生観戦した中でマサ斎藤のベストマッチは何だろうと考えた。
マサさん自身の大一番は巌流島決戦なんだと思うけど、あれは生観戦してないしな。
となるとやはり1990年2月10日に開催された東京ドームにおける
ラリー・ズビスコ戦が思い浮かぶ。
「'90スーパー・ファイトIN闘強導夢」は新日本プロレス2回目のドーム興行で、
波乱の中で開催までこぎつけた奇跡の大会だった。
プロレス回顧録第6回でも触れたが、
メインとしていた「ザ・グレート・ムタvsリック・フレアー」がキャンセルとなり、
坂口征二がジャイアント馬場に交渉して、
全日本プロレスの主力が参加する事になった奇跡。
それによってドーム大会後半はプレミアムカードが並び立つカードとなった。
第7試合 ジャンボ鶴田&谷津嘉章vs木村健吾&木戸修
第8試合 天龍源一郎&タイガーマスクvs長州力&ジョージ高野
第9試合 ビッグバン・ベイダーvsスタン・ ハンセン
第10試合 北尾光司vsクラッシャー・バンバン・ビガロ
第11試合 アントニオ猪木&坂口征二vs橋本真也&蝶野正洋
これら黄金カードによってチケットは飛ぶように売れたわけだが、
ここで前半戦のカードも見てみよう。
第1試合 飯塚孝之vs松田納
第2試合 ペガサス・キッド&佐野直喜vs獣神サンダーライガー&野上彰
第3試合 ヒロ斉藤&後藤達俊&保永昇男vs小林邦昭&星野勘太郎&馳浩
第4試合 ブラッド・レイガンズvsビクトル・ザンギエフ
第5試合 スティーブ ウィリアムス&サルマン ハシミコフ
第6試合 <AWA認定世界ヘビー級選手権試合>マサ斎藤vsラリー・ズビスコ
勝負を賭けたドーム大会のカードにしては地味だ。
第1試合でヤングライオン対決。続いてジュニア戦、ブロンドアウトローズ、
レッドブル軍団のシングル2連戦と続く。
悪いカードではないが、両国クラスの普段着のカードである。
そして前半を締めくくるのがAWA認定世界ヘビー級選手権を賭けた
マサ斎藤vsラリー・ズビスコ戦である。
マサ斎藤のゴツい体とレスリングに裏打ちされた説得力は
知れ渡るところではあったが、
このときすでに47歳で、第一線の選手という認識ではなかった。
(ちなみに老けてはいるがラリー・ズビスコは当時36歳w)
実はこの試合、最初からマサ斎藤がマッチングされていたわけでは無かった。
ラリー・スビスコのベルトに挑戦する予定だった藤波辰爾が腰痛で欠場。
代打による出場であった。
そうなるとこの試合はAWA王者の顔見せ的なカードであり、
マサ斎藤は良い引き立て役に終わるだろうと思っていた。
それだけ注目度は低かったわけだ。
AWAという団体の抱えていた選手は昔ながらのオールドスタイルの選手が多く、
このラリー・ズビスコも典型的なAWAタイプの選手。
この試合中も特にオリジナリティのある動きを見せるでなく、
出したこれという技はブレーンバスター、シュミット流バックブリーカーぐらい。
グランドでも終始マサ斎藤のレスリングが圧倒しているように見えた。
そして監獄固めが決まったときの気合の入ったマサ斎藤の表情!
このあたりから異変を感じていた。
あれ?マサ斎藤、AWAベルトいけんじゃね!?と。
そこから痛めたラリー・ズビスコの膝裏を蹴り上げるマサ斎藤。
そしてバックドロップで叩きつける!
技の合間合間でボディランゲージを織り込んで試合を盛り上げるマサ斎藤。
マサ斎藤って、ガチガチのストロングスタイルに思われがちだけど、
このひとがスタイルを確立したのってアメプロだからね。
オールドスタイルのアメプロへの対応はピカイチだ。
そしてラリー・ズビスコのパンチを耐えるパフォーマンスからの
張り手倍返しで盛り上がるドーム!
最後はドロップキックをかわしてからのバックドロップ、
直後のスモールパッケージでピン!
まさかのマサ斎藤AWAベルト戴冠にドームは大熱狂!
47歳にして大きな仕事を成し遂げたマサ斎藤が
とてつもなく頼もしく見えた一戦であった。
余談だけどマサ斎藤の入場テーマ「THE FIGHT」がめっちゃカッコイイ曲なんだよ。
この曲は1987年に公開された映画「オーバー・ザ・トップ」に使われた曲で、
映画でもスタローンが試合に向かう良いシーンで使われている。
ちなみにこの映画で脚光を浴びてプロレス入りするスコット・ノートンは、
マサ斎藤が新日本にブッキングしてレスラーとして成功していく。
そしてマサ斎藤引退試合の相手を務めたのだった。