88ゲーム回想録(05)「シュヴァルツシルト/シュヴァルツシルトII」

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狂嵐の銀河 Schwarzschild
工画堂スタジオ
1989年12月発売
PC-8801mkIISR以降
12800円

 

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Schwarzschild II 帝國ノ背信
工画堂スタジオ
1989年12月発売
PC-8801mkIISR以降
9800円

 

それまで人気のSLGと言えば光栄の「信長の野望」に代表される歴史モノか、
システムソフトの大戦略に代表される現代戦争モノが2大メジャーだった。
そんな中で、SFという新たな境地で挑んだのがこの「シュヴァルツシルト」だった。
しかもそれは従来のSLGシステムを踏襲したものではなく、
しっかり宇宙戦争の世界観に合わせたシステム構築がなされているのが素晴らしい。
本作は「シナリオ・シミュレーション」と銘打たれており、
SLGでは希薄だったシナリオ展開による起伏が盛り込まれている。


<「狂嵐の銀河 Schwarzschild」プロローグ>
巨大な渦状を呈し、誇らしげに光り輝く大銀河「シュヴァルツシルト
幾百億の星々が幾百億の歴史を持ち、幾千億の人類を育んでくれる。
しかし、この銀河も広大な宇宙においては存在すら危ぶまれる微粒子に過ぎない。
だが、無限の宇宙に臆する事なく希望に燃え、前進を続ける人類の姿がここにある。
星暦3260年、人類は幾度もの自滅への道を辛くも回避し、
大銀河の王となるべく辺境の太陽系より深遠の宇宙へと雄飛を始めた。
そして700年の歳月を人類が情熱を持って費やした時、
銀河はほぼ彼らの望みを叶えてくれていた。

地球の名はすでに人類発祥の地という神秘の厚いベールに飾られ
いまや伝説上の存在となりつつあった。
今回の物語は、ここ銀河系外縁、ジロ星団が舞台である。
星暦3960年、ジロ星団はすでに全ての可住惑星を人類の手に委ね、
大小16の様々な国が林立していた。

<「Schwarzschild II 帝國ノ背信」プロローグ>
巨大な渦状を呈し、誇らしげに光り輝く大銀河「シュヴァルツシルト
幾百億の星々が幾百億の歴史を持ち、幾千億の人類を育んでいる。
しかし今、人類は新たな危機を迎えようとしていた。
そしてその兆しは大銀河の外縁部で顕著に現れつつあった。
銀河外縁部での動乱の兆しは各所で見られた。
大規模な宇宙地震により、壊滅的なダメージを受けたホンシャ帝国が、
周辺諸国の侵攻により滅亡し、星団全滅は戦乱の渦に巻き込まれてしまった。
そして、そのジロ星団に版図を接する辺境星系ソマリにおいても
不気味な炎がくすぶり始めた。

時は星暦3964年、今回の物語はこの星系を舞台に始まる。

 

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▲1作目のメイン画面

 

宇宙にある惑星はそれぞれ領主がいて、覇権を争っている。
他国からの侵略にも耐えられるように軍備を固めながら、国力を上げていく。
国力が上がると収入も増え、艦隊に配備される戦艦もさらに強力なものになる。
(戦艦の名前はA戦艦、B戦艦、C戦艦と、アルファベットが進むごとに強い)
例えば「信長の野望」シリーズの場合、
一度国力を安定させると自国が他国を凌駕できる強国となっていき、
難易度的にはヌルくなっていく。
が、このゲームはそうはいかない。
このゲームにはイベントが発生する年月が決まっており、
防衛に徹して納得いくまで国力を高めてから宇宙制覇…というわけにはいかない。
つまりどういう事かというと、
“このタイミングでこういう事をしなければこの難局は乗り切れない”
というシナリオが決まっているのだ。
ユーザーはそれを何とか(何度も失敗を繰り返しながら)見つけ出すのが
このゲームの本質である。
そういう意味では様々な攻略パターンを編み出せる
自由度の高いSLGと比べて難解である。
また、自軍ばかりが強ければ良いというわけではなく、
他国との同盟を利用しなければ強大な敵を倒せない…
といった外交的戦略も必要不可欠になってくるのだ。

 

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▲1作目の戦闘画面

戦闘は4つに編成された艦隊を動かして行なうターンバトルになっている。
相手の旗艦を倒せばクリアで、攻撃を加える方向によって戦果が変わるのが面白い。

 

まあとにかく難しいゲームではあるが、ルール自体はシンプルでわかりやすい。
SFという題材でありながら、
ここまでシンプルにまとめた工画堂スタジオには拍手を送りたい。
シンプルだからこそ、難易度の高ささえも楽しんで苦しめた(?)のだから。

 

本作の1作目「狂嵐の銀河 Schwarzschild」のオリジナルはPC98版で、
88版はその移植作である。
早い段階で続編である「Schwarzschild II 帝國ノ背信」も88へ移植された。
当時、パソコン雑誌で見てこのゲームに魅了された俺様は、
パソコンショップに買いに行くも、
そこには「Schwarzschild II 帝國ノ背信」しか売られていなかった。
「まあ、続編の方がより洗練されているであろう」
続編からいきなり買ってしまう俺様。
ところが、「Schwarzschild II 帝國ノ背信」は
前作に輪をかけて難しいゲームだった!
隣の隣に凶悪な国があり、女性が当地する超弱小国家が狙われる。

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助けてあげたいが序盤の国力では共倒れ必至。
半泣きで国力を上げるも間に合わずに
ついに凶悪国の牙は俺様の星へ向き滅ぼされる…。
…てぇことが何度も続き、心が短期間にボキボキ折れた。
しばらくしてこんな事を知る。
前作「狂嵐の銀河 Schwarzschild」クリア時に表示されるパスワード。
それを続編で入力して始めると、
資金と資源の援助が得られた状態でスタートできると。
なるほど、やはり1作目から順序だてて進めていくべきだったんだ。
俺様は前作をクリアしたと言っていた友人に
「全然先に進めないからパスワードを教えてくれないか?」と頼み込んだが、
いくら頼んでも教えてはくれなかった。
1作目をクリアした苦労を味わわずにその恩恵を受けるのが納得できなかったのか、
それとも1作目をクリアしたというのは見栄を張ったウソだったのか。
いずれにしても彼の意思は頑なだった。
あきらめて1作目を買えばいいじゃないかと思うかも知れないが、
9800円で買ったゲームを序盤だけであきらめ、
12800円の前作をポンと買えるほど高校生の財源は豊かでは無かった。
(1作目を中古で手に入れたのはそれからだいぶ後だ)

さて、このシュヴァルツシルトシリーズを作った工画堂スタジオという会社。
大正15年創業という老舗会社で、人生ゲームのボードデザインなどを手掛けていた。
パソコンソフト制作にも早くから参入した。
この頃に存在していたゲーム開発会社はほとんど無くなってしまったが、
工画堂スタジオは2021年現在でも現存しており、
このシュヴァルツシルトシリーズはパソコンをプラットフォームに
13作目までリリースされたロングランシリーズとなった。

なお、88では2作目までしか発売されなかったが、
コナミから発売された「天と地と」というSLGは工画堂スタジオが開発したもので、
シュヴァルツシルトの構成がベースとなっている。