三國志
(光栄)
1985年12月10日/SLG/14800円
大ヒットとなった「信長の野望 全国版」。
だがそれよりも1年も前に、もう1つの傑作「三國志」は生まれている。
「三國志」は発売当初、知る人ぞ知るといった存在だった。
なんといっても「三國志」は中国の遠い昔の歴史物語であり、
誰もが知っているメジャーな物語というわけでは無かった。
ところが数年後に追い風が吹く。
まず「信長の野望 全国版」に夢中になった人々が
「どうやら光栄には『三國志』っていうSLGもあるらしいぞ」
と本作に手を出し始めた。
そして横山光輝が連載していた漫画「三国志」も完結へ向けてラストスパート。
そのドラマティックな歴史群像劇の魅力を知った人達が1巻から追っかけ始めた。
(俺様の学校でも休み時間に「三国志」を読んでいるやつ多かったよ)
さらに漫画の元になっている吉川英治の小説「三国志」もリニューアル版が刊行され、
それぞれが相乗効果を生んで三国志の世界はたちまち認知度を上げ、
メジャー化していく。
そして「三國志」は「信長の野望」との二枚看板として
光栄を引っ張っていく事になる。
余談だが、「三國志」と「信長の野望」に
「蒼き狼と白き牝鹿」を加えて光栄の“歴史三部作”と言われていたが、
発売順は「信長の野望」「蒼き狼と白き牝鹿」「三國志」の順番である。
このあとに「信長の野望 全国版」と続く。
「三國志」のように追い風があれば
「蒼き狼と白き牝鹿」もメジャーになる可能性はあったが、
システムが複雑で難易度が高すぎた事と、
横山光輝「三国志」のような相乗効果を生むメディアが無かった事で
風に乗れなかった。
5つのシナリオが用意されている。
シナリオといってもストーリー的な要素は無く、
開始する年代と選択できる英雄が変わる。
(英雄の支配国や配下武将も変わる)
選択できる英雄は以下の通り。
1.董卓打倒
2.曹操の台頭
3.新時代の幕開け
4.孔明の出廬
5.三国の時代
英雄を選択したら、
身体、知力、武力、カリスマ、運勢のパラメータを確定する。
(基本値からルーレットで微調整できる)
続いてComputerの強さ、Computerの性格(好戦的か理知的か)、
Computer同士の戦闘を見るか、を選択するとゲームが始まる。
なお、選択できる英雄の最大数まで複数人で遊ぶ事ができる。
自分のターンが来るたびに交代するのだが、
人のターンの間はファミコンで遊んだりして
明け方まで天下を競い合ったりしたもんだぜ・・。
(寝落ちした英雄は「パス」をしていいルールw)
ゲームがスタートすると、国には空白地が多くある事にお気づきだろう。
中国の広い国土は、日本のように隅々まで支配者がいるわけでは無かった。
これはそんな当時の情勢を再現しているわけだ。
劉備で始めたわけだが、最初に支配している代州(14国)では
強敵の曹操がすぐ南に支配国を広げているので、
自国を広げるのは難しそうだ。
そこで本作独特のコマンド「放浪」をしてみる。
放浪していると、劉備を慕う民が軍に加わってくる。
放浪の末に益州に拠点を築く事にした。
ここから南へ向けて勢力を伸ばしていって
蜀の国を築くぜ!
月ごとに選択できる命令コマンドは以下の通り。
1.移動、2.戦争、3.輸送、4.臨時徴収、5.人材登用、6.様子を見る、7.施し、
8.洪水対策、9.開発、10.兵士を鍛える、11.捜索、12.略奪、13.築城、14.州地図、
15.外交交渉、16.取引、17.委任・解任、18.放浪、19.何もしない、20.中断
戦争を仕掛ける場合、攻める隣国を選択したら、
出撃する武将、軍資金、兵糧を決める。
戦争画面に切り替わったら、印のついた箇所に武将ごとの部隊を配置。
最後に兵糧を配置する。
この兵糧が取られたら敗北となるので注意。
敵を全滅させるか、全ての城を占領したら勝利。
戦争中の命令コマンドは、
1.移動せよ、2.攻撃せよ、3.退却せよ、4.降参せよ、5.待機せよ、
6.状態を報告せよ、7.伝令せよ
敵の部隊と隣接したら攻撃を仕掛けるチャンス。
攻撃のコマンドは、
1.通常攻撃、2.一斉攻撃、3.突撃、4.計略、5.火計
三国志の物語ではお馴染みの火計が選択できるのは面白い。
兵力に勝る相手を火で囲んで消耗させたりしてね。
武将の兵力を0にすると、
「首を切る」「逃がす」「召し抱える」
といった選択肢になる。
無闇に首を切っていくと、
のちのち人材不足になっていくw
ところで本作が「信長と野望 全国版」と最も違う点について話そう。
それは英雄に武将を配下につける事が出来る点である。
劉備は初期に関羽、張飛、孫乾の3人がついている。
人材を増やす方法は何点かある。
在野の人材を探索する、他国を攻めて捕虜を召し抱える、
他国の人材を引き抜く・・といった感じ。
武力の強い人材が手に入れば戦争で有利になり、
知力の高い人材が手に入れば政治や計略の成功度が上がる。
90以上の知力を持った武将がいると軍師となって
行動のたびに助言をしてくれるようになる。
(軍師が良い事言うまで行動キャンセルを繰り返してたりしてw)
三国志の世界に登場する好きな武将&知将たちを
策略を使って自分の部下として引き入れる事ができる。
これが熱い!
「呂布は最強だがすぐ裏切る」とか、細かな設定もさらに心が震えた。
苦労して集めた武将を中心に戦争をする楽しさ。
そして彼らが殺されたり裏切ったときの悔しさ。
のちの時代、「ポケットモンスター」やソーシャルゲームなどの中心となる要素が、
もうこの時代で確立しているのだから、このゲームの存在がいかに奇跡的なのか。
ストーリー展開やイベント発生などほとんど無いゲームなのに、
数値と武将のデータだけで、
想像力を掻き立てて脳内に物語を構築できる。
これこそ本作が唯一無二の傑作であり、
歴史的なオーパーツと言える所以である。
さて、光栄のゲームは様々な機種へ移植されているわけだが、
その機種によって単なる移植以上のバージョンアップがされていたりする。
今回は88SR版とX68000版、
そして簡易版としてリリースされた「抄本三國志」を紹介して筆を置こうと思う。
三國志(SR版)
(光栄)
1987年4月/SLG/14800円
まず前バージョンにはBGMが無かったが、
プレイ中にBGMが流れるようになった。
また、前バージョンでは半角カタカナだったテキストが漢字になり、
全体的に見やすい画面になっている。
コマンドに「密計」が追加されており、
他国に対して「君主の悪言を流す」「住民を翻弄する」「米を焼く」
といった事が仕掛けられる。
三國志(X68000版)
(光栄)
1988年12月/SLG/14800円
システムはSR版を忠実に移植しているが、
グラフィックは全て描き直されており、
68用に作られたBGMとともに違った気分で楽しめるDXな一本。
▲劉備がおっさん臭くなってるw
抄本三國志
(光栄)
1986年5月/SLG/8800円
「三國志」の定価14800円というのは、
当時のパソコンゲームとしてもかなりの高額設定だった。
めちゃめちゃ強気な設定であったが、やはり普及に不安があったようで、
本編発売の6ヵ月後に8800円という低価格版をリリースしていた。
選択できるのはシナリオ1のみ、複数人プレイはできず、
政治コマンドの「略奪」、戦争コマンドの「突撃」「計略」が削除されている。
いわゆる廉価版だが、これ買うならちょっと頑張って本編買った方がいい。
「初心者向け」という大義名分をたてるには乱暴な改変で、
とてもじゃないけど「いきなり本編は複雑で敷居高いから初心者はコチラで」と
オススメできるものじゃない。
それよりもこのタイトルだと続編だと思って
間違えて買っちゃった人いたんじゃないかなぁ?