歴史的な目パチ『WILL -ザ・デストラップII-』シナリオログ

WILL -ザ・デストラップII-
シナリオログ

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発売元:スクウェア
発売日:1985年9月
定価:5800円
使用機器:[5インチディスク版]PC8801以降(1枚組)
ジャンル:コマンド入力式アドベンチャーゲーム

 

 

~歴史的な美少女の目パチ~

本作はのちに『ファイナルファンタジー』を生み出す坂口博信の作品である。
坂口氏が手掛けた前作「デストラップ」は商業的に失敗していた。
そこで坂口氏は
「次は、絶対に商業的に成功させてやる。売れ線にもっていくなら『女の子』だ!」
と開眼。
ヒロインのアイシャが目をパチクリする1枚の絵を最大限に押し出した。
パッケージやオープニング画面に採用しただけでなく、
店頭デモや雑誌の広告でもそのアニメーションが商品をアピールした。
かくして坂口氏の戦略は大当たり。
「パソコンでこんなテレビアニメみたいな女の子が動くなんて!」
と、多くのパソコン少年達をときめかせたのだった。

 

~ゲームスタート~

1987年。人間嫌いで知られた狂気の科学者「Dr.ハワード」が、
24時間後に地球にとって不要な人類を滅亡させる事を、
世界中のあらゆる電波に介入して予告した。
Dr.ハワードの隠れ住む島に核ミサイルがあると言う情報を入手した世界会議は、
エージェントのベンソンを島に送り込んだ。


俺は林の中の家に向かって歩いた。
ベッドに男が横たわっている。俺はそばに寄った。
「Dr.ハワードだ・・・死んでいる。」
死後1週間は経っている。
---と言う事は、脅迫は一体誰が・・・??

床に落ちていたレーザーガンを取ったが、
パワーが切れていて使えない。
「何かバッテリーのようなものを付ける必要があるな。」

Dr.ハワードの指に指輪が光っている。
「意味ありげだな・・・。」

机の上の紙切れを見てみる。
「私はアンドロイドに娘と同じ名前をつけた・・・」
日記まーの切れ端のようだ。

ベッドには写真がある。
Dr.ハワードが娘にキスをしている写真だ。
「アイシャとともに・・・1979.11.25」

棚の裏に隠し通路があった。
「何の部屋だろうか?」

机を見ると一瞬何かが光った。
「なんだ、今のは・・・?」
机の中には遺書らしきものが入っていた。
「私の意思(WILL)は、地下の人工知能に継がれる。私は死ぬ。
そしてこの醜い世界も終わりを告げるだろう。

これは私の意思。これは神の意思。」
狂ってる!俺は心で叫んだ。

岩壁にあるドアの前。
俺はコネクターに指輪をはめた・・・と、ドアが音もなく開いた!
中は実験室だろうか。机、コンピューター、などがある。
むかいにドアが見える。
机のコントローラーを修理したあと、壁の設計図を見た。
コントローラーの設計図のようだ。
「まわす 左 ・・・上へ : まわす 右・・・下へ」
と書いてある。

外へ出て、重力場発生装置に入ると、コントローラーが金属音を立てて作動し始めた。
重力場に支えられて、俺の体は宙に浮いている。
コントローラーを右にまわすと、エレベーターの中の重力場が変化した。
俺の体は何かの力によって支えられながら、ゆっくり下に向かって動き出した・・・。
コントローラーが妙な振動音を出している。
「完全に直っていないようだ。」

重力場によって下へゆっくりと降りていった・・・
が、B2に着いたとたんコントローラが壊れてしまった。
「もう直す事が出来ないようだ・・・。」
「B2」俺の体は重力場に支えられて床から数センチのところに浮いている。
「どうやら最下層のようだな・・・。」
規則的な機械音が聞こえてくる・・・動力室だろうか。
そこに置いてあるバッテリーをレーザーガンにとりつけた。
「これで少しは使えるな。」
俺は先に進んだ。

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「ウッ!メカノイドだ!」
俺に襲いかかってくる。
レーザーガンで撃ち続けると、メカノイドは機能停止した・・・俺は先に進んだ。
廊下に落ちていた新聞の切れ端を読んでみる。
「1978.4.3 マサチューセッツ工科大の
人工知能の暴走をDr.ハワードが1語の入力によって止めた。・・・・“シ=シ”

つまり、実験中のネズミが死ねば自分自身も死んでしまうという命令と、
ネズミを殺すというプログラムに矛盾を生じさせたのである。」
俺は先に進んだ。

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カニ型のメカノイドが襲いかかってきた・・・!!敵意があるようだ。
ボトルを投げると、メカノイドから出ている炎に引火した・・・
「VAROOOOOOOOOM!!!」
メカノイドは機能を停止した。
俺は先に進んだ。
実験室のような場所に出た。
俺はドアと音声入力装置を破壊した。レーザーのエネルギーは0になったようだ。
しかしついでに警報装置も破壊された。
「しめた・・・!」
ドアの向こうに行く。
カプセルの中に一人の少女が横たわっている。

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「アイシャ」と呼びかけると、音声入力装置が作動して、カプセルが音もなく開いた。

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「アイシャ・・・そう私はアイシャ、博士の娘に似せて作られたアンドロイド・・・
あなたは誰?博士じゃないわね・・・
でも良いわ、私の感情回路は[寂しさ]でいっぱい。

もうあなたのそばを離れない!!」

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アイシャは俺の手からコントローラーを取ると、瞬く間に直してしまった。
「あなたの役に立てて嬉しい!!」
さらにアイシャはレーザーに自分のエネルギーを充電してくれた。
「はい、これで使えるわ!!」
俺がアイシャに別れを告げると・・
「あなたのそばにいていいでしょう・・・。」
アイシャはピタリと俺に寄り添っている。
「アア・・・」
「アリガトウ・・・」
俺はアイシャと話すのをとりあえず止めにして、先に進む事にした。
ついでに指輪も回収だ。
Dr.ハワードの隠し部屋に戻り、金庫からカードを手に入れた。
コントローラーが直っているので、重力場発生装置から先に進んだ。

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メカノイドが行く手を阻んでいる。
レーザーガンでメカノイドを破壊した。
俺は残骸を踏み越えて先に進んだ。

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「チッ!またメカノイドだ!」
だがメカノイドはなぜか襲ってこない。
と指輪が光り始めた・・・
どうやら指輪から出ている、何か特殊な波長の音波を嫌っているようだ・・・
しばらくしてメカノイドは姿を消した・・・。

通路の突き当りはドアだった。ドアは閉まっている。
アイシャがしゃべりだした。
「このドアの回路も私の感情回路と同調している。
・・・でも開けられないわ・・・
愛情という感情がキーになっているようなのだけど・・・。」
俺はアイシャに写真を見せた。
「ハワード博士・・・あんなにかわいがってくれたのに・・・。」
と、アイシャの感情の変化に同調したのか、ドアが音もなく開いた。

中に入ると巨大なコンピューターがそなえつけられていた。
突然コンピューターの合成音が部屋に木霊した。
「よくここまできた。お前が人類の代表者か・・・?
まあいい、私はDr.ハワードの意思を継ぐもの。
博士の作った人工知能だ。そこにカードを挿せ。」

俺の目の前に突然、何か入力装置のようなものが床から浮かび上がってきた・・・!
「私は博士の意思・・・つまり劣等な種である人類の消去を行うことにした。
だがDATAの中に人類の優れた点を見出した私は
人類に1度だけチャンスを与える事にした。さぁ、カードを挿せ!」

「もしお前が私を止める事が出来たなら、人類の消去は実行されない。
試してみるがいい。
1度の入力がお前に与えられた最後のチャンスだ!」
俺はあの言葉を入力したる
するとコンピューターが暴走しだした。
光の渦の中、声がした。
「お・ま・え・・・人類の勝ちだ。私は眠る・・・。」
コンピューターは死んだ・・・世界は救われた。
「ウッ!」天井が崩れ落ちてくる。
俺はアイシャの手を引き出口に向かって走った!
「アイシャ!!」
アイシャが倒れた!
「・・・私のMEMORY UNIT は MOTHER COMPUTERと直結していたの・・・
私も眠る・・・でも今度の眠りは、博士が死んだ時のとは違う。
感情回路の中に、何か安らかなものがある。・・・信頼、尊敬?
んん、違う、もっと別の温かいもの・・・
BENSON ありがとう・・・おやすみなさい・・・」

アイシャは目を閉じた・・・
「アイシャ・・・」

俺はTORINAI ISLANDを離れた・・・
と、島がゆっくりと沈み始めた・・・。
全てを消し去るかのように ---
俺はふと、アイシャの微笑みを思い浮かべた・・・。

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~編集後記~

冒頭で坂口氏が「売れ線にもっていくなら『女の子』だ!」
と本作の売り方を決定付けた事を書いた。
が、本作を買ったユーザーの多くはこう思ったに違いない。
「だまされた!」と。
多くのパソコン少年を魅了したアイシャの横顔を見て、
「こういった美しいアニメーションがたくさん出てくるゲームに違いない」
と思った事だろう。

だがフタを開けてみれば、ゲーム中に登場するアイシャの絵はたったの3枚。
しかもテレビアニメのようなクオリティに達しているのは
オープニングでも使われている横顔のみ。

あとの2枚は購入者の期待していたようなものとは乖離していた。

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▲落差のクセが強い!

 

実際のゲームプレイは、無味乾燥とした背景を淡々と探索していくというもの。
この時代にのちの美少女ソフトのような内容を期待できないのは理解できる。
が、それを期待してしまうほどの破壊力があの横顔にはあったのだ。
まさに1枚のアニメ画像のみで成功させてしまった一本であった。
この成功がのちの様々なタイトルに影響を与えた事は言うまでもないだろう。