魅惑のアドベンチャーブック大紹介(3)「キングスナイト クレア姫を救え」

~紹介~

 

SQUARE GAMEブックス
キングスナイト クレア姫を救え
著者:MDクラブ(奥山浩幸、真野 博、荒井孝之)
イラスト:CATALAN ART CLUB(山本 敏、質流竜馬)
扶桑社/680円

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~紹介~

スクウェアファミリーコンピューターで発売した
オリジナルソフト第1弾『キングスナイト』。
(ちなみにファミコン参入第1弾はゲームアーツからの移植作『テグザー』)
のちのスクウェアの作風を体現したようなファンタジー世界は、
当時魅力的に思えた。(とくに箱絵ね)
結論から言えば、
システムはほぼシューティングなのにRPGと言いはったり、
そのシューティングとしてのデキも悪かったりした本作だったため、
『ファイナル・ファンタジー』のように発展するタイトルにはならなかったが、
その魅力的な世界観をゲームブックとして残していたのが本書である。

 

~冒頭~

「ほら、急げ!」
運命の女神が鼻先でサイコロを振ろうとしているのに、
ぼくときたらその日は朝から村はずれの丘で、愛犬ティムとじゃれあっていた。
全く無邪気なもんだ。
ぼくの名はレイジャック。
まわりのみんなは、めんどくさがって『レイ』って呼んでる。
片田舎に住むごく普通の農家の息子だ。
丘からは、北の山々の素晴らしい眺めが見える。
そこから一本道が、ぼくの村へ真っ直ぐ伸びてきている。
その一本道をいま、すごい勢いで走って来る影があった。
騎士だ!三人の騎士が、馬を駆って近づいてくる。
片田舎のぼくのような男の子にとって、騎士は憧れの的だ。
年に一度か二度、調査のためにやってくる騎士たちを見ると、
それはもう『胸ときめく』なんてもんじゃない。
「帰るぞ!」
ティムに言い放って、くるりときびすをかえすと、ぼくは一気に丘を駆け下りた。
もちろん、村に帰って、騎士たちを近くで見るためだ。
村へ着くと、もう騎士たちが先に着いているのだろう。
広場の方がやけに騒がしい。
あちこちに、走って広場へ向かう人の姿がみえる。
ぼくも急いで広場へ向かった。
広場の中央では、村長でもある長老のロジが、
なにやら騎士のリーダーと話をしている。
今日の騎士は、いつも調査に来るときのように赤いヨロイではなく、
頭からつまさきまで真っ黒だ。
黒いカブトに、黒いヨロイ。
おまけに黒いマントまではおっている。
どうやらこの国の兵士じゃないみたいだ。
それじゃなんでこんな片田舎の村に……?
ウゥ~。
突然、ぼくの脇でおとなしくしていたティムがうなった。
「……レイ、レイジャック、騎士の方がお呼びだ。こちらへまいれ」
えっ!ロジが手招きした。横にいた騎士が、愛想笑いを浮かべて近づいてくる。
『危険だ!逃げろ!』
どこからともなく、声が響く。
まわりを見回しても、みんなシーンとして、ぼくのことをみている。
誰も口を開いたようすはない。それに騎士に呼ばれるなんて……。

 

~内容~

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原作がファミコンという事もあり、
前回、前々回で紹介した本よりも対象年齢が低く設定されている。
原作では4人のパーティで進めるゲームだったが、
本作ではナイトのレイジャック、シーフのトビーのみが登場する。
クレア姫が囚われている城に入るには3本の剣が必要になる。
剣(厳密には剣を含めたアイテム)を集めていく過程で洞窟に入ったり海に落ちたり、様々な展開が次々と起こる。
徒歩でどれくらいの距離歩いてるんだよ!というツッコミは野暮ってもんだ。(^^;
しおりになっているアイテム表で拾ったものをチェックする事と、
体力点をメモするだけで遊べる気軽なシステム構成になっている。
ただ分岐内容がイマイチつまらないものが多いな。
推理よりも直感だけで決めなければならないものがほとんどだから。