魅惑のアドベンチャーブック大紹介(1)「ザ・スクリーマー」

~前置き~

 アドベンチャーブックとは、
簡単に言うとプレイヤーの意思で展開を選択できるアナログゲームの一種である。
主には小説のように文章を読み進めるものが多い。
1シーンごとにパラグラフ番号がふられており、
シーンの最後に
[○○するなら何番へ行け]
といった具合に選択肢とともに番号が指定されている。
読者はその番号までページを飛ばして読み進めるという構造である。
また、もともとテーブルトークRPGの入門書的な位置付けにあった事から、
RPGの用法を取り入れているものも多い。
キャラクターシートを作成し、
敵との戦いにサイコロの目やダメージ計算式を使うのである。
買い物なども本文の中でする。
アドベンチャーブックが流行した頃、
同じ時期にパソコンゲームファミリーコンピューターが登場していた。
だがそれらのゲームは高価である。
そんな高価なゲーム(特にパソコンのAVG)の雰囲気を
少しでも味わえるのがアドベンチャーブックだった。
それがアドベンチャーブックが流行した要因の一つと言えるだろう。
だが現在において、書店でアドベンチャーブックの新書はほとんど見られなくなった。
遊びの手法に限界があったことや、
ゲーム機の普及が原因であったのではとも言われている。
しかしながら、その特異な存在を忘れ去ってしまうのは少々勿体無い。
そこで、俺様の書棚に少しだけ残っているアドベンチャーブックを紹介し、
少しでも記憶の補完になればと思う。

 

~紹介~

アドベンチャーノベルス
ザ・スクリーマー
著者:山本雅之/監修:田中潤司
JICC出版局/680円

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その昔、マジカルズゥという会社からパソコン向けに発売された
『ザ・スクリーマー』というRPGがあった。
その世界観を原作にアドベンチャーブックという形で出版したのが本書である。
『ザ・スクリーマー』と言えば、
文明荒廃後の世紀末を扱ったサイバーパンク系の世界観が超クールなゲームだった。
BIASというタワーには、
狂ったコンピューターが造り出したモンスターが巣食っており、
それらを退治する依頼を受けてBIASに挑む者達をスクリーマーという。
このスクリーマー達のデザインがまたカッコよくてね。
そんな『ザ・スクリーマー』だが、
“戦闘のクオリティが低い”という致命的欠点があった。
なのでゲームとしての印象は悪く、
せっかくの魅力的な世界観が勿体無いナァという思いが強かった。
そんな世界観を使った二次創作物であり、
さらにゲームでは掘り下げられていない部分を物語で補完出来るという点で、
このアドベンチャーブックは存在意義の高いものであったと思う。
それにしてもなぜ数あるPCゲームの中から
マイナーな部類の『ザ・スクリーマー』が選ばれたのかは謎だ。

※本作を題材にしたアドベンチャーブックは他社からもう一冊出ている

 

 

~冒頭~

一九九X年、三度目の大戦が終わった。
東南アジアの某国の前線基地で終戦を迎えた俺は、その場で軍隊から放り出された。
七年ぶりに見る東京は、かつての面影などかけらもなかった。
焦土と化した街に、人々はバラックを建て、
一日でも早く悪夢を忘れようと、復興に努めていた。
そんな中で、俺は目的もなく日々を送っていた。
食糧配給所に向かって歩いていた俺の脇に一台の車が停まった。
闇市成金の間で人気のインセプターという化け物のような車だ。
「よう、久しぶりだな」
聞き覚えのある声が、車の中から響いた。
アフガン戦線で一緒だった事があるライマーが、
ウィンドウから顔を出し、ニヤニヤ笑いかけていた。
「どうしたんだ?やけにしょぼくれてるじゃねえか。まあ、乗れよ」
俺は、奴の言うままに車に乗り込んだ。

 

~内容~

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まず最初に簡単なキャラクターメイキングを行なう。
キャラクターの能力値をサイコロで決定するだけだ。
それらは“しおり”兼キャラクターシートに記入していく事になる。
スクリーマーになる事を依頼された主人公が、
途中であったワケアリ女のセイヤとともにBIASに挑む。
BIASに入るまでは他のスクリーマーとの出会いや、
巻き込まれ型の事件に遭遇したりする。
BIASに入ってからはちょっとした迷宮探索を行なうが、
きっちりマッピングしなければならない代物ではない。
戦闘はサイコロで決められた計算式を使って行なう。
RPGよりも物語進行中心なので、小説感覚で読み進める事が出来る。
ほぼ詰まるところは無いが、一箇所だけ暗号を解くシーンがある。
暗号の答えが次に進むパラグラフ番号になっているのだ。
結末は二通りあるが、どちらも報われないENDINGだ。
これはこれで『ザ・スクリーマー』らしくはある。
挿絵はいまいち描き込みが足りないように思える。
普通のアドベンチャーブックならこれでいいかも知れないが、
もともと世界観やキャラクターのカッコ良さが魅力の原作なのだから、
拘って欲しい点だった。

 

~補足~

JICC出版局は、
他にもパソコンゲームを中心に多くの作品を同シリーズで残している。
ここに知り得る限りのタイトルを残しておく。

【PCゲーム原作】
ウルティマII』『ウルティマIII』『ウルティマIV』『ゾークI』『ゾークII』
『ゾークIII』『ロマンシア』『帝王の涙』『夢幻の心臓II』『アステカ』

【映画原作】
『エイリアン2』『ゴーストハンターズ』

【漫画原作】
手天童子1』『手天童子2』『赤塚不二夫劇場』

【オリジナル?】
『13人目の名探偵』『エンチャンター』『妖法記』『ソーサラー』『ウィットネス』
『スペルブレイカー』『サスペクト』『デッドライン』『イーグルジャンクション』
『魔界大突破ゲームバスター』