プロレス回顧録(03)「G1 CLIMAX 1991」

1991年8月7日から8月11日という短期間で
新日本プロレスではトップ選手だけのリーグ戦が行われた。
出場選手は以下の通り。

Aリーグ:武藤敬司藤波辰爾スコット・ノートンビッグバン・ベイダー
Bリーグ:蝶野正洋橋本真也クラッシャー・バンバン・ビガロ長州力

このG1クライマックスが画期的だったのは、この絞り込んだメンツ。
こういうリーグ戦の場合、まあ本命は各ブロック2人ぐらいで、
あとは「たぶん無理」という引き立て役が並ぶのがパターンだった。
同じく1991年に開催された
全日本プロレスチャンピオンカーニバルのメンツはこんな感じ。

Aリーグ:
スタン・ハンセン、三沢光晴、ダイナマイト・キッド、小橋健太、
ダグ・ファーナス、テキサス・ターミネーター・ホス、ジョニー・エース
Bリーグ:
ジャンボ鶴田ダニー・スパイビー川田利明田上明
ダニー・クロファット、ジョニー・スミス、カクタス・ジャック

決勝は鶴田とハンセンだろうな。
ダグ・ファーナスとかダニー・クロファットとかまず来ないよな、とか(^^;

G1に話を戻そう。
リーグ戦という事は同じブロック内は総当り。
リーグ戦は各選手3試合。1敗したら危険信号という修羅の戦い。
たった5日の間にメイン級のカードが次々と実現する。
これは凄い大会になるぞという話で俺様の周囲は盛り上がっていた。

 

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8月7日開幕戦の愛知県体育館
藤波辰爾vsビッグバン・ベイダー
当時、藤波はIWGPヘビー級王者だったけど、
優勝する感じのコンディションには見えなかった。
(椎間板ヘルニアによる長期欠場は1年前)
この試合は逆さ押さえ込みでベイダーから勝利。
ベイダーは力量的に優勝してもおかしくなかったけど、
ここで星を落とした事で「もう優勝は長州しかいないよな・・」と思った。
闘魂三銃士も実績を残し始めていたけど、まだ長州・藤波に比べたら格下だった。
3人とも海外修行から帰国して2年目ぐらいだったし。

そんな長州は初戦で蝶野正洋とあたる。
三銃士の中でも蝶野は試合巧者のイメージしかなかった。
IWGPタッグ王座こそ獲っていたものの、
パートナー武藤のサポート役といった感じで。
ところが大本命の長州力に3度目のSTFでタップを奪う大番狂わせ。

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ただこの試合は蝶野が長州を超えたというより、
長州どこか体悪いのかな?と思った。
それくらいあっさりと試合が決まった。
翌日は俺様の周囲で
「STFってそんなに効くのか?」という話題で持ち切りとなったw

長州は9日の2試合目ビガロ戦でも、
ビガロのDDT3連発を食らったあとのダイビングボディプレスで
3カウントを奪われる。
3試合中2試合に負けているわけで、早くも決勝進出は絶望的となる。

 

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一方、武藤敬司は初戦でスコット・ノートンに敗れはしたものの、
藤波に首固め3連発で勝利。
ベイダーをも下して決勝へと駒を進めた。

Bブロックは公式戦で引き分けた蝶野と橋本が同点。
最終日に決勝戦進出決定戦を行った。

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膝を痛めての欠場から復帰したばかりだった橋本。
蝶野は橋本の膝裏にヤクザキック
さらにDDTに行こうとする橋本の膝に鋭角な膝蹴りを突き刺すという
厳しい攻めからのSTFで試合を決めた。

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決勝は蝶野と武藤
短い期間で蝶野の大躍進を目撃した俺様は、
蝶野のテーマ曲「FANTASTIC CITY」や
田吾作スタイルのタイツすらカッコよく感じていたのだった。
だけど相手はスター性も抜群で運動センスもズバ抜けた武藤。
まあ、今後の新日本でエースを任せるなら武藤だろう。
ここから武藤時代の新日が幕を開くと思っていた。
実際、決勝の試合も武藤の動きは冴えていた。
トップロープに登った武藤を迎撃するためにドロップキックを放った蝶野。
その蝶野をさらに飛び越えた武藤。

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すげぇ~。
蝶野はこの日2試合目。
判官贔屓を含めて声援は五分五分といった感じ。
武藤のラウンディングボディプレスを剣山で防いだ蝶野。
普段まったく使わないパワーボムで武藤からきっちり一本取った蝶野。
動の武藤に対して静の動きで一瞬のチャンスを狙っての勝利だった。
蝶野ってスタイル的にパワーボムするタイプじゃない。
STFでもヤクザキックでもなく、
この大一番に普段使わないパワーボムを持ってきたところに
蝶野の閃きの素晴らしさを感じる。

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3カウントが入った
その瞬間にリングに向けて座布団が投げられる。

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観客は何か「歴史的な瞬間を目撃した」という感情にうち動かされて
その感情の開放のさせかたがわからず、思わず座布団を投げたんだと思う。
俺様はというと、座布団を投げたという記憶がまったくない。
もしかしたら座布団の設置されていない席で観ていたのかも知れない。

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蝶野「今日はどうも、新日本プロレス応援してくれてありがとうございます。
新日本は今日のリーグ戦をきっかけに、これから始まります!
それじゃあ、お客さんがた、新日本の恒例のアレをやらせて頂きます。
1・2・3でダーです。よろしくお願いします!
いくぞオラーッ!1!2!3!ダー!!」

 

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最後は橋本もリングに上がって3人で手を上げた。
決勝のリングに立てなかった橋本が
ニコニコしながら二人の手を上げていたのが印象的だった。
橋本にとっても蝶野や武藤にとっても、
三人にとってこれは「蝶野時代の始まり」ではなく
「三銃士時代の始まり」だったからだ。

一方、全敗によって引退まで囁かれた長州はというと、
このあと盛り返して5年後のG1では全勝優勝するのである。