タイムリープ原体験『カサブランカに愛を』シナリオログ

カサブランカに愛を 殺人者は時空を超えて
シナリオログ

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発売元:シンキングラビット
発売日:1986年9月
定価 7200円

 88、98、MSX2、68、X1、FM-73DOWindowsでリリース。
(ワープロ機やフューチャーフォンアプリ版も存在していた)

 

※以下ログについて

このページにまとめたシナリオログは、
基本的に88版をログに落とし込んでいるが、
シナリオを完全補完するため、一部68版から引用している。
ゲーム中のテキストは黒字。
捕捉として加筆したものは色のついた文字で書かれている。
当然ながらネタバレになっているので、
これからゲームをプレイする方には不向きな内容になっている。
未プレイの方は読まない事をオススメする。

 

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~68版マニュアル記載のプロローグより~

ジェリー・ランドルフはシカゴにある新聞社
デイリー・カサブランカに勤める女性記者である。

入社して3年目になる彼女は一通り記者としての言い分も備えているが、
もっとも彼女がこの新聞社を選んだ理由が、
ただ好きな映画と同名だったからという事実は誰にも話していない。
ともかく彼女に会った人の多く~特に男性は~彼女の聡明さと、美しさで、
記者としての才能以上に評価しているようだ。
彼女の方も仕事に生活にそれをおおいに利用して役立てていて
~そこが彼女の聡明と言える点なのだが~、

彼女流に言わせると、「武器は利用しなくちゃ。」ということになる。
そんなある日、
彼女とハイスクール時代からの無二の親友メイ・エルガーが行方不明になった。

ここ3年来、習慣にならっていた彼女との週末の電話が途絶え、
心配しているところに彼女からの日記が送られてきたのだった。
日記には彼女の父親が科学者で時間に関する研究をしていることや、
その研究を軍部に狙われ脅迫されていること、
さらに手段を選ばない彼らの魔の手が
いつか自分の身に及ぶかもしれないというようなことが記されていた。

彼女は早速、同僚の記者ロイ・スティーブンスに相談した。
ロイは彼女が入社した時に、新設にアドバイスをした先輩記者である。
最近は表面上、ふたりの立場が逆転しているように見えるが、
彼女に言わせると彼は古いタイプの記者だそうだ。
もっとも、そう言う彼女を彼は嫌がっている様子もなく、
かえって喜んでいるようにも見えるが……。

日記を読み終えた彼をさそって、
早速ゲイルズバーグの彼女の家へ向かうことにした。

ゲイルズバーグはイリノイ州の中程にある
古くからの町でシカゴからは南へ120マイル程の工程である。

この町は戦火の影響もほとんど感じられない程静かで、
はじめてここを訪れた人はレンガ作りの街路や
昔のままの古い家並に古き良き時代を見い出し、

このアメリカにおいてさえ歴史の中の自分をあらためて感じ驚かせる、
そんなたたずまいを見せている。
彼女の家はブロード街を東に外れた所にある
フィアーズヒルと呼ばれる小さな丘のふもとにあった。

彼女の家はこじんまりとした2階建てで、
あたらしく白いペンキで塗り直された壁が、

周囲の家並の落ち着いた色彩とアンバランスな対照を示していた。
ジェリーはドアの前に立ちノックしながら4年前ハイスクールの卒業式の帰りに、
ここでメイと二人で写真を撮ったことを思い出していた。
それは胸のロケットの中に、今でも二人微笑んでいる。
彼女がそっと胸のあたりを押さえた時、家の中から音がしてドアが開いた。

 

~ゲームスタート~

 

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エドガー博士の研究所です。
前にドアがあります。

--私は手元の日記を見た。
メイ・エルガーの日記です。
ここにはジェリーへの通信文として、
エルガー博士の研究を軍部が狙っていることや、
そのため彼女自身にまで魔の手がのびている事が書かれています。

--さらに私は手元のペンダントを見た。
ハート型をした小さな銀製のペンダントです。
開くようになっています。
中には、ハイスクールを卒業した時にメイ・エルガーとふたりで撮った写真が入っています。

 

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--私は研究所の扉をノックした。
「はい。どちらさまでしょうか?」
--私は名前を名乗った。
「お嬢さんのお友達ですか。」
--私は彼の名前を聞いた。
「レイノルズといいます。」
--私はおもむろに日付を聞いてみた。
「今日は15日です。」
--そして日記を見せた。
「お嬢さんが行方不明!?どうぞお入り下さい。
(エルガー博士は)研究室にいらっしゃいます。
今日は誰ともお会いになりません。
お嬢さんが誘拐だなんて・・。」

 

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エルガー博士の研究所です。
ここは居間です。正面と左手にドアがあり、右に階段があります。

 

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メイ・エルガーの部屋です。机とベッドが置いてあります。
窓から裏山が見えます。

(机には)引き出しがいくつかあります。
引き出しの中に額に入った写真があります。

 

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メイ・エルガーの17、8才の頃の写真です。
ハイスクール卒業の時に撮ったものでしょう。

 

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研究所の西にいます。
少し離れていますが左手には上品な家と、正面には裏山の一部が見えています。

 

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--私は窓を覗き込んでみました。

 

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あっ!大変です。博士が血まみれで倒れています。
早くレイノルズに事件を知らせなければ!

 

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「あなた方ですか?どうぞ。」
--私は博士の事を告げた。
「本当ですか!大変だ。入って下さい。」

 

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(研究室へ)ドアを開けて入りました。
研究室です。博士が倒れています。
そばには見慣れない大きな機械と裏庭へ続くドアがあります。
--博士のそばに寄りました。
間違いなくエルガー博士です。
博士は胸にナイフを突き立てられて死んでいます。
ただ不思議なことに抵抗した様子がありません。
しかも穏やかな死顔です。
死体のポケットに鍵の束があります。
鍵束とナイフを取りました。

 

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研究所の裏庭です。正面に裏山が見えています。
足跡は丘から研究所に向かって付いています。
恐らく犯人が残したものだと思われますが、
おかしなことに研究所から出た足跡はありません。

 

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丘の頂上です。
小さな池があり樹木が生い茂っています。
不思議なことに足跡は池の辺から、突然始まっています。
まるで犯人は空中から現れたようです。
くっきりと足跡がついています。男性の足跡のようです。
おや?こんな所に丸められた新聞紙が落ちています。
丸めて捨てられていたのでしわになっています。
部数の少ない地方新聞のようですが、
不思議なことに日付けが30年も前の1916年6月15日になっています。
小さな記事として時間制御に関する理論が発表された事が書いてあります。
編集者はケニー・ニコルスとなっています。

 

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(まわりを見ると)道具箱があります。
(道具箱の中に)釘抜きがあります。

 

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大きな機械です。
中に椅子があり人が入れるようになっています。
外側には多くのスイッチが付いて、
入り口の左手にはダイアルとメーターのようなものが付いています。
(機械に入ろうとすると)「危険です!入らないで下さい。」
レイノルズが慌てて飛んで来ました。

 

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エルガー博士の書斎です。机と本棚があります。窓からは裏山が見えます。
本棚を開けました。たくさんの学術書が並んでいます。どれも難しそうです。
まったく分からない本ばかりです。おや?小説も並んでいます。
小説を取りました。
H・G・ウェルズの空想科学小説です。
あっ!本の間に手紙がはさまっていました。
誰からの手紙でしょうか?エドガー博士宛となっています。
手紙の内容はドイツ語で書かれてあり読めません。
(本棚から)雑誌を取りました。
タイムという雑誌です。
特集は第一次大戦後の世界情勢と政治です。

 

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上品でとても素敵な家ですが少し変わった造りです。
あなたは西を向いています。
ドアをノックすると「どうぞお入り」と言う声が中からしました。

 

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車椅子にすわった老婦人がいます。
優しそうな目でこちらを見ています。
あなたは西を向いています。
(私が名前を告げても)彼女はやさしく、うなずいているだけです。
--あなたのお名前は?
「いずれ分かりますわ・・。」
--私は彼女にペンダントを見せた。
「まあ!素敵なペンダントだこと。
きっといい事があるわ、大切にしなさいね。
そう、あなた方にいいものをあげましょう。」
そう言って彼女は時計をくれました。
彼女の優しい表情が印象的です。
金製の懐中時計です。何故か針が止まっています。
--ありがとう
「いいのよ。気にしないで・・。」

 

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植木屋の前にいます。
季節がら色とりどりの花が鉢に咲いています。
店の主人がこちらを見ています。
あなたは南を向いています。
--私は植木屋に時計を渡した
「いいのかね。もらっても。」彼はお礼に花束をくれました。
--私は慌てて花束を返した
「さっきの時計が惜しくなったんじゃろ。
まあいい、時計を返してやろう。
花束もいい。あんたらにやるよ。」
--ありがとう
「なんの。おやすい御用じゃ。」

 

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廃屋の前にいます。
かなり以前から使われてないようです。
あなたは東を向いています。
どうにかして入ったら?

 

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--私は釘抜きで板を取り除いた。

 

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廃屋の中です。薄暗くて良く見えません。
あなたは北を向いています。
目の前に棚があります。そこに何か乗っています。
お酒があります。ほこりをかぶっています。
お酒を取りました。

 

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「あなた方ですか?どうぞ。」
--この酒をどうぞ。
「酒はやりません。」
--この酒をどうぞ。
「お酒は止めてますので・・。」
--この酒をどうぞ。
「ちょっとなら・・。一応いただきます。」

 

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博士の研究室です。
大きな機械と庭へ続くドアがあります。
死体はすでに病院に運ばれました。

 

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大きな機械です。中に椅子があり人が入れるようになっています。
外側には多くのスイッチが付いて、
入り口の左手にはダイアルとメーターのようなものが付いています。
メーターには8桁の数字で19450615と表示されています。
メーターの数字をダイアルで合わせるようになっています。
どのようにダイアルを合わせますか?ダイアルは8桁の数字のようです。
--私はダイアルを「19160615」に合わせた。
OK!メーターを合わせました。
--私は機械の中に入った。
OK!でもレイノルズが心配そうに見ています。
機械の中にいます。周りでブーンという音や、カチカチと機械の作動する音がします。
目の前に大きなスイッチがあります。
(スイッチを押すと)鋭い金属音と共に機械全体が振動しました。
何か作動したようです。
凄い振動です。おや?目の前が急に明るくなってきました・・。

 

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そう思ったとたん、二人は草むらの上に投げ出されました。
いつの間にか外にいます。
正面には裏山が見えていますが、何だか変です。

 

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目の前にのどかな景色が広がっています。
草原と山裾が見えています。

 

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家の前にいます。正面にドアがあります。
あなたは東を向いています。
1945年で廃屋だった家です。

 

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「はい。何か?」
「僕に何か用ですか?できたら手短に・・。」
(名前は)ケニー・ニコルス、よろしく。」
「読者の方ですか。どうぞ入って下さい。」

 

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ケニー・ニコルスの家にいます。作りかけの新聞が所狭しに置いてあります。
新聞を作る機械の音がします。
エルガー博士なら、この裏山の上に研究所があります。
でも彼は人嫌いで会ってくれないでしょう。
道も通行止めにしてあるぐらいですから。」
新聞を見せると彼は、忙しそうな手を止めて話してくれました。
--私は写真を見せた。
エバンスさんの所の娘さんです。いい娘ですよ。」
「あ、そちらは裏庭です。別に何もありませんよ。」
--私は雑誌を見せた。
「信じられない・・。これは君達が書いたのか。
この雑誌は30年後の事まで書いてある。
予想で書いたものだとしたら、すごい分析能力だ。
TIME?聞かない名前だな。
イギリスのTHE TIMESとは違うようだし・・。」
--私は雑誌を彼に譲った。
「本当にくれるのですか。どうもありがとう。資料として大切にしますよ。
君達なら彼も嫌がらないでしょう。
エルガー博士の家ならこのドアから出て一本道です。」

 

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道が山の頂上へと続いています。
穏やかな日和です。


家の前にいます。
正面にドアがあります。
留守でしょうか、(ノックをしても)返事がありません。
(ドアは)鍵が掛かっていて開きません。

 

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(鍵束を使って)鍵を開けました。

 

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--私は家の中に入った。
ここは書斎です。机と洋服ダンスがあります。
(タンスの中には)何枚かの服が掛かっています。
タンスの奥に丸めたコートがあります。
コートを広げると、べったりと血が付いています。

 

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--私はとある家の前にやってきた。何度もノックすると女性が出てきた。
「何か用でしょうか?」
「何か私に・・・?」
(名前は)マーシャ・エバンスといいます。」
--私はエルガーとの関係を聞いた
「私、学校を卒業したら彼と結婚するのよ。」
--私は写真を見せた。
「あら?私・・。でもこんな髪型したことないわ。」
--私はコートを見せた。
「これはエルガーのコートですわ。
あっ!血が・・。彼は今、ここにいます。
彼が何かしたのでしょうか?
昨日から態度が変なのです。
どうぞお入りになって下さい。」

 

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マーシャ・エバンスの家のここは応接間です。若きエルガー博士がいます。
あなたは南を向いています。
「ご用件は?」
(私の名前は)エルガー。クルツフォン・エルガーです。」
--私は事件について教えた。
「どうして・・。それを。」
--そして日記を見せた。
「そうだったのか!するとあなた方は・・。」
--さらに手紙を渡した。
エルガー博士は手紙を読み終え顔を上げました。
「そうですか、あなた方は1945年から来られたのですか。
すると、30年後に私を殺す犯人を追って来たのですね。
もうお分かりでしょう・・彼を殺した犯人は目の前にいます。
そう、この私です。
私は長い間、時間を制御する研究をしてきました。
そして最近、ようやく試作機が完成したのです。
実験動物による理論の裏付けも終わり、
後は自分で実験台になるばかりでした。
ただ軽い気持ちだったのです。
私は装置を通して30年後の自分を見てしまいました。
それは見てはいけないことだったのです。
なんと30年後の自分は軍部に協力し、
この機械を軍事兵器として再び作っているのです。
再び、と言いますのもこの実験後、
私はこの研究を闇に葬るつもりだったのです。
平和主義者の私にとって、
この機械が兵器として使われることほど恐ろしい事はありません。
最終兵器としての力がこの機械にはあります。
私は悩みました、
たとえ30年後とは言え自分自身が変わってしまうことに絶望してしまったのです。
悩んだあげく、私は自分の人生に決着を付けるために30年後に向かったのです。
私はナイフを新聞紙に包んで持って行きました。
その頃、研究所は丘の下に移っていたので丘を下り裏庭に回りました。
裏口を壊して研究室へ入ろうと思っていたのです。
だが裏口まで来てみるとドアは開いていました。
私は、そっとドアを開け中を伺いました。
するとそこに30年後の自分が、こちらを背にして立っていました。
私はナイフを握り締め向かって行ったのです。
私があと3フィートくらいまで近付いた時、急に彼が振り向きました。
私はとっさにかざしたナイフを振り下ろしました。
気が付くと彼の胸にナイフが深々と突き刺さり絶命していたのです。
その時、ドアの方から人の声がしたので、
私は急いで機械のメーターを合わせようとしました。
もちろん、この時代に戻るためです。
私は我が目を疑いました。
驚くべきことにメーターは、
私が帰るべき1916年6月15日にすでにセットしてあったのです。
その瞬間、自分が大きな間違いを犯していることに気が付きました。
彼の運命は彼自身が一番よく知っていたのです・・。
何故なら彼にとってその日の私の行動は、
すでに彼自身が30年前に経験していたことだったのです。
彼はすべてを知っていた死を受け入れたのです。
私にとってそれは不可解な事でした。
手紙を読むまでは・・。
手紙を読んであげましょう。
これは30年後の私からの手紙です。」
そう言って彼は手紙を読み始めました。
「若き日のエルガー
自分の行動に決して悩む事はない。
人生とは素晴らしい舞台、
時間はかくも巧妙な伏線を張った物語を用意して我々を楽しませてくれるではないか。
私は君を待っていたのだ。
私には娘がいる。
もちろん君の娘でもあるわけだが、私にとってかけがえのない存在なのだ。
その娘が軍部の手によって軟禁状態になっている。
私の研究を軍事目的に利用しようとしているのだ。
君は私が悪魔に魂を売ってしまったと思ったことだろう。
軍の脅迫は自殺さえ許さない程、巧妙に圧力をかけているのだ。
だが、私には唯一つの希望があった。
それは1945年6月15日に君が来ること、
そして30年前の自らの手を借りて人生を終わらせることが、
今の私に残された唯一の希望であり、誇りなのだ。
私は何一つ変ってはいないつもりだ。」
手紙を読んでくれた若きエルガー博士は顔を上げ、
「ありがとう。
君達が手紙を持って来てくれたおかげで誇りを失わずに済みました。
私はこの研究をひそかに処分することにします。
本当にありがとう。」

「そうだ。あなた方を1945年に送り返さなければ・・。
これは研究室の鍵です。
機械の使い方はお分かりですね。
メーターは15061945にセットして下さい。
それであなた方の時代に戻れるでしょう。」
そう言って研究室の鍵をくれました。
あなたは失わないように鍵束の中に通しておきました。
「平和主義を貫くために殺人とは皮肉ですね。
そうだ、これを持って行って下さい。
人類が大人になった時に役立つでしょう。」
そう言って書類を渡されました。
難しい方程式や記号が書かれています。
内容はまったく分かりません。
恐らく博士の研究に関係があるのでしょう。
--私は写真を見せた。
「これが娘!?母親に似てとても素敵じゃないか。」
--私はお礼の言葉を述べた。
「いや、礼を言わなくてはならないのは僕の方です。」

 

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--玄関先で再びマーシャを呼んだ。
「本当にありがとう。30年後の彼の機械で来られたのでしょう。
すべてエルガーから聞きました。これを・・・。
私達のことを書きました。読んで下さい。
でも読むのは、あなた方の時代に戻ってからにして下さい。お願いします。」
そう言って手紙をくれました。

 

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--私は新聞社に戻った。
「あっ、君達か。君達に相談があるので待ってたんだ。まあ入れ。」

 

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「君達を待っていたんだ。
あの雑誌を見せてもらったが、お二人はジャーナリストとしても一流だ。
(彼はなにか誤解をしているようです。)
どうだ?僕と組んで新聞社を作らないか。
君達がいればシカゴでも通用する。」
「それはできません。
ご好意はうれしいのですが、
僕達はもうすぐ遠い所へ帰らなければなりません。」
あなたは答えました。彼は、
「それは残念だな。
(彼はしばらく考えて)そうだ、こうしよう。
僕は君達が帰って来るのを待つことにする。
先にシカゴで会社を作っておくよ。
いいかい、忘れないでくれよ。我々3人の会社だ。
だから君達に会社の名前を付けてほしい。」
あなたは思わずジェリーを見ました。
彼女の目が、いたずらっぽく笑っています。
すべてを理解したようです。
「勿論、カサブランカよ!
デイリーカサブランカ。それしかないわ。」
あっけに取られているケニーをよそに、あなたと彼女は笑いました。
「ケニー、約束するよ。
僕らは必ず帰って来る。
僕達の会社だ。
たとえ何年後になろうとも・・。
ただその時はわかるようにしておいてくれよ。
書類が何かで・・。」
「心配症だな。
よし分かったこうしよう。
会社のロビーに僕の肖像画を飾ることにしよう。
その絵の裏に君達のことを書いた書類を間違いなく隠しておくよ。
そこまでする必要はないと思うが、君達の気が済むならそうしよう。
しかしなるべく早く戻って来いよ。」
二人はケニーにお礼をいい、別れを告げました。

 

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山頂にある小さな家のなかにいます。
ここは居間のようです。

 

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(鍵を開けて)研究室に入りました。
若きエルガー博士はこの機械で1945年に来たのでしょう。

 

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以前に博士の研究室で見た機械とまったく同じ形をしています。
--私は15061945にダイアルを回した。

 

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機械の中にいます。
周りでブーンという音や、カチカチと機械の作動する音がします。
目の前に大きなスイッチがあります。
(スイッチを入れると)鋭い金属音と共に機械全体が振動しました。
何か作動したようです。
そう思ったとたん、すごい音と熱を感じました。
だんだん目の前が暗くなって、そのまま二人は気を失ってしまいました。

 

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ふと、気が付くと天井が見えます。
どうやらベッドの上に寝かされているようです。
博士の機械に入ってスイッチを入れたとたん、
強い衝撃と共にすごい音がしたことまでは覚えていますが、
その後どうなったのか分かりません。
無事、1945年に戻れたのでしょうか?
でも、ここはいったい・・。

 

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部屋の中にいます。左手にドアがあります。
--部屋をでると・・

 

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「あら。もうだいじようぶですの?
本当にびっくりしましたわ。
すごい音がしてあなた方が突然、空中から現れたんですもの・・。
何をなさっていたのです?」 おなかの大きい女性がいます。
赤ちゃんがおなかにいるようです。
「気にしなくていいわ。
困っている人を助けるのは当然ですもの。」
(名前は)リザ・ニコルスといいます。」
--ありがとう
「いいのよ。でも本当に良かったわ・・。」
--今日は何年ですか?
「カレンダーがそこの壁にあるわよ。」
何ということでしょう!
1885年6月15日となっています。
機械の故障でしょうか?
30年過去に来てしまったようです。
--私は新聞を見せた。
この新聞日付けが間違ってるわ。
今は1885年よ。
(お腹の子は)来年、生まれる予定です。楽しみだわ。」
あなたは気が付きました。
彼女はケニー・ニコルスの母親だったのです。
--私は彼女に花束を渡した。
「まあ、ありがとう。いい香り。」
彼女が花束に見取れている隙に外に出ました。

 

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ケニー・ニコルスの実家です。
ただし彼はまだ生まれてませんが。
あなたは東を向いています。

 

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山の頂上付近にいます。
1916年のこの位置から飛ばされて倒れていた場所です。
おや?博士にもらった書類がこんな所に落ちていました。
きっと助けられた時に落ちたのでしょう。

 

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広い牧場があります。
60年後に博士の研究所の建つべき所です。

 

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何だか見覚えのある家が建っています。
この家はたしか1945年に博士の研究所の西にあった家です。
見た時のままの姿でひっそりとたたずんでいます。
あの時は上品な老婦人が時計をくれました。
ただ不思議な事は1916年には無かったはずですが・・。
あなたは西を向いています。

 

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1945年に訪ねて行った時のままです。
ドアの形も小さなキズや汚れまでそのままのような感じです。
あなたは西を向いています。
ドアをノックすると「どうぞお入り」と言う声が中からしました。

 

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「よかったわ。また会えて・・。
驚いてらっしゃるのは良く分かります。
説明して上げましょう。
お見せするものがあります。
そちらの部屋へどうぞ・・。」

 

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あっ!ここにも博士の所にあった物と同じような形をした機械があります。
細部の形は流線型になっていてかなり違いますが、まぎれもなく同じ機械です。
いったい、どういうことでしょう?

 

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「私はあなた方を連れ戻しに来ました。
あなた方には、まだ大切な役目が残っているのです。」
彼女はやさしい口調で続けました。
「歴史はあなた方を必要としています。
それは未来にとって大事なことなのです。
エルガー博士は私達の時代では近代科学の父と呼ばれていました。
彼は知っての通り1945年に亡くなっています。
しかし彼の研究成果は二人のジャーナリストに託されました。
その二人は平和のため、忠実に博士の意思を守り続けたのです。
彼等は沈黙を守りました。
世界中から争いが無くなる日まで待ったのです。
それは博士の死後、実に58年たった後ようやく実現されました。
その時すでに二人は年老いていましたが、
意思は彼等の娘に受け継がれていたのです。
博士の意思は守り通されました。
お分かりでしょう。
その二人のジャーナリストこそあなた方なのです。
あなた方は帰らなくてはなりません。
未来はすでに決まっています・・。
そう、そうからもう一つ、いいものをお見せしましょう。」
そう言って彼女は、握り締めていた手をそっと開けました。
それはジェリーの持っているものとまったく同じ形のペンダントでした。
ジェリーはそのペンダントを手に取ってふたを開けました。
中を見て彼女は驚きました。
そこにもメイとジェリーが二人仲よく微笑んでいるではないですか!
ペンダントは同じ形の物ではなく、そのものだったのです。
「私の名はイルザ・スティーブンス。
そのペンダントは母の形見です。
お分かりでしょう。
私がその二人のジャーナリストの娘・・。」
彼女は微笑みながら
「なんて挨拶したらいいのかしら?
私はあなた方の娘です。」
その時、隣の部屋からかすかな振動と音が聞こえてきました。
二人が確かめようとすると
「心配しないで。
外へ出てごらんなさい。
あなた方の時代、1945年に戻ってきました。
私もそろそろ戻らなければ・・。
2013年はとてもいい時代ですのよ。」
二人がドアを出ようとした時、彼女が呼び止めて言いました。
「忘れないでイルザって名付けてね、
この名前を気に入っているの・・・パパ、ママ。」
そう言いながらウインクしました。
「ごめんなさい。
私にはもう時間がありません。
3年後にまた会えますわ。
ただし、その時の私はまだ赤ちゃんですけど・・。」

--そうだ!帰る前にマーシャに貰った手紙を読んでみよう。
「あなた方が帰られてから、すべてエルガーに聞きました。
でも彼はひとつだけ私に隠していることがあります。
彼から自分はあと30年の命だが、ぜひ結婚して欲しいと言われました。
なんて馬鹿なんでしょう。
彼に言ってやりました。
未来は既に決まっていますのよって。
それは彼の口癖なんですもの。
人は運命を知ると不幸になると言われます。
彼が私に隠そうとしていることを私は知っています。
それは私が彼より先に病死してしまうこと・・。
もちろん彼もそれを知っています。
でも私が知っているということを彼は知りません。
短命だが結婚して欲しいというのは、本当は私の台詞なのです。
私が知らないと思って彼は嘘をついています。
彼が私を愛してくれていることが痛いほど分かる嘘です。
ああ!なんてやさしい嘘でしょう。
心から彼を愛しています。
未来が決まっていることが今の私には素敵に思えます。
あなた方には心からお礼をいいます。
本当にありがとう。
私はとても幸せです。
まだ見ぬ私の娘が、
あなた方のような友達を持ってることを知って安心しました。
あなたの時代に戻って娘に会ったら、
私達のラブ・ストーリーを聞かせてやって下さい。
どうかこれからも娘をよろしくお願いします。
マーシャル・エルガー 1916年6月15日。」

 

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「イルザっていう名は君のアイデアかい?」とロイ。
「もちろんよ。あなたカサブランカを見た?
ほら、アカデミー賞を取った・・、
イングリット・バークマン主演の映画じゃない。
私、3回も見たのよ。
映画の中で彼女が演じていたイルザ・ランドがとても素敵だったわ・・。
私ずっと憧れているの。
いつか私に娘ができたらイルザって名付けようって決めてたのよ。
いいでしょう?
今の会社も名前が気に入って入社したぐらいですもの。
もっとも、
私が会社の名付け親だったなんて言っても誰も信じてはくれないでしょうけど・・。
さあ、これから忙しくなるわね。
私の両親にも会ってもらうわ。
それから結婚式でしょう。
どこに住みたい?家も探さないと。
イルザにもっと聞いておけば良かったわ。」

 

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「あれ?そうだロイ。
私、まだあなたからプロポーズの言葉を聞いてないわよ。
決まってるからって省略してはだめよ。わかった?」
「こんな形で将来を知っちゃったらプロポーズしにくいな。照れるよ。」
「だめ!ロマンチックにプロポーズしないと結婚しないわよ。
未来を変えると大変なことになるんだから・・いいこと!」
・・・・・・・END

THANK YOU FOR YOUR ADVENTURE MIND.
WE ADMIRE YOU AS AN EXCELLENT DETECTIVE.
WE HOPE TO SEE YOU AGAIN.
#3 AS TIME GOES BY.

presented by soft office THINKING RABBIT CO.,LTD
produce &directed by HIROYUKI IMABAYASHI.
programmed by MASAHARU OHNO.
system cordinator by MASAHARU OHNO.
computer grapher by SHINKICHI ABE.
graphic designer by HITOMI KAMASU.
illustrations by AKIRA YONEDA.
assisted by KATUHIKO SADAMOTO.
assisted by HIROTO NAKAMURA.
assisted by JUNKO TAKEDA.
assisted by JUNJI KUMON.
assisted by ☆

後日談・・。
あれから会社に戻った二人は早速、肖像画を探しました。
しかし肖像画はもとより、もしやと思って調べた会社の古い記録にも、
そのような記述はまったく見当たりませんでした。
しかもその記録によると、
ケニーは会社を作った2年後に社長の座を部下に譲り会社を辞めてしまったらしく、
それ以後の記録にも彼の事はありませんでした。
ただひとつ分かったことは、
彼が持ったままになっている過半数の株券によって、
もし彼が生きていれば、事実上会社の実権はまだ彼にあるということ、
しかも28年間に渡る株主配当とその利子が
莫大な金額になっているという事実だけでした。
彼は名誉と財産を捨て何処へ消えてしまったのでしょう。
生きていれば60才になっているはずです。
「彼は今、何処にいるのかしら・・。
約束を破るような人じゃないと思うの。」
ジェリーはロイに言いました。
「きっと彼の身に何か起こったんだろう・・。」
「残念だわ!一気に副社長ぐらいになれたかも知れないのに。」
「いいじゃないか。
僕は君との事が分かっただけで最高さ。
他には何もいらない。」
「うれしいわ。私もあなたと同じよ。
ただ、あのうるさい編集長をあごで使いたかっただけよ!」
「おいおい、君は男をあごで使うのが夢なのかい?
先が思いやられるな・・。」
「だいじょうぶ。心配しないで・・。
やさしくあごで使ってあげるわ・・。」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・epilog

ちょうどその頃、
デイリー・カサブランカ社から3ブロックほど離れたメインストリートの舗道を、
あたりをキョロキョロと見回しながら歩く男の姿がありました。
彼は行きかう人々が振り返る程、古い珍妙なスタイルと、
今では誰も持たないような革の大きな鞄を抱えています。
その鞄にはたった今、
彼がバンク・オブ・シカゴの銀行員から受け取った株券と、
ほんの20万ドルばかりが入っていました・・・。

#3 AS TIME GOES BY.

今回の作品はいかがでしたか?マーシャの手紙は読みました?
エルガー博士に渡した手紙のことじゃありませんよ。
それから最後のエピローグの説明を少々。
ケニーはあの後、
エルガー博士にジェリーとロイが1945年から来たことを聞きました。
そこで彼は、自分もシカゴでデイリー・カサブランカ社を設立したのち、
彼等の後を追って1945年に行くことを考えました。
話しによれば、
カサブランカ社はシカゴで最大の新聞社になっているようだし、
持ち株と現金を銀行に預けておけば、
配当と利子だけで未来での生活はできそうです。
それよりもジャーナリストとして30年後を
自分の目で確かめたい気持ちの方が強かったのです。
彼は博士に頼んで機械を処分する前に、
会社を設立した後の自分を1945年に送ってもらうことにしました。
結局、2年後の自分を送ることになったのです。
もちろん2年後の自分は、
それを知っていますから準備を怠るような事はありませんでした。
ただ一つの失敗は、父親ゆずりの背広を着て行った事でした。
彼の父親が生前に、
たいそう自慢していた背広は当時の最高級品だったのですが・・。

【以下68版で追加されたテキスト】
あっ、そうそう。
大切なことを忘れていました。
その後、エルガー博士の死によって、
軍にとって必要のなくなったメイ・エルガーは無事に戻りました。
父親を亡くした彼女のさびしさを癒やしたのは、
ケニーが語る若き日のマーシャの話だったのです。

おや?もう最後になりました。
ケニーとメイのロマンス話は、いずれ別の機会にでも・・・。

 

 

編集後記

コマンド入力方式のアドベンチャーゲームで、画面はモノクロの渋いグラフィック。
コマンド入力方式というとギャグやコジツケに近いものが多いなかで、
本作では突拍子も無いトリックもなく、
落ち着いた画面で静かな夜にじっくりと解答を探す…という心地よい時間を過ごせる。
(とはいえ、簡単というわけではないので注意)
ただし、本作の魅力はそんなゲーム性ではなく、シナリオにある。

タイムパラドックスを使った巧妙で温かみのある終盤の展開は、
心にジーンと来るものがある。

タイムトラベルを使ったゲームはあまり多くないが、
最も成功したタイトルではないかとすら思える。

また、SFでありながらここまで落ち着いた大人の世界を構築できたのも
シンキングラビットならではだろう。

さて、本作には一つだけツッコミどころがあった。
物語がこういう展開になったのですっかりプレイヤーも忘れてしまう事なのだが、
本来の目的は親友メイ・エルガーを救い出す事にあったはず。
で、エンディングを迎えても軍に拉致されたはずのメイがどうなったか
まったく触れられていないのだ!

そこで俺様は考えた。
「もしかしてその後、他機種に移植された際に加筆されているのではないか?」と。
88版が発売されたのは1986年。
それから3年後の1989年にX68000版が発売されている。
都合の良い事に俺様は68版を持っている!
結果、88版で謎だった事件の解決は68版の最後で捕捉されていた。