かわいくないアイドルも成り立つ理由

近年では「かわいくないアイドル」は珍しくない。
ユニットにいるメンバー全員が
「特にかわいくない」なんていうケースもザラである。
昭和の時代。アイドルは選ばれしスターだった。
なのでその中でちょっと見劣りするようなのがいるとすぐに脱落していった。
だがそこに天才が現れた。
秋元康である。
彼は「おニャン子クラブ」をプロデュース。
番組でオーディションをし、集められた彼女らは、
「芸能人ではない素人の女子大生たち」というコンセプトで売りだされた。
今まで手の届かなかったスターだったアイドルよりも、
どこにでもいる手の届きそうな女子大生になる事でファンの心を掴んだのだ。
アイドルは“選ばれしスター”でなくてもビジネスになる。
それを証明したのが「おニャン子クラブ」なのであった。
 
次のブレイクスルーは再びオーディション番組で起こった。
1997年、テレビ東京の『ASAYAN』で誕生した「モーニング娘。」だ。
彼女たちはオーディションで落選したいわば落ちこぼれ。
プロデューサーのつんくは、
落第生の彼女らの成長とサクセスストーリーを仕立て上げてみせた。
成長過程を共有する事でファンもより彼女達に感情移入する。
最初は偶然の産物であったが、それはやがてハロプロという巨大帝国を形成していく。
 
この現象をさらにビジネスとして昇華させたのが秋元康だ。
おニャン子クラブ」の「手の届くアイドル」というコンセプトをさらに具現化し、
劇場を作り「会いにいけるアイドル」を生み出した。AKB48である。
そして素人同然の頃から成長していく過程を見守れる仕組みを構築したのだ。
さらにメンバーを集める際に秋元康は嗅覚を発揮。
「総合点ではなく誰かが絶対入れたい」という子を合格させた。
結果的に「誰もがかわいいと思えるメンバー」ではなく
「個性のあるメンバー」が集まった。
全ての人から好かれないが、ハマる人は凄くハマる個性。
そういう強烈な個性を持ったメンバーが大勢いれば
結果的に幅広いパイを拾えるというわけだ。
 
このようにしてアイドルは「総合的なかわいさ」ではなく
「個性」が評価される時代になった。
(もちろんカワイさも個性の一つだ)
これが「かわいくないアイドルも成り立つ理由」である。