88ゲーム回想録(06)「ソーサリアン」

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ソーサリアン
日本ファルコム
1987年12月20日発売
PC-8801mkIISR以降
9800円

 

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日本ファルコムの「ドラゴンスレイヤーシリーズ」第5作目。
この「ドラゴンスレイヤーシリーズ」というのは変わったシリーズで、
同じシリーズであってもゲームシステムや世界観にほとんど共通点は無い。
当時、日本ファルコムのエースプログラマーだった
木屋善夫さんが中心となった開発タイトルを
ドラゴンスレイヤーシリーズ」と呼んでいたらしい。

 

本作「ソーサリアン」は既存のRPGとはまったく違った異質なゲームだった。
まずプレイヤーは冒険に出るパーティを編成するため、
最大4人のキャラクターをエディットする。
キャラクターは名前と種族と性別を決める。
種族は戦士、魔法使い、ドワーフ、エルフの4種類で、
これらそれぞれ男女が存在する。
さらに職業を60種類の中から選択する。
冒険に出ていない間はこれらの職業によってパラメータ変化の影響を受ける。
ここで作ったキャラクターにパーティを組ませると冒険に出る事が出来る。
冒険はそれぞれ独立したシナリオであり、
派遣されたソーサリアンがシナリオに設定された事件を解決するという展開で、
独自のモンスターやボスキャラクターが用意されている。
この構成は魔王討伐などの一貫した目的を持ったこれまでのRPGとは違い、
それはまるでテーブルトークRPGのような建付けだった。

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用意されたシナリオは以下の15本。

 

消えた王様の杖

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失われたタリスマン

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ルシフェルの水門

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呪われたオアシス

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盗賊たちの塔

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暗き沼の魔法使い

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ロマンシア

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紅玉の謎

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暗黒の魔道士

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呪われたクィーンマリー号

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天の神々たち

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氷の洞窟

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メデューサの首

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囚われた魔法使い

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不老長寿の水

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全てのシナリオに好きなタイミングで挑む事が出来るが、
それぞれ難易度が異なり、レベルに合わせてシナリオを選ぶのがセオリー。
シナリオの中には途中ゲストキャラが仲間に入るので
3人パーティでなければならないものや、
規定の極業についているキャラクターがいないとならないものがある。

これらのシナリオを全てクリアすると、
「ドラゴンと戦う」というシナリオが出現し、
ドラゴン系のボスモンスターと連続で戦う。
これをクリアするとエンディングという事になる。

 

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冒険に出るとサイドビューの任意スクロール。
移動とジャンプ、攻撃ボタンと魔法ボタンというシンプルな構成。
先頭のキャラクターを操作し、
残りはグラディウスのオプションのように先頭の動きをなぞる。
(いわゆる金魚のフン方式w)
攻撃ボタンを押すたびに全員が武器を振る。
魔法ボタンは装備品に予め付与させたものが出る仕組み。
体力が0になったキャラクターは死んでしまう。
全滅すると冒険失敗。
体力は静止していると自然回復するが、
回復魔法で素早く行う手もある。

 

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クリア条件を達成したらスタート地点へ戻ると戦利品や経験値が手に入る。
戦利品やお金が手に入ったら、町で装備品を買ったり、
装備品に魔法を付与してもらったりしてパーティを強化していく。

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これまでのRPGはどちらかというと
キャラクターの成長を楽しむタイプが多かったが、
ソーサリアン」はシナリオ展開やパズル的な仕組みを解く事がメインのゲームだ。
それにしては育成システムが難解である。
例えば星を掛け合わせて生成する魔法の付与。
この仕組みを理解するには試行錯誤が必要で、ゲーム内時間も経過してしまう。
冒険に出ている間も時間が1年経過。
(15本のシナリオをストレートにクリアしたとしても15年経過する(^^;)
そう、このゲームはキャラクターが年を取るのだ。
年齢ごとに青年、中年、老人とグラフィックも変化する。
それはいいのだが、やがて寿命で死んでしまう。
死んだら新たなキャラクターでレベル1からやり直し。
これはとてつもなくシンドイ。
やがてこの問題を解決する裏ワザが公開された。
とある手の込んだ方法を使うとキャラクターが不老不死になるのだ。
あの頃、ソーサリアンを熱心にプレイしていたユーザーは、
ほぼ全員、キャラを不老不死にしたと思う(^^;
だがこれによって何が起こったか?
年を取らないという事は、無制限にキャラクターを強く出来るという事だ。
しかもこのゲームの場合、冒険に出なくてもキャラが強くなる。
パラメータが減らない職業を選択したら
「じかんをすすめる。」というコマンドを連打すればいい。
パラメータが十分に増えたら、
あとは武器に強い魔法を付与させれば最強パーティの出来上がり。
もうお気づきだろう。
これをしてしまうと、
冒険中は移動しながら剣を振っているだけでモンスターは次々と消滅。
戦闘と育成の楽しさは死ぬ。
こうなるとソーサリアン
ただのアクション探索型アドベンチャーゲームと化す。

 

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そうであっても楽しいのはさすが天下の日本ファルコム
シナリオの質も良かったが、何より上質のグラフィックと、
シナリオごとに用意された素晴らしいBGMが冒険を盛り上げた。
ただこの冒険に問題が無かったかというとそうではない。
ソーサリアンのシナリオは全体的に難解である。
どう難解なのかというと、複数のフラグが絡み合い、
ほぼノーヒントで迷いやすいマップをさまよってフラグを発見しなければならない。
行き詰まってマップ中を何時間もグルグルまわる事なんて日常的だ。
そして冒険に出ている間はゲームが中断できない。
何時間プレイしようと、クリアできなければ諦めて町に戻らなければならない。
(町に戻ったら最初からやり直し)
明日学校があるのに、朝までソーサリアンの電源を落とす事が出来なかった・・
なんて経験は多くの人がした事だろう。
3ヶ月後に移植されたPC98版にはセーブ機能が追加された。
追加した理由は「98ユーザーは忙しいから」(^^;
なお、そのさらに2ヶ月後に移植されたX1turbo版にはセーブ機能は無い・・。


さて、ソーサリアン最大の特徴について話そう。
ソーサリアンはシステムとシナリオがディスクで分かれている。
1枚のディスクにシナリオが5本収録されており、
遊びたいディスクに入れ替えてシナリオを選ぶ。
そしてこのシナリオは、
「追加シナリオ」として別売りでリリースされていく事になる。
育てたキャラクターを使って、新作シナリオがプレイ出来る。
この構造は過去にも「ザ・ブラックオニキス」などで試みられたが、
ソーサリアン初めてその試みが軌道に乗ったタイトルと言えるだろう。
それでは時系列に沿ってそれらをご紹介していこう。

 

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ソーサリアン 追加シナリオVol.1
日本ファルコム
1988年7月29日発売
3800円

4枚目のシナリオディスクといった感じで以下5本のシナリオが収録されていた。

魔性の島
いけにえの神殿
悪魔に魅いられた花
ああ、ジョセフィーヌは今何処
アマゾンの剣

追加シナリオという建付け上、値段設定も抑えめ。

 

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ソーサリアン ユーティリティ Vol.1
日本ファルコム
1988年7月29日発売
3800円

「追加シナリオVol.1」と同時発売。
メニュー画面の「ユーティリティ」を選択してこのディスクに入れ替えると起動する。
バージョンアップ機能のようなものと、
ソーサリアンを使ったお遊びコンテンツが利用できる。
本作を購入して出来るようになったのは以下の通り。

・道具の売買ができ、実質、パーティ間の道具の交換が可能になる。
・星を掛け合わせる事無く、一瞬で装備に好きな魔法を付与できるようになる。
・キャラの名前を変更できるようになる。ひらがなやカタカナも使える。
・クリアしていなくても「ドラゴンと戦う」モードが遊べる。
ソーサリアンのキャラクターが参加できる双六で遊べる。
・ユーザーディスクのバックアップやセーブデータ間のキャラ入れ替えができる。
・BGMモードが聴ける。
ソーサリアンクイズが遊べる。
・ユーザーからのお便りが読める。

 

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追加シナリオVol.2 戦国ソーサリアン
日本ファルコム
1988年10月21日発売
3800円

舞台は日本の戦国時代。
西洋ファンタジーのキャラクターが和風世界を訪れるギャップが大好きだった。
5本のシナリオを順番にクリアしていく連続性のあるものになっており、
これまでミニマム感の強かったソーサリアンのシナリオだが、
遊び応えのある一本のゲームとしてまとまっていたのが良かった。

武田信玄の章
織田信長の章
豊臣秀吉の章
真田幸村の章
徳川家康の章

 

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追加シナリオVol.3 ピラミッドソーサリアン
日本ファルコム
1988年12月23日発売
3800円

前作から2ヶ月後という短いペースで追加シナリオ第3弾が登場。
戦国ソーサリアン同様に、5つのシナリオを連続で行う形となっている。
真横から輪切りしたピラミッド内を探索するのが見せ場。

血ぬられた王家の秘宝
魔の下僕ガッシュの陰謀
心を失った姫君
嘆きの神殿
魔王ギルバレスの迷宮

 


ソーサリアンのシナリオは、日本ファルコム以外からもリリースされた。
これはとても画期的な事だった。
その第一弾となったのが、
1989年7月21日に発売された「宇宙からの訪問者」
開発したのはアモルフォスという会社で、
販売はブラザー工業ソフトベンダーTAKERUでのみ行った。
収録シナリオは「愛と哀しみのバンパイヤ」「海は広いな」
「食虫植物の森」「未知なるものへ」の4本。
さらに「魔法のアイテム屋WIZ」という
特殊な魔法アイテムを売ってくれる店が利用できる。
同時期にパソコン雑誌「コンプティーク」誌上で
ソーサリアンシナリオコンテストが開催された。
これは選出された優秀作品を
実際にソーサリアンのシナリオにするというプロジェクトだった。
ブラザー工業が販売し、アモルフォスが開発するという座組で、
1989年12月8日に「セレクテッド・ソーサリアン1」が発売された。
これは2本のシナリオとディスクマガジン形式のファンディスクで構成され、
1990年7月26日までに計5タイトルが発売された。
いずれもソフトベンダーTAKERU専売である。
収録シナリオは以下の通り。

セレクテッド・ソーサリアン
「美しき花嫁」「銀の灯が消えた街」

セレクテッド・ソーサリアン
パンドラの箱」「灼熱のワナ」

セレクテッド・ソーサリアン
「呪われた遺跡」「時の神殿」

セレクテッド・ソーサリアン
「闇に消えた女神」「妖夢幻伝説」

セレクテッド・ソーサリアン
「封印」「それゆけ! ドトーのトライアスロン


上記、セレクテッド・ソーサリアンと同時期に
ギルガメッシュソーサリアンという追加シナリオも登場。
こちらは戦国ソーサリアン形式で連続性のあるシナリオを順番にクリアしていく。
シナリオは「双頭の魔犬」「二槽のナルキッソス」「白夜に消えた村人」
「復讐の黒き勇者」「呪われた国ペンタウァの悲劇」の5本。
開発したのはクエイザーソフト。


残念ながら、日本ファルコム以外から登場した追加シナリオは、
特にグラフィック面での技術不足が露呈しており、
逆に言えば日本ファルコムの技術が凄かったという事なのだが、
ソーサリアンの魅力を完全継承とまではいかなかった。

 

ちなみに「ソーサリアン」は家庭用ゲーム機にも移植されているが、
パソコンゲーム版ほどのインパクトは残せていない。
そんな中で、収録10タイトルが全てオリジナルという意欲作だったメガドライブ版は、
いつか「やっぱりセガが好き」でご紹介したい良作である。