『スペランカー』に呪われし者

『本当に面白いゲーム』は“呪いのアイテム”のようなものだ。
飽きない、疲れない、やめない。
体を酷使し、全ての予定を狂わせる。
そして一生の何分の一かを捧げてしまう恐ろしい『呪い』だ。
俺様は既に呪いにかかってしまっている。
スペランカー』という呪いに…。

 

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メーカー:アイレム
媒体:ROM/1985年12月7日発売/4900円
原作:Broderbund社(TIM MARTIN & MICRO GRAPHIC IMAGE)
ジャンル:サイドビュー型アクションゲーム
機種:ファミリーコンピューター

 

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制作者:
プロデューサーはアーケード版『ジッピーレース』『ムーンパトロール
スパルタンX』『ロードランナー』などを手掛けたスコット津村氏

Tim Martin
オリジナルアイデアを考案。ゲームロジックを担当。

Robert Barber
グラフィックデザイン、レベルエディター(舞台となる洞窟のデザイン)を担当。

Cash Foley
グラフィックエンジンの開発、ゲームレベルエディター(難易度の調整)を担当。

 

MEMO:
スペランカー』の難易度の高さは意図されたもの。
当時の日本のゲーマーの志向に合わせてチャレンジブルなゲームとした。

カートリッジのLEDは、
スパルタンX』のファミコン版を任天堂が作る見返りとして許可が下りた。

 


-解説-

 

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スペランカー』は、全方向移動(基本的には下へと降りていく)型で
サイドビュー視点のアクションゲームである。
与えられた状況に合わせて行動し、無駄のないルートを発見していくのが楽しい。
それは、『スペランカー』の行動パターンの多さと、
ギミックとの相乗効果の成せるわざだろう。
デキの悪いアクションゲームでよく見受けられるのが、
“その場その場でプレイヤーのミスを誘うためだけのトラップの繰り返し”という設計。
しかしこの『スペランカー』では、それぞれのギミックがそれぞれ意味を持ち、
そのときにプレイヤーがどのような行動を取れば先に進めるか
という事を語りかけてくる。
ここではそんな『スペランカー』の魅力全てをみなさんに伝えたいと思う。

1.スペランカー(主人公)の行動力
スペランカーが出来る事は大きくわけて4つ。
「爆弾を仕掛けること」
「フラッシュを打ち上げること」
「銃を撃つこと」
「乗り物を動かすこと」
当時のジャンプアクションゲームにしては行動が多彩だ。
それらの行動を適切に行う事ができるかどうかが攻略のカギである。
「爆弾」と「大岩」、「フラッシュ」と「コウモリ」、
「扉」と「カギ」というように、
それぞれの行動には対になる存在がある。
そしてそれらはステージ内で確保した数だけ使用する事が許されているため、
より合理的なプレイを心がけると、
おのずとプレイヤーの攻略ルートは限られてくる。
そのルートを探し出す事がまず第一の“魅力”だろう。

2.緊張感の持続
分析の項で詳しく書くが、
このゲームは他のアクションゲームと比べて操作がシビアだ。
そのため、一瞬の気の緩みでミスが続出する。
プレイ中に緊張感を持続する事が義務づけられるため、プレイも白熱するのだ。
これで50面、100面といったステージがあると
途中で投げ出してしまうかもしれない。
この(コンティニュー機能なしで)全4面という構成は、そういう点では絶妙である。
2周目以降ももちろん存在するが、あとは自分との闘いである。

3.この時代にしてこの懐の深さ
懐の深さというのは、ゲームにとって大事な要素でもある。
どんなによく出来たゲームでも、底が浅ければ飽きも早いからだ。
この『スペランカー』では、隠された秘密が意図的に仕掛けられている。
例えば、とあるポイントでジャンプすると出現する隠しアイテム、
爆弾で壁を破壊すると出現する宝石などの要素がすでに存在する。
さらに、このゲームの2周目、3周目は、
これまでのゲームのようなただのループではない。
このゲームは、1周するごとに攻略のポイントが変化するのだ!
たとえば2周目ならば「扉を開けるカギが見えなくなる」。
3周目は「さらに見えないカギのある場所でジャンプしなければならない」
などである。
この謎はマニュアルでも明かされていない。
これはプレイヤーに対する挑戦なのである。

4.素晴らしいBGM
これは個人的な好みの問題になってしまうことをご容赦願いたい。
オープニングの神秘的なBGM(しかも画面表示とシンクロしている!)、
ゲーム中の軽快なBGM(ついつい音に合わせてプレイしてしまう!)、
そしてまさに冒険の失敗を物語る悲壮感漂うゲームオーバー時のBGM…。
その余韻を残したままオープニングへと切り替わり、
ついつい継続プレイを誘われる構成!
この「静」「動」「静」のつながりが小気味良い!

このファミコン版の音楽は、
オリジナルの音楽とアイレムで作曲した音楽とを合体させたものだ。
ATARI版からあるタイトル画面のオープニング曲はティム・マーティンが制作し、
メインのBGMはアイレムが作った。
冒険者たち』というフランス映画のメインテーマをモチーフに
メインBGMは作られたとのこと。


-分析-

スペランカー』はクソゲーと呼ばれる事が多い。
ユーザーが勝手に言っているだけではない。
マスメディアでも『クソゲーの代表格』のように扱われていた。(フ●ミ通で確認)
クソゲー』とは何か?
自分にとってクソのような存在のゲーム。つまらないゲーム。デキの悪いゲーム。
世間一般の意識としてはこんなところだろう。
では、この面白いゲームがなぜクソゲーの汚名を浴びているのか?
その全てがキャラクターの挙動にあると思われる。
このゲームは他のゲームに比べて微妙な操作が要求される。
もしそれを誤るとすぐさま「死」はやってくるので、
プレイヤーは「怒り」を感じるのだろう。
前述したように、実はこのゲームの面白さはその挙動にこそあるのだが、
その本質をわかる前にプレイしなくなってしまった人が多いのだろう。
コーヒーを苦いといって飲まない子供と一緒だ。
では具体的に挙動に見られる『漢(おとこ)っぷり』を挙げてみよう。

 

(1)落下死の限界線が低い

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アクションゲームの中には“落下死”という概念がある。
つまり、あまりに高い位置から落下した場合、
その衝撃でダメージを受けるという概念だ。
問題はどのぐらいの高さから“落下死”が発生するのかだが、
スペランカーでは、だいたい主人公の腰以上の高さで発生する。
無論、それを承知で攻略していけば問題ないのだが、
当時のアクションゲームの王様は『スーパーマリオブラザーズ』であり、
アクションゲームの指針とされていた。
「ゲームの主人公はジャンプの衝撃に強いものだ」
という固定概念が根づいてしまっていた。
そんな折りにこんな高さから死んだら、
「自分の操作ミスじゃない!この主人公が弱いんだ!」
と思いたくなるのも当然だろう。
ちなみに『スーパーマリオブラザーズ』の登場は、
スペランカー』発売の3ヶ月前「1985年9月13日」である。

(2)同時押しのタイミングに甘えは許されない!

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“落下死”以上にシビアなのが同時押しである。
例えば綱につかまっている場面で、右隣の綱に移りたいとする。
このときに右ボタンとジャンプボタンを押せば乗り移れるわけだが、
もし右ボタンだけ押そうものなら、綱の上で右に移動するだけなので即死亡だ。
他ゲームではどちらかのボタンが多少先に押されても平気になっているものだが、
このゲームにファジーな操作などという甘えは許されないのだ!

(3)ゴーストとの銃撃戦

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このゲームは出現するゴーストを銃で撃つことにより回避するのだが、
銃の弾をゴーストに当てる必要がない。
ゴーストが近距離に来たら適当な方向に銃を撃てばゴーストは消滅するのだ。
とても不思議な仕様なのだが、
スペランカー』のゲーム性を考えると大正解だとわかる。
まあゲームなんてデフォルメの世界であり続けるのだから、
「幽霊退治ガスを空気中に撒いている」ぐらいに思っていればいいではないか。
また、銃で退治してもゴーストはすぐには消えず、小さくなりながら近づいてくる。
この仕様がまたスペランカーをより一層奥深いゲームにしているのだ。


以上のようなものが汚名を浴びた要因だと考えられる。
しかし、面白いのはこれらの要因は、
全て『スペランカー』の魅力へと直結している点だ。
「これらのハンディキッャプを背負って先に進む達成感」
この一言が『スペランカー』の魅力を伝えるのに相応しい言葉である。
もちろんそれに裏打ちされた“構成の素晴らしさ”がモノを言っているからで、
全ての悪条件を達成感に変えられるのなら、この世につまらないゲームなどない。

“こんな高さで人が死ぬわけない”などと
自分で勝手にネガティブになっている事で、
面白いゲームを楽しむ機会を失ってしまうのである。
「考えるな!感じるんだ。」

 

 


-商品-

ここではスペランカー関連のアイテムについて紹介していこう。


サウンドボトルキャップコレクション スペランカー
(ボーフォードジャパン)

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店頭で見つけたので4箱ほど購入してみた。
全高は7cmぐらいで、シークレットも含み全7種。
通常カラーのスペランカー2種、ピンクのスペランカー
白いスペランカー、コウモリ、ゴースト、
そしてシークレットは黄金のスペランカーである。
正直、通常カラー以外はスペランカーっぽくないのでハズレっぽい。(^^;

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ボトルキャップだから、ペットボトルの蓋に設置できるのは当然として、
足元のボタンを押すとスペランカーでお馴染みのBGMが鳴る!
ゴーストもあの「デ~レ~レ~レ~レ~~レレレレ」ってやつ。
音鳴らしながら忍び寄る遊びも可能なのだ!!

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これは和むね~、癒されるね~♪♪♪
なによりこのパッケージが良い。

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 スペランカーの魅力が箱ですでに表現されている。
下から見上げると弱弱しい顔で気に入らなかったが、
上から見下ろすと精悍な顔に見えるので許せる。
コンプリートする気は起きないけど、スペランカーに呪われし者は買わざる得ない。

 

-オマケ-

今回のこの記事をブログに掲載する事を記念して、
Tシャツも作ってみたw

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そして今日も我が家のスペランカーに火が灯る・・・

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