魅惑のアドベンチャーブック大紹介(2)「スーパー・ブラックオニキス」

~紹介~

 

スーパーアドベンチャーゲーム
スーパー・ブラックオニキス
著者:鈴木直人/イラスト:鏡 泰裕
創元推理文庫/630円

f:id:g16:20191103005151j:plain

パソコンゲームにおける国産ダンジョン探索型RPGの元祖『ブラックオニキス』。
それをゲームブック化してまとめたのが本書だ。
これを執筆したのは日本ゲームブック界の第一人者と言われている鈴木直人氏。
同氏はこれ以前に『ドルアーガの塔』三部作を執筆しており、
シリーズとしては2作目という事になる。

 

~冒頭~

燃えるように紅い髪を持った一人の若い兵士が、砂漠を大股で歩いている。
野心と勇気を秘めた茶色の瞳、厚い胸と長い脚。
腰を覆うわずかばかりのボロ布と破れかけたサンダルという出立ちで、
あてもなくさすらう獅子のような男。
それがあなただ。
テンペストというあなたの名は、まだ誰も知らない。
それでも、いつかは『ロト』とか『ギルガメス』のように
有名な英雄になりたいという夢を抱いている。
彼らのように高貴な生まれではないが、実力では決して負けないという自負がある。
しかし、持って生まれた運の悪さだけは、どうしようもなかった。
その日大きな戦があり、友軍は全滅、
生き残ったあなただけが敵の目を逃れ、さすらう身となったのであった。
強力な敵の布陣を、たった一人でどうやって突破したのかは、
自分にもわからなかった。
ただ無我夢中で、気づいた時は一人で砂漠を歩いていた。
自分の不思議な力に、あなたはまだ気づいていないのだ。
いずれにせよ今は、神の意思かそれとも運命の定めかによって、
はるか遠くに見える街が蜃気楼でないことだけを祈りつつ歩いている。
身につけていた剣も盾も、どこかでなくしたらしく、
財産といえるのは背負い袋の中にある金貨二十枚しかない。
朧にかすむ町の上空に黒い雲が厚く垂れている。
黒い塔と高い城壁が見え、ときおり稲光が煌いている。
『ウツロ』という街の名を思い出すのには、そう時間はかからなかった。
呪われた街ウツロと、
そのどこかに隠された秘宝ブラックオニキスの話はあまりにも有名だった。
腕に覚えのある戦士たちが数多くこの秘宝を求める冒険に挑んだが、
誰一人としてオニキスを手に入れることはできなかった。
莫大な富と永遠の若さをもたらすというブラックオニキスは、
まだ誰の目に触れることもなくこの街のどこかに眠っている。
あなたは立ち止まり、雲におおわれた街をながめた。
あの雲の合間に金貨の山が見えたような気がした。
小さく舌なめずりをしたあと、再び大股でウツロ目指し歩き始めた。
富と名声を手に入れる絶好のチャンスに思えた。
富の背後に死の影が隠れていることに気づかないところが、
あなたのよいところなのだ。
西南の端に城門が見えている。
まず、どこかで一杯やるか、柔らかいベッドが先か、
それとも温かい食事にするか考えると、あなたの足は自然に速くなっていった。

 

~内容~

 f:id:g16:20191103005349j:plain

前回紹介した『ザ・スクリーマー』は、
パラグラフ番号に添って物語を読み進めるタイプだったが、
本作はもっとRPG寄りの内容になっている。
もともとアドベンチャーブックは、
1人用テーブルトークRPGという側面を持つが、
本作はまさに“TRPGを書籍として再構成したもの”になっているのだ。
まずはキャラクターシートにパラメータなどを記入しつつも
ゲームルールを読み進めていく。
このゲームルールがページにして37ページに及ぶ。
すでに敷居が高い。(^^;
また、ゲーム中に様々な工夫がなされている。
ゲームに日数制限(プレイに即してカレンダーを進める仕組み)がされていたり、
パーティで行動するシステムを導入してみたり…。
あとがきで作者が
「“ゲームブック=ソロプレイ”の公式をどこまで崩せるかやってみた」と言っている。
そんな意欲作だけに敷居の高い作品になってしまっている。
作者もあとがきで
「初心者の友人に『ゲームブック入門書』としてこの本を勧めてはいけない」
としている。
ダンジョンを探索するのがメインになっているこのゲームでは、
テキストを頼りにマッピングしていくのがセオリーだ。
『西にドアがあり、そのそばに立っている。
東には通路があり、二ブロック先で北へ折れている。
北と南はレンガ壁になっている。』
といった具合。
例えばこの状態で『東へ行く』を選択し、
その先で『西へ行く』を選択すると再び同じパラグラフ番号に戻る仕組みだ。
これにより、同じところを行き来してモンスターを倒し続けてレベルを上げる…
といったRPG的行為が可能になっている。
だが当時の俺様は、すでにPC版『ブラックオニキス』をプレイ済だった事もあり、
途中で挫折してしまった。
その行為があまりに面倒だったからだ。そして心底思った。
「この内容が全部パソコンに入ってればいいのに…」と。(^^;

イラストもなかなかの力作揃いで、
特に表紙の絵はワクワク度の高い良作だと思う。

舞台構成はPC版同様にウツロの街からダンジョンに潜り、
なんとかブラックタワーの入り口を探し出して登り切る事が目的。
ただ闇雲にダンジョンを探索していては絶対にブラックタワーには潜れない。
とある事情通にその秘密を聞きださなければならない。
その秘密とは、とある場所についたら
パラグラフ番号に指定された数字を足した番号に飛ぶというものだ。
物語の最後に金貨が貰えたり、『宝石の十字架』というアイテムが貰えたりする。
これは同じ冒険用紙を使って続編を遊べる事を意味していると思われるが、
現在のところまだリリースされてはいない。
この本ごとPCでリリースしてくれないだろうか?

 

~補足~

創元推理文庫のアドベンチャーブックを巻末のリストを頼りに列挙しておく。
読んだことのあるモノがあったら情報提供のほどよろしく頼む。

『ソーサリー1 魔法使いの丘』『ソーサリー2 城砦都市カーレ』
『ソーサリー3 七匹の大蛇』『ソーサリー4 王達の冠』
ファイティング・ファンタジー』『モンスター誕生』
『バック・トゥー・ザ・フューチャー』『ゼビウス』『巨大コンピュータの謎』
ネバーランドのリンゴ』『ドルアーガの塔 悪魔に魅せられし者』
ドルアーガの塔 魔宮の勇者たち』『ドルアーガの塔 魔界の滅亡』
『暗黒教団の陰謀』『ニフルハイムのユリ』『展覧会の絵』『ドラゴンバスター
『迷宮のドラゴン』『紅蓮の騎士』『眠れる竜ラヴァンス』『ベルゼブルの竜』
『惑星不時着』『ウルフヘッドの誕生』『ピラミッドの謎』
『ウルフヘッドの逆襲』『パンタクル』『暗黒の聖地』『エクセア』
ワルキューレの冒険 時の鍵の伝説』『夜の馬』『ティーンズ・パンタクル』
ネバーランドのカボチャ男』『カイの冒険』『パンタクル2』
『第七の魔法使い』『ギャランス・ハート』