8bit時代当時。
パソコンソフトと言えば
「コピー」と「プロテクト」の壮絶な闘いが繰り広げられていた。
コピーとは本来、大事なデータを守るためのバックアップとして利用されるが、
友達やレンタルショップなどから製品版を借りてきて、
ブランクディスクにデータだけ頂戴する行為が横行していた。
そうする事で本来6000~9000円あまりを支払わなければならないソフトが
ほぼフロッピー代だけで手に入るのである。
無論、ソフトを持っていない人間がデータを複製する事は違法なのだが、
さも当然のごとくみんなバンバンとコピーをしていた。
(デジタル泥棒の走りだな)
それに対してソフトメーカー側は、手をこまねいて見ているわけではなかった。
“プロテクト”というコピー防止対策をとったのである。
純粋なデータの複製というのは、
どんなパソコンでも標準的な機能として備わっている。
しかし市販ソフトをそんな簡単にコピーされてしまってはたまらない。
通常の方法でデータを複写しようとしても、
うまくいかないようなプログラムを組み込んだのだ。
これが一般的に言われるプロテクトだ。
これはほとんどの市販ソフトで行っていたと思って良い。
さて、そこで登場するのがコピーツールとファイラーという存在である。
コピーツールというのは、読んで字の如く“コピーするためのツール”である。
そしてそのツールにとって最も重要な要素、それがファイラーである。
ゲームのプロテクトは共通ではない。
時代が進めば進むほどその仕組みは複雑化した。
とてもコピーツールの機能だけで全てのプロテクトを打ち破るのは不可能である。
そこで、ソフト1本1本に対応した“プロテクト外し”データを
毎月のように販売したのだ。
これに対してソフトメーカー側は、
「同じソフトでプロテクトのバージョンを変えて出荷する」とか、
「ゲーム序盤でコピー成功と思わせといて、後半に発動するようにしておく」
などの知恵を絞ったが、
結局イタチゴッコで、
それが判明すれば、またそのプロテクトを外すファイラーが出るという具合に、
プログラムで壁を作る事には限界があった。
ではなぜそのようなソフト(コピー関係)が販売される事が許されていたのか?
それは法に触れていないからである。
『所持していないソフトを複製してしまうのはユーザーの問題であり、
ツール側の介する所ではない』というわけだ。
プログラムでプロテクトをかけるには限界がある。
ツール販売を止める事も出来ない。
そこでソフト開発会社が取った手段はユニークな物となって歴史に残っている。
以下にそんな(プログラム以外の)プロテクトの数々をご紹介しよう。
[風変わりなプロテクトたち]
「サイオブレード」
プロテクトの種類:ハードプロテクト
パッケージに「メロディモジュール」という付属品がついてきた。
これはボタンを押すごとに違ったメロディが流れるもので、
ゲーム中に「このメロディは何番目のものか?」
といった設問に答えるシーンがあったのだ。
ただし、強引に勘で入力して行けばメロディモジュール無しでも進める事は出来る。
確かにコピープレイ防止のための策ではあるが、
こういうゲーム内容を広げてくれるようなアイテムを
プロテクト対策に利用するのは面白い。
「トップルジップ」
プロテクトの種類:ハードプロテクト
ジョイスティックコネクタに、
「Jモジュール」という長方形の物体を接続しないと遊べないようになっていた。
つまり、コピー防止のためだけの周辺機器を開発して同梱したわけだ。
コピー防止の涙ぐましい努力は認めるが、
アクションゲームである本作で
ジョイスティックを使用不可にしてまで取る手段だっただろうか?
また、プレイ終了後に取り外し忘れると、
他のゲームで誤作動を起こすという迷惑な代物だった。
「アルギースの翼」
プロテクトの種類:マニュアルプロテクト
『翼竜の書』なる(カバーが)分厚い本が入っており、
ゲーム中にそれを調べて入力しなければならない箇所が登場した。
当時、それを人から借りてコンビニで全ページコピーした輩がいたが、
中古ならば当時1000円ぐらいで売っていた本作。
その労力を考えれば買った方が良かったんじゃないか?(^^;)
「あーくしゅ」
プロテクトの種類:マニュアルプロテクト
「主人公の好物は?」などと
ゲーム中にマニュアルに記載されている設定を聞かれる事がある。
プレイヤーはプロフィールの欄に書かれた文言を入力しないとゲームが進まない。
このゲーム自体もファンアイテム的な要素が強かった。
「ジーザスII」
プロテクトの種類:ディスクシールプロテクト
このゲームのFDにはそれぞれ色の違うディスクシールが貼られている。
一見するとただのデザインに見えるのだが、
ゲーム終盤になると、
「今から言う色の順番にFDを入れろ」というフューチャーが登場する。
その頃になるとコピー元は手元にないからゲームを先に進める事が出来ない。
非常に上手いプロテクトだったと言えるだろう。
ただし、タネがバレるとFDにその色をメモすればいいわけで、焼け石に水であった。
「覇邪の封印」
プロテクトの種類:布製プロテクト
このゲームにはマップ画面という物はなく、
画面で出てくる視界の狭いビューを頼りに進んでいくものだった。
しかし、ただ単に不親切と思われるこの構成もプロテクトになっていたのだ。
マップ移動中は、同梱の『布製マップ』に『メタルフィギュア』を乗せて
場所を確認するようになっているのだ!
「ザ・キャッスル」
プロテクトの種類:クリアできないプロテクト
このゲームでは2種類のプロテクトが確認されている。
まず一つはカギをくれる妖精に触れると、画面が切り替わって、
マルガリータ姫が城から連れ去られる一枚絵が表示されてゲームが終わるというもの。
二つ目はとあるルームが超絶難易度のものに切り替わり、
そこをなんとか抜けると画面に
「COPYしたらAKANDE」と書かれた行き止まりのルームになっているというもの。
いずれにしてもコピーユーザーはクリアできなくなるわけだが、
正規ユーザーでは見る事は出来ない一枚絵が見れたり、
オリジナルの高難度ルームが遊べたり、
コピーユーザーだけのご褒美感も同時にあるような気がしてならない(^◇^;)
▲こちらはフェアリー救出時のプロテクト画面
「怨霊戦記」
プロテクトの種類:霊的プロテクト
パッケージに「お札」を同梱し、
そのお札がないとプレイヤーが呪われるような内容にした。
確かに斬新なプロテクトだが、
俺様が本作を購入しようと思ったときは既に中古しか市場に無く、
購入したら中に「お札」が入っていなかった(T_T)
[コピーツールについて]
これは『HOT FILE EXPRESS』というソフトである。
『THE FILE MASTER』というバックアップツールがあり、
そのツールで使用するユーティリティソフト(いわゆるファイラー)である。
ソフトに同封されたペラ紙をご覧頂こう。
これを見れば想像がつくと思うが、
つまりは「ここに書かれているソフトはこのディスクでコピーできますよ」
という意味である。
『THE FILE MASTER』はバックアップツールではあるが、
これらがリリースされるペースは月に2回ほど。
25本ぐらいの対応タイトルが入っていて1500円である。
単に該当タイトルをコピーするだけのものの他にも、
無敵にしたりパラメーターを最強にしたりする改造プログラムも含まれていた。
これを安いと見るか?高いと見るか?
バックアップツールは『THE FILE MASTER』以外にも存在していたが、
ここまで徹底して市販ソフトに追従する形で
対応プログラムをリリースしていたものは無かったので、
おのずと『THE FILE MASTER』が定番バックアップツールとなっていた。
これらを製作及び販売していたのは
いずれも『京都メディア』という京都にあった会社である。
現存する会社なのかどうかは不明であるが、
最後にその活躍を見たのはFM-TOWNS版『THE FILE MASTER』だった。
パッケージ内のペラ紙にはバイト募集の項目があり、
「業界屈指の高給です」と書かれていた。
おそらく高額な理由は「プロテクトが解析できる」という
特殊技能に対するものだろう。
物凄い技術職だな。(^^;
真っ黒のディスクに白一色で描かれたシルクハットの紳士。
これは『HOT FILE EXPRESS』のイメージ画として
統一されて使われていたものなので、
妙に懐かしい人もいるだろう。
さて、お終いに、『夢幻の心臓II』というゲームのマニュアルに、
レンタルやコピーに関する面白い記述があったので、参考までに掲載しておこう。
-夢幻の心臓IIをお買い上げのお客様へ-
近ごろ、あちらこちらで、ソフトハウスや今これを読んでいるあなたまでも、
食いものにしようとしている悪い怪物たちが、はびこっているようです。
誰の許可も得ずに違法にソフトを貸しているレンタルソフトもそのひとつです。
・・・おっと、またあの話か、なんて思わないでぜひ最後まで読んでください。
これからの話の中には、明るい明日への扉を開く鍵が隠されているのですから。
みずからレンタル怪物のワナにはまってしまった者たちは、マニュアルがなかったり、
壊れたディスクをつかまされたりし、
かといってソフトハウス城に助けを求めることもできず、
みすみすたくさんのお金を奪われてしまいます。
怪物はそれだけではありません。
キャラクタージェネレーターなどと称して、
ゲームディスクを不当に改造するプログラムを売っている者や、
ヒント集と称して未確認の情報を流す悪質な怪物もいます。
それらはまるでゾンビのように、倒しても倒しても名前を変え、
姿を変えて、あなたたち勇者に襲いかかろうとしています。
これらの犠牲者は数多くいます。
不当な改造プログラムやコピーツールなど、
呪いのかかったアイテムを使ったため、ディスクを壊してしまい、
たくさんのお金を支払った勇者は10人や20人ではありません。
また、誤った情報をうっかり信じこんでしまった心優しい勇者たちは、
いつまでも夢幻界をさまよい続けることになってしまったのです。
魔物たちは、一見とても親切に見え、甘い言葉で近づいてきます。
しかしその正体は、呪われたアイテムを法外な値段で売りつける怪物なのです。
本来なら、あなたたち勇者を応援してくれるはずの雑誌たちの中にも、
怪物たちの毒気からのがれられず、ついにみにくい怪物の姿になりはてた者もいます。
“パロディ”などと称して、ゲーム改造法をばらまいているのです。
(俺様:テクノポリスの事か?w)
もちろん他の怪物同様、親切なふりをして勇者たちに近寄ってきますが、
この怪物のささやく言葉もまた、呪われているのです。
前作「夢幻の心臓」の時がそうでした。
自分にダメージが返ってくるのを知らずに、
その呪文を唱えた勇者たちは夢幻界をめちゃくちゃにしてしまい、
またもやお金を支払わなくてはなりませんでした。
こうしてたくさんの勇者たちや我々は大きな被害を受けました。
つまり、コピーツールはもちろん、これらの改造法やヒント集などは、
ソフトハウスの許可なく作られたもので、
それを使ってもまったく役に立たないばかりか、
時にはあなたたち自身に大きなダメージを与えるのです。
なぜなら、あるゲームのプログラムや、そのシステム内容は、
それを作ったソフトハウスのスタッフ以外には、わかるはずがないのです。
それなら、いったいどうすればいちばんよいのでしょう?
それはまずあなたが、
あのような怪物たちにむやみに近づかないように気をつけることです。
もちろん改造は、勇者本来の姿とは言えません。
それでももし、ゲームの世界で困ったら、
そしてあなたが勇者として恥じない冒険をしているのなら、
ソフトハウス城へ助けを求めて下さい。
我々は、きっと暖かくあなたたち勇者を向かえ入れるでしょう。
「夢幻の心臓II」では、そんな勇者たちのために、ヒント請求券をつけました。
これさえ使えば、きっと迷うことはなくなるでしょう。
また、勇敢にもヒント請求券を一枚も使わずに冒険を終えた勇者のために、
すてきな終了認定証も用意しました。
さあ、今こそあのいまわしき怪物たちの息の根を止める時です。
怪物の甘い言葉にだまされることなく、
「夢幻の心臓II」の世界をぞんぶんに楽しんでください。
そしてこのゲームを解き終わりましたら、ご意見やご感想を、
手紙かハガキでクリスタル・ソフトにお寄せください。
スタッフ全員で読ませていただき、今後の開発の参考にさせていただきます。
◎くれぐれも悪質な改造プログラム・ヒント集業者や、
雑誌の改造記事などにまどわされないよう、ご注意ください。
勇敢なる戦士たちへ