光栄のゲームはなぜ高かった?

「光栄のゲームって高いよね」
というのが8bit時代の共通認識だった。
当時ゲームソフトは6800円~8800円が相場で、
ジャンルが違ってもそれほど変わるものでは無かった。
そんな中で光栄のソフトは
ほとんどが9800円という1ランク上の価格設定をしていた。
光栄がこの強気な価格設定を始めたのは三國志』からだった。

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(それまでの『団地妻の誘惑』などは他社製品と変わらない価格設定だった)
三國志』の値段は14800円という物凄い価格設定をしてきた。
(同年に発売された『ザナドゥ』や『ハイドライドII』は6800円だった)
企業努力で値段を下げて沢山売ろうとする商品はあっても、
値段を上げてくる商品はなかなか無い。
よっぽど作品の内容に自信があったのだろう。
(ちなみに14800円はファミリーコンピューター本体と同じ値段w

自信があったといってもシブサワコウも人の子だ。
自信の影に不安もあったに違いない。
半年後に光栄は『抄本三國志』という廉価版を8800円でリリースした。

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これは一部のコマンドが使用できなくなっている上に
シナリオ1しか選択出来ないという内容だった。
そんな体験版みたいなソフトをザナドゥ』より2000円も高く売られてもね…。

とはいえ、『三國志』は世間に受け入れられた。
これによって
「ちゃんとしたものを作れば値段が高くても売れる」
という経営指針が出来上がってしまった。
三國志』から1年後に発売された『信長の野望・全国版』は9800円。
これが基本ラインとなる。
以下は『三國志』から88最終作『蒼き狼と白き牝鹿 元朝秘史』までの定価である。

三國志』14,800円
『抄本三國志』8,800円
信長の野望・全国版』9,800円
三國志SR版』14,800円
蒼き狼と白き雌鹿』9,800円
信長の野望戦国群雄伝』9,800円
水滸伝・天命の誓い』9,800円
維新の嵐』9,800円
三國志II』14,800円
大航海時代』9,800円
ランペルール』9,800円
提督の決断』14,800円
信長の野望武将風雲録』9,800円
『伊忍道』9,800円
『ロイヤルブラッド』7,800円
『ヨーロッパ戦線』12,800円
蒼き狼と白き牝鹿 元朝秘史』9,800円

『ロイヤルブラッド』だけなぜ低価格設定なのか?といった謎は残る。
この作品はこれまでの史実を元にした国盗りSLGのシステム上で、
オリジナルの世界観を展開させようという新規ユーザー獲得を狙った
『イマジネーションゲーム』という新シリーズの第一弾であった。
そこで対象ユーザーへの普及を考慮して低価格にしてみたのではないかと推測する。

光栄と言えば悪名高い“withサウンドウェア”バージョンというのもあった。
これは通常版にカセットテープやCDの音楽メディアを同梱したバージョンで、
同梱分の値段が上乗せされていた!(だいたいプラス2400円)
「ファンアイテムなんだから、欲しくなければ通常版を買えば良いだけじゃん」
と思われるかも知れないが、手口が巧妙だった。
“withサウンドウェア”バージョンは
通常版より2週間ほど早く先行発売していたのだ。
待ちきれないユーザーはCDが欲しくなくても
こっちに手を出してしまったというわけである。
(世に言うサウンドウェア商法である)

てな具合にユーザー泣かせの価格設計をしてきた光栄だが、
「高いけど面白いから仕方無いか…」と結局サイフの紐を緩ませた事も事実で、
光栄の戦略は成功だったと言えるだろう。

今のコーエーテクモにはそういう神通力が無いのがツライ。