新説・蜘蛛の糸

天国は何ともいえない良い匂いが漂い、
花は咲き乱れ、気候は絶えず穏やかな場所でした。
お釈迦様がある日、蓮の葉の間から地獄を覗き見ると、
一人の男が地獄で苦しんでいました。
お釈迦様はおもむろに蜘蛛の糸をたらし、
その男を救い出してやろうとしました。

地獄はいつも真っ暗で、
異臭がし、凍えるような寒い夜と、
焼けるような日中を過ごさねばなりませんでした。
そんな生活に耐えきれずにいた男の目の前に蜘蛛の糸が垂れ下がってきたのです。
遮二無二その糸をよじ登ります。
そしてとうとう天国へと辿り着きました。

天国では人々が口々に言っていました。
ここは匂いがきつすぎる。
花も見飽きた。
季節の変化がないとつまらない。
それを見て男はこう言いました。
「なんだ、ここも地獄か。」