時は1998年。
第8回を迎えたG1クライマックスは、
16選手参加によるトーナメント、両国国技館3連戦で行われた。
G1クライマックスは、闘魂三銃士時代を象徴する大会となっていったが、
計3度優勝した蝶野正洋は第1回、2回、4回と3度優勝、
武藤敬司は第5回に優勝していたが、
橋本はこれまで優勝に恵まれていなかった。
1回戦で後藤達俊を4分で下した橋本の2回戦の相手は天龍源一郎。
1992年にWAR旗揚げから新日本の主要選手との闘いで次々とシングルマッチに勝利。
新日本と一区切りつくと大仁田厚、高田延彦、神取忍などとも試合をし、
ミスター・プロレスと呼ばれるほどに存在感を示していた。
(ちなみにこの年、天龍はフリーとなっている)
そんな天龍と橋本のシングル対決は4度目。
正面から渾身の力を叩き込む橋本と、正面から受け止める天龍。
新日本の中で最も歯車の合う相手は橋本だったのかも知れない。
最初の技は橋本の水面蹴り。
天龍がキレイに仰向けに倒れる。
そこから天龍の逆水平と橋本の袈裟斬りチョップの攻防。
どちらも重心の乗った重さ。
特に橋本の遠慮無さが物凄い!
思いっきり打っても正面から受けとめる天龍の凄味。
中盤、天龍がトップロープからダイブ。
それに合わせてニールキックをヒットされる橋本!エグい!
最後は橋本のDDTで決まったけど、
実質、逆水平チョップvs袈裟斬りチョップによる魂の削り合い試合であった。
今の新日本、いやもしかしたら今のプロレス界にも
存在しないタイプの試合かも知れない。
橋本
「終わりまで何にも言えない俺は。」
天龍
「まぁ、△×◯やね。勝ちたかったけど、
でも、途中でやっぱりあんなんなっちゃうんだよね。
あんなんなっちゃってもう、なんちゅうのかな、
倒すか倒されるかみたいな、感じになっちゃうのがね。
でも、橋本の方がやっぱり、うん・・(首を傾げて)なんなんだろうね。
とにかく負けた事は悔しいよ。
---お客の反応としてね、ブーイングなんかもたまに来るんですが、
そういう感じってのはどうですか?
「当たり前だよ、そんなの。だってそこはG1だからね。
俺は別に声援して欲しいなんて思わないしね。
だからこそ、闘ったと思うのかもわかんないし。
だから、あのー札幌の武藤には負けたくないと思ったし、
札幌で蝶野にも負けたくないっていう、今日も特にそういう気持ちわね、うん。
そんなのは、クソくらえだよ。
勝ち上がりだから。負けた俺が言ったってしょうがないだろうし。
気持ちよく明日、最後まで橋本が残ってくれるのを、うん、希望してるよ、俺はね。
難しいよね、なかなか、G1は。」