とんぼ

1988年/TBS/金曜21時〜/全8回
脚本:黒土三男
演出:大岡進、竹之下寛次、清弘誠
プロデューサー:柳井満
主演:長渕剛(小川英二役)

組長にハメられ、2年の刑務所暮らしから解放された小川英二。
舎弟の水戸常吉(ツネ)一人が彼を迎えに来る。
2年の間に愛人は英二の元を離れ、組は彼をハブにし、妹は大学を辞めていた。
「世の中どうしてこうなんだ!」と苛立ちを隠せない英二。
一匹狼で立ち振る舞う英二だったが、次第にツケがまわってくる。

長渕剛の主演連続テレビドラマとしては5作目。
その後、∨シネマの帝王とまで言われる哀川翔
このドラマが初の俳優挑戦だった。

【第1話】
まず刑務所で刑期を終えて舎弟のツネに迎えられるヤクザ小川英二。
2年しか収監されてなかったのに、まるで浦島太郎状態。
英二の純粋さとヤクザの不条理さがアンバランスに混在している描写の一話。
英二がサザンオールスターズの歌をこき下ろすシーンが登場するのもこの回。
何かって言うとすぐ金を渡す英二が印象的。
植木等の存在がこのドラマの良心。

【第2話】
英二はそば屋で騒ぐ学生やDV親などに
「もっと思いやりを持って生きろ!」みたいな指導をかますが、
そもそも自分は他人の迷惑顧みずに振る舞ってるわけで矛盾している。
「第1話」との温度差を感じる。
なぜか宮沢波子が急にお気に入りとなった英二は
ストーカーばりにつきまとう。(^^;

【第3話】
妹のあずさの誕生日が近いという事でブティックでプレゼントを買う英二。
このブティック店員がデフォルメ効きすぎw。
そして波子が急激に英二に魅かれすぎw。
(チャームの魔法でもかけられたのか?)
妹のあずさが舎弟のツネと付き合ってた事を知る英二。
目覚まし時計で思いっきり殴られてたけど、大丈夫か哀川翔

【第4話】
訪ねてきた波子に
「うるせーな!俺の女になるんなら黙ってハイハイ言ってりゃいいんだよ」
とオラオラキャラ全開。
しかも泣きながら食器洗ってる波子の背後から胸もみまくって
「ちょっとやりてぇ」と鬼畜対応。
相変わらず他人の態度には厳しいのに自分は人の気持ちを考えない英二(^^;
最後は指詰めようとしたツネと仲直り。

【第5話】
重い病気を治療するため上京してきたツネの母親。
絵に描いたような「田舎から上京してきた母親」描写。
方言に戻るツネ。昭和のドラマ。
小さい頃から両親を知らない英二はツネを思う母親の姿にショックを受ける。
このドラマは毎回描きたいメッセージがストレートだ。

【第6話】
波子が妊娠3ヶ月。
英二の子供をはらんだわけだけど、時系列おかしくない?
ここ数話でけっこう時間が経過してるってことか。
英二が寺島進の耳を削ぐところがハイライトだね。
ツネがカタギに。

【第7話】
いよいよ大詰め。
傍若無人にふるまってたツケがまわってくる英二。
鉄っちゃんの息子役の子、石倉三郎に似てるなぁw。
石橋へのリンチがかなりバイオレンス。
ドラマ前半と較べて英二がかなり穏やかな性格になってるな。

【第8話】
最終回。
あずさの「回転焼きは回転焼きなのだ」がちょっと昭和カワイイ。
妹や波子、ツネ、それぞれに別れを告げるようにしたあと、
組長へのケジメをつけにいく。
わかりやすいプロット。
組長、瞬殺。
最後の電話での波子との別れからの英二刺されるまでの流れは屈指の名シーン。
松田優作を彷彿とさせる死に様だ。(死んでなかったけど)

【総括】
前半は長渕剛が普段不満に思っている事を
英二のキャラクターを借りて代弁しているシーンが続く。
 
英二の前に大げさにデフォルメされた礼儀知らず登場
 ↓
英二キレて説教ぶちかます
 ↓
シュンとなる礼儀知らず

このパターン。
ただ、一方で英二自体も世間の迷惑顧みない無法行為をしているので、
矛盾した印象を受ける。
結局のところ不器用な生き方しか出来ない男が
後半に向けて窮屈になっていく話で、
それは長渕剛の生き方とも重なる点が
多感な年頃の視聴者の心をとらえたんだと思う。
ドラマの組み立ても同じく不器用で、プロットがフラフラしている。
それら全ては最終回の完成度で帳消しとなる。