ハイドライド
(T&ESOFT)
1984年12月/RPG/6800円
俺様が初めて「ハイドライド」をプレイしたのはPC-6001mkII版であった。
PC-6001mkII購入前のナイコン時代からマイコンBASICマガジンは購読していたから、
「ハイドライド」の存在は誌面で知っていた。
RPGもまだ数本しかプレイした経験が無く、
RPGの定義も定まっていない頃に誌上で見た「ハイドライド」は、
まさに未知の冒険そのものであった。
トップビューで広がるファンタジーの世界を自由に探索し、
謎解きやキャラクターを成長させるRPGの仕組みを
アーケードのアクションゲームのような方式で進める。
それまで体験してきたビデオゲームやパソコンゲームには存在していなかった。
ちなみに俺様が当時「ハイドライド」をプレイしていたとき、
ファミコンでトップビューのフィールドを自由に移動できるゲームは、
「バンゲリングベイ」ぐらいしか出ていなかった。
その後、「チャレンジャー」が登場するのに8ヶ月ほど時間を要したし、
「ゼルダの伝説」や「謎の村雨城」の登場は1年以上先である。
少年時代の俺様にとって「ハイドライド」のプレイ体験は、
間違いなく俺様の脳内領域を拡張したように思う。
そんな「ハイドライド」を再プレイしながら当時の思いを呼び覚ます。
なんとも意義深い事だろう。
~ストーリー~
この伝説は、今私たちが住んでいる世界とはまったく別の空間での物語です。
ここは、妖精の住む王国フェアリーランド。
王様の住んでいる宮殿を中心に広がっている、緑の美しい平和な国でした。
この宮殿には三種類の不思議な宝石が祭られており、
その宝石によって王国の平和は保たれていたのです。
人間と妖精達はこの世界でお互いに共存し助け合いながら、仲良く暮らしていました。
ところがある日、心ない人間によって宝石の一つが盗まれてしまったのです。
数が足りなくなってしまった宝石は、その輝きが鈍くなってしまい、
遂に宝石によって封印されていた、
神話伝説最強といわれる悪魔バラリスが目覚めてしまったのです。
バラリスの魔力によって残りの宝石もいずこかへと飛ばされてしまい、
平和であったフェアリーランドも崩壊してしまいました。
王国の娘、アン王女もバラリスの魔力によって三人の妖精にされて、
フェアリーランドのどこかに隠されてしまいました。
王国を崩壊させたバラリスは、国のあちこちに怪物を放ち、
人々の心を恐怖と絶望で支配したのです。
この悪行に耐えかねた一人の勇敢な若者が、王国の復興を願って立ち上がりました。
彼の名はジム。
ジムは人々の希望を一身に背負って、
たった一人で怪物のうごめく荒野へ挑戦していったのです…。
~プレイ~
ゲームがスタートしたらまずはレベルを上げよう。
テンキーで4方向に移動。
画面は切り替え方式で、画面の端に行くと隣のフィールドへ移動する。
モンスターには体当たりでダメージを与える。
モンスターの進行方向に正面からぶつかると反撃を受けるので、
なるべく進行方向とは違う向きから当たるのが良い。
スペースキーを押すと体勢が「ATTACK」と「DEFEND」に切り替わる。
攻撃するときは「ATTACK」にしないとほとんどダメージを与えられない。
ダメージは草原でじっとしていると回復する。
その間もモンスターに触れるとダメージを負うので、
念のため「DEFEND」に切り替えておこう。
スタート直後のフィールドにはスライムとコボルトがいる。
よく観察するとスライムは草原にいるが、コボルトは森からは出ない。
ハイドライドはモンスターによって行動場所が決まっており、
そこからは出てこないという特徴がある。
まずはスライムをひたすら倒していこう。
EXPゲージを満タンまで貯めると、レベルが上がり、
LIFE(体力)とSTR(強さ)が1メモリ上がった。
ハイドライドにはレベル表示はなく、
EXPが貯まるごとにこのメモリが1ずつ上がるのだが、
このレポートでは便宜上「レベル」と呼ぶ。
レベルを3まで上げたら、
スライムやコボルトを倒してもEXPが貯まらなくなる。
このゲームではレベルごとに経験値になるモンスターが変化する。
それではフィールドを探索しつつ、次の標的を探してみよう。
探索しているうちに宝箱発見。
宝箱はその上に立ってスペースキーで開けられる。
ここでは「十字架」を手に入れた。
ゾンビのウヨウヨいる墓場でも宝箱を見つけたが、
こちらは開かないらしい。
どこかでカギが必要なのか?
このダンジョンにいるローパーで経験値が稼げるみたい。
ただしレベル3だと正面衝突であっという間に体力が削り取られるので、
ダンジョンの奥へは入らず、
入り口前で待ち構えていて、ローパーが通過するときに横から狩ると良い。
ローパーでレベル5まで上げよう。
ダンジョンの中を探索してみると、
何やら宝箱を守る者がいる・・。
こいつを倒して宝箱を開けると「壺」を入手した。
するとダンジョンの一部が通過できるようになっている。
その先の穴に入ってみたら真っ暗。
また後で来た方が良さそうだ。
ダンジョンを離れ再びフィールド探索へ。
どうやら墓場のゾンビはまだ経験値が貯まるようなのでここでレベルアップ。
ゾンビは動きが機敏なので反撃を受けがちで面倒臭い。
ところですでに倒す必要の無くなったスライムなどの弱いモンスター。
無闇に倒さない方がいい。
それらを倒していると、登場モンスターが強いやつに切り替わってしまう。
例えばスライムを倒し続けていると草原にローパーが出るようになる。
このゲームはレベルアップしても防御力は変わらないので、
相手が弱くても体力は初期と同じように削られるのだ。
レベル7に上げたらゾンビでも経験値が入らなくなった。
旅を続けようか。
この城の中に入ってみる。
城中にはコウモリに守られたヴァンパイアがいた!
ヴァンパイアを倒すと「ランプ」を入手。
「ランプ」があればローパーのダンジョン地下も明るくなる。
ここには宝箱がたくさんあるが、ほとんどカラ。
その中の一つから「カギ」を入手。
墓場にあった宝箱が開くようになっている。
ここで「黄色い宝石」をゲット。
この穴に入ってみる。
穴の中のダンジョンには宝箱が見える!
ウィプスを避けながら宝箱のもとへ。
宝箱の中は剣だった!
STRが1メモリあがった。
レディアーマーとゴールドアーマーがウロウロする穴へ入ってみる。
レディアーマーを倒していると「盾」を入手。
そしてしばらくレディアーマーとゴールドアーマーを継続して倒していると、
ダンジョン内に宝箱が出現。
この宝箱が困ったもので、出現を確認してその場所へ行ったら消えてたりする。
再びアーマー達を倒して戻ってきたらまた出現してる。
中から「青い宝石」をゲット。
さて、このあたりで当時の俺様を大いに悩ませたハイドライド最大の謎。
それはフィールドのどこかに隠された3匹のフェアリーを見つけ出すこと。
まず一匹目。
「青い宝石」を取ったダンジョンの2つ目の出口を抜けると砂漠に出る。
砂漠を東へ進むと動き回る木がたくさんある場所に出る。
この木は攻撃すると反撃してきて大ダメージを受けるのだが、
このうちの一つにフェアリーが隠されているので、
死なないようにしながら小突かなければならない。
二匹目はまずここから水路の中へ。
水路にはオクトパスや巨大ウナギがいるから注意。
ここから陸へ。
ここには魔法を放つウィザードが登場する。
このウィザードの発射する魔法を5回受けてから、
ウィザードを倒さなければならない。
この謎に気づく気づかない以前にウィザードはすぐ画面外に逃げちゃうし、
答え知ってても達成は難しい。(-_-;
最後の三匹目は墓場の横の森。
この森の木は小突くと蜂が襲ってきてヒドイ目に合うのだが、
いずれかの木にフェアリーが隠されている。
三匹目を見つけた瞬間にバラリス城の前までワープする。
城の前にはドラゴン。
ドラゴンは反撃が強すぎなので「DEFEND」体勢で倒すべし。
すると水路の中に宝箱が出現。
ここで「赤い宝石」が手に入る。
バラリスの城に入る前に水路に出現しているもう一つの宝箱も取っておこう。
こちらに入っているのは「復活のくすり」。
死んでも一度だけゲームオーバーにならずに復活する。
ハイドライドで実用的なアイテムが手に入るのは珍しいw
バラリスの城はこの向きでスペースキーを押さないと入れない。
ここで詰まった人も多いと思う。
謎というより配慮ミスに近い。
城に入ってすぐのところにいるブラックアーマーは、
久しぶりに経験値が貯まる相手。
最終決戦の前にレベルを9(MAX)まで上げておこう。
いよいよバラリスとの対決だが、
そのままバラリスを攻撃してもダメージは与えられない。
バラリスのいる部屋の下へと移動すると、3つの墓標が立っている。
中央で囲いに守られた墓標を破壊しよう。
するとバラリスに攻撃が当たるようになる。
バラリスは「DEFEND」体勢で攻撃しよう。
「ATTACK」体勢だと瞬殺される。
ところがバラリスが全然倒せない。(-_-;
ヒット&アウェイと言ったって、
バラリスにどのラインで攻撃したとて3倍返しの反撃を受ける。
「復活のくすり」で一度は全回復するが、
それでもバラリスの体力が尽きる前にジムの体力が尽きる。
経験値はもう貯まらないし、アイテムも全部揃ってると思うしなぁ・・。
1時間ほど色々と戦ったが全然結果が変わらないので、
ネット動画でバラリスとの戦いを確認してみる。
MSX版と98版の動画を見たが、普通に体当たりし続けて勝ってる・・。
えー。
88版だけキツめにバランス取られてるってこと?
2時間ほど悪戦苦闘したとき、とある発見をした。
あれ?石畳の上でもちょっとずつ回復する!?
草原とは程遠いゆっくりなスピードだが、
どうやら動かないでいると回復するようなのだ!
そこで体力ギリギリまでバラリスに攻撃。
そして下画面へ逃げてこの位置で休憩。
ここならたまにしか敵に襲われない。
体力全回復したら再びバラリスへ。
やった!倒せた!
「ハイドライド」のオリジナル版は本作8801版である。
それから1ヶ月後にX1版が登場。
ビープ音1音のみで鳴っていた88版のBGMから、
PSGによるちゃんとしたBGMに進化されており、
さらに最も大きな違いとしては、
フィールドが画面切り替えではなく、スクロール方式となっている。
(以降もスクロール式を実現したのはX1版のみ)
X1版の2ヶ月後には俺様のプレイしたPC-6001mkII版とMSX版が登場。
そこから1985年4月にFM-7版、1985年7月にMSX2版、
1985年9月にPC98版、1985年12月にMZ版、
1986年3月にファミコン版が登場している。
(1987年3月にはソフトベンダーTAKERUからX1turbo専用版が出ていた模様)
雑誌のランキングでは長期間上位に君臨し続け、
パソコン向けだけで100万本近いセールスを記録した。
まだまだ高額だったパソコンの普及台数を考えたら、
100万本というのがいかに驚異的数字がわかるだろう。
「ハイドライド」を生み出したのは言わずと知れたスタープログラマー内藤時浩さん。
当時内藤さんがゲームセンターでプレイしていた「ドルアーガの塔」に着想を受け、
(コマンド入力など)面倒に思えた既存のRPGの仕組みを
アクションゲームの感覚で遊べるように構想し、
3ヶ月あまりで完成させたという。
なるほど、本作はかなり「ドルアーガの塔」に類似している。
「ドルアーガの塔」の剣を出し入れする仕様は、
そのまま「ATTACK」と「DEFEND」の切り替えとして模倣されているし、
理不尽とも思える謎解き、それによって集まるアイテムが画面下部に並ぶ画面構成。
「魔法使いの魔法をあえて受けなければならないフラグ」などそのまんまだ。
もし「ドルアーガの塔」が「オープンワールドの続編を作ろう」としていたら、
「ハイドライド」のようなものが仕上がっていたのではないかと思う。
ちなみにパラメータを数字ではなくメーターにしたのは
「ザ・ブラックオニキス」の影響を受けているらしい。
「ドルアーガの塔」という着想元があったとはいえ、
当時の時代性の中で、ここまで遊びやすい形にRPGを再構築した事は革新的だ。
アクションRPGという名称すらまだ存在せず、
RPGを動的に遊ぶ構成である事から
「アクティブ・ロールプレイングゲーム」と呼称していた。
本作が無ければ「イース」や「ゼルダの伝説」は
違った形のゲームになっていたかも知れないし、
登場が遅れていた可能性だってある。
このブレイクスルー的な作品にリアルタイムで出会えた事に
感謝と喜びを禁じ得ないぜ。
~MEMO~
「ハイドライド」のネーミングの由来は星座から。
星座表を見ていて「ハイドラ」と「ライド」を発見。
それをかけ合わせたというw