ヴォルガード
デービーソフト
1984年7月発売
PC-8801以降対応
テープ版:4500円
FD版:6800円
“賽の河原の石積み”というのをご存知か?
親不孝をして死んだ子供が、
その罰として川原の石を一つずつ積み上げて塔を作らされるという話。
上手く積み上げても、
地獄の鬼に見つかると蹴り壊されて一から積み上げなければならないという…。
このゲーム。そんな“賽の河原の石積み”のごとし。
俺様がこのゲームを買ったのはPC6001版であった。
当時、友人からPC6001mkIIを購入した俺様。
そこで最も楽しみにしていたのが「タイニーゼビウス」であった。
その頃、ゼビウスはファミコンにすら登場しておらず、
家でゼビウスを遊べるという特権はPC-6001最大のアドバンテージだった。
だが友人は言った。
「タイニーゼビウスは壊れたみたい」
ゲームが壊れるってどんな状況だよ…。と今考えたら思うのだが、
それはさておきゼビウスが出来ないのならば
何か他にシューティングは無いものか?という事になる。
そこで購入したのがこの「ヴォルガード」。
パッケージ裏には「3機合体」の文字が躍る。
そう、このゲームは3機の戦闘機が合体してロボットになるというもの。
“合体”。それは男子のロマン。
俺様の心も躍った。
そしてプレイ。
横スクロールでゲームが進む。
テンキーで移動。Xキーで前方ショット、Zキーで地上ミサイル。
敵の動きが素早く、出現位置や動きを暗記しないとすぐ死ぬ。
反射神経の通じないゲームだ。
だがおかしい。なかなか合体しない。
合体しないどころか、2号機も出現しない…。
それもそのはずだった。
このゲームではエネルギーバーをタメる事で増援や合体を行なう。
そのエネルギーというのは時間で溜まっていくが、
同時にショットを使うと消費されてしまうのである!
敵を倒しても溜まるのだが、敵の動きが速すぎるため狙い撃ちは難しく、
溜まる量より消費量の方が多くなってしまう。
どういう事かというと、
“弾を撃たずに進めないと合体できないゲーム”になっていたのである!
撃ちまくって敵を撃破するというシューティングの爽快な部分を削ぎ落とし、
最低限撃破が必要な敵だけを、最低限の弾数で確実に当てていく。
そんなゲームだった。
それはストレス地獄だった。
ちょっとずつ溜まっていくエネルギー。
高速で飛んでくる敵の弾に当たってまた最初から溜め直し…。
やっと2号機が合流。
でも瞬時に1号機が敵と衝突、また最初から溜め直し…。
再び2号機と合流。今度は避ける事に成功!
と思ったら今度は2号機に弾が当たってまた溜め直し…。
“賽の河原の石積み”と最初に言ったのはそういう事だ。
「なんだこのつまらないシューティングは…」呆然とする俺様。
だがあきらめるわけにいかなかった。
次のゲームを買う金なんて無いのだ!
泣きながら敵の出現パターンを覚えていく俺様。
そしてその瞬間はやってきた!
3号機までが合流。
そしてしばらく進むとステージ1のボスである巨大戦艦登場!
しばらく攻撃をかわしていると
エネルギーバーがMAXまで溜まった!
すると、かっこいいアニメーションでロボットに変形したのだ!!
鳥肌が立った。
しかもビジュアルだけでなく、今まで蚊トンボのごとき存在だった弱小戦闘機が、
ロボットに変形するとメチャメチャ強くなった!!
体力制になって敵からの弾が当たってもなかなか死なないし、
こっちの弾は数倍の威力に!!!
いままで溜まったストレスが解放されるこの瞬間。
このために今まで俺様は耐えて来たのかーーっ!!!!
そうしてそのまま巨大戦艦を轟沈させ次のステージへ向かう俺様。
なるほどな。この緩急がこのゲームの魅力だったのだ。
シューティングの新しい形と言っても過言ではないかもしれない。
本作はまずFM-7版がリリースされ、その後に様々なパソコンに移植されていた。
俺様が最初に購入したのはPC-60版であるが、
今回この記事をまとめるのには88版で再プレイした。
余談だがMZ-1500版の移植を担当したのは「デーモンクリスタル」の迎霧狼慢さん。
依頼を受けたときには既にその月末に発売日が決まっていたらしく、
わずか一週間で完成させたという伝説がある。
なお、本作は家庭用ゲーム機への移植は無く、
ファミコンに登場した「高機動戦闘メカ ヴォルガードII」は、
本作を元にした続編という建付け。
ヴォルガードIIは攻撃が激しく、射撃をせずにステージを進ませる事は難しい。
いま本作の権利をどこが持っているのか知らないが、
願わくばまた合体が楽しめる続編やリメイクが出たら嬉しいね。
SUPERVISOR
A.OBATA
PRODUCER
O.OIKAWA
DIRECTOR
F.MATSUI