワゴンで発見された。
死因は背中から心臓に達するナイフの一突き。
シャワーの水が出しっぱなしになっていて、血はきれいに流されてしまっていた・・・。
プレイヤーはロンドン警視庁より派遣された刑事となり捜査を開始する。

 

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古き良きコマンド入力式のアドベンチャーゲーム
「テチョウ ミセル」「ト アケル」といった“単語+動詞”で行動を入力する。
英語にも対応しているらしい。(俺様は日本語で最後までプレイした)
また、よく使うものはファンクションキーにも登録されており、
以下のコマンドは一発で入力可能になっている。
F1:マルタン・ルドック
F2:メリー・マッコーラン
F3:ハワード・フィルピー
F4:マーカス・ビグリー
F5:デュイ・ゼフール
F6:ヲ ジンモンスル
F7:ヲ キカセテイタダケマスカ
F8:アリバイ ヲ キカセテイタダケマスカ
F9:ジケン ヲ セツメイスル
F10:ワゴン ヲ ミセテイタダケマスカ

 

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謎自体は(この当時特有の)不条理なものが少ないのだが、
東西南北を1つずつ移動して探索するマップは迷いやすく、
マッピングをしながら進めないと途方に暮れるだろう。
推理小説のモデルとなった田舎町を探訪しているかのような
静かな雰囲気が素晴らしい。

関係者をいつでも呼び出して尋問できるシステムは、
シンキングラビットの前作「鍵穴殺人事件」から引き継がれている。
また、コマンド入力で正解ルート以外の言葉を入力しても、
ある程度はフォローの言葉が用意されているのも
丁寧な仕事っぷりが感じられて好感触である。

このゲームが(同時期の)他のコマンド入力式アドベンチャーゲーム
決定的に違うのは、シナリオの練り込み具合である。
多くのゲームは、言葉探しの難易度を乗り越えても
ストーリーが簡素だったり、雑だったり、
苦労した思い出しか残らないものが多かったが、
本作は「苦労した甲斐があったな」と思えるものがあった。
おそらくは用意された結末の意外性がその印象を強くしており、
脚本の勝利と言えるだろう。

上記の書き方だとプレイしていない人には誤解を与えるかも知れないが、
本作で言う脚本とは、以降のAVGでの評価基準の一つとして語られる
「ストーリー展開」とは異なる。
そういう側面で言うならば本作はほとんど「ストーリー展開」が存在しない。
ひたすら探索。情報の収集。
最後に結末が用意されているぐらい。
フラグ探しの遊びからデシタル紙芝居へ移行していった時代の狭間で、
“ストーリー展開を主軸としないゲームに脚本で魅力を生ませた”貴重な一本
と言えるだろう。

ちなみにゲームをクリアすると、
登場人物を演じていた役者がプレイヤーにメッセージを残すのだが、
このときのテキストが
ゲーム本編全てのテキスト量より多かったりするw