昔々、ある村に心の優しい浦島太郎という若者がいました。
浦島太郎が海辺を通りかかると、子供たちが大きなカメをいじめていました。
「子供たちよ、亀をいじめるのはやめるんだ。」
「嫌だよ。これは俺達が捕まえた亀だ。どうしようと、俺達の勝手だ。」
浦島太郎はお金を取り出すと、子どもたちに差し出して言いました。
「それでは、このお金をあげるから、僕にその亀を売ってくれないか?」
「わかったよ。この亀は譲るよ。」
こうして浦島太郎は、子供達から亀を助け、
海へと逃がしてやりました。
一方、子供達は興奮していました。
「憂さ晴らしで亀をいじめていたら金になったぞ!」
「あの浦島太郎という男、随分と気前がいいじゃないか。」
「そうだ。明日も浦島太郎の前で動物をいじめてみよう。また金をくれるかも知れないぞ。」
そう言って子供達は浦島太郎を待ち構えると様々な動物をいじめました。
そのたびに浦島太郎は子供達にお金を払って動物達を逃がしていました。
ある日、子供達のもとに動物界の王様が訪ねてきました。
「子供さん達、私達は随分とあなた達にいじめられました。
もうこれ以上いじめるのはやめて下さい。」
すると子供達は言いました。
「わかった。では2つだけ条件がある。
1つ目はいじめないかわりに僕達にお金を毎月払うこと。
そのかわり僕達以外にいじめられそうになったら守ってあげる。
2つ目はこれからは浦島太郎の前でいじめられたフリをすること。
この2つを守るだけで君達動物は永遠に平和が訪れるんだ。」
動物界の王は感謝して帰っていきました。
それからというもの、子供達のもとには沢山のお金が集まり続けました。
一方、浦島太郎は動物を助けるお金を作るために、
昼夜問わず働き続け、若くして白髪頭の老人のような姿に変わっていました。
しかしこれで良かったのです。動物達が平和である事には変わりないのですから。
おしまい。