ジャッキー・チェン烈伝「ジャッキー・チェンの醒拳」


ジャッキー・チェンの醒拳
1983年制作
香港
[原題]龍騰虎躍
[英題]Fearless Hyena II
監督:チェン・チュアン
製作:スー・リーホワ
脚本:米奇
製作総指揮:ロー・ウェイ
上映時間:90分
日本公開日:1986年3月1日公開
出演:ジャッキー・チェン(ロン役)、ワイ・ティンチー(ヤス役)、
チェン・ホイロウ(ペイ役)、ジェームズ・ティエン(ナン役)、
チェン・ウェイロー(天鬼(極悪兄弟)役)、リー・クン(地鬼(極悪兄弟)役)、
ディーン・セキ(店主役)
製作年度のジャッキー年齢:29歳頃

 

まずこの映画の経緯から書かねばならない。
ロー・ウェイとの10本契約を完了したジャッキーだったが、
うかつにもロー・ウェイの次作である「醒拳」の出演契約をしてしまう。
話によるとこのときジャッキーは白紙の契約者にサインしたという。
ゴールデンハーベスト社へ破格で移籍する話が進んでいたジャッキー。
ローに退社を申し出るが、ローは違約金を請求。
もともとの契約書は違約金10万香港ドルだったが、
ローは1000万香港ドルに改ざん(^◇^;)。
ところがこの改ざんを依頼されたスタッフがジャッキー側につく。
「これで裁判されても勝てるな」と思ったジャッキーは
スチール撮影のみを終えていた「醒拳」の本撮影をボイコット。
ゴールデンハーベスト社で移籍1作目の製作に入ってしまう。
ローは黒社会に依頼してジャッキーを拉致し、再契約を迫る。
ジャッキーの価値を大きく評価していたゴールデンハーベスト社は、
ローが改ざんした1000万香港ドルを支払い、
晴れてジャッキーはゴールデンハーベスト社と専属契約する事となる。
また、その間にジャッキーへ危険が及ぶ事を懸念し、
会社はジャッキーを渡米させている。
このとき撮影されたのが「バトルクリーク・ブロー」と「キャノン・ボール」だ。
ちなみにこのとき黒社会との間に入って和解の手助けをしたのがジミー・ウォング
のちにジャッキーが「ドラゴン特攻隊」「炎の大捜査線」といった
ジミー・ウォング主演映画に参加しているのも、このときの恩返しだ。
さて話はロー・ウェイ側に戻る。
この流れで「醒拳」を撮れなくなったロー・ウェイだったが、
「ブレイク中のジャッキー人気にあやかってもう一儲けしたい」と考えたのか、
「クレイジーモンキー笑拳」「龍拳」「鬼手十八飜」などのNGシーンを切り貼りし、
足りないシーンはジャッキーのそっくりさんを使って追加撮影するという離れ業で
「醒拳」を完成させてしまう。
NGシーンありきの映画であるため、
「クレイジーモンキー笑拳」や「龍拳」に登場するキャストが
似たような服装で登場するのもそのためである。

それらの経緯を踏まえて本編を観ていこう。

 

六合八卦拳の使い手であるチン兄弟は、なぜか極悪兄弟に狙われている。
なぜ狙われているのかの説明は無い(^◇^;)
この極悪兄弟の一人が笑拳で殺し屋ルウを演じたヤム・サイクンで、
本作でも全く同じ容姿で登場するw
極悪兄弟はコンビネーション拳法みたいなのでグルグル回る秘技を使うのだが、
これがまた胡散臭くて楽しいw
互いに子連れのチン兄弟は、別れ別れの道へと逃亡する。
それから何年かのち。
二人の子供は青年へと成長。
兄ペイの息子はヤス。弟ナンの息子はロン(ジャッキー)。
ともに練習嫌いで怠け者でギャンブル好き。
ヤスの舎弟がイカサマ商売をしているところに通りがかったロン。
逆に金を巻き上げた事で、ロンとヤスは賭け勝負。
互いに親戚だと知らないまま出会う。
ロンは父親に言われて赤鼻と口ヒゲの変装をして町を歩いている。
「極悪兄弟に見つからないため」というのは建前で、
実際は「偽ジャッキーだとバレないように」だと思う(爆)
このときロンの父親ナンは極悪兄弟に襲撃されて焼き殺されていた。
ロンは父の仇を探すためさらに顔がわからないヒゲ面の変装で
カンフーアクションを見せるのだが、どうみても別人です(^_^;)
石丸博也の声でやっとロンと同一人物だとわかる始末(爆)
たぶん赤鼻の方の偽ジャッキーはあんまりカンフーアクションが出来ないんだろうw
カンフーアクションの間、
時代錯誤の歌う「冒険王」という軽快な曲が挿入されているのだが、
ジャッキーじゃない人のアクションに
「冒険、冒険、冒険、冒険王ー♪」とか歌われてもなあ(^◇^;)
ロンは叔父のペイと合流。
ペイを演じるのは「クレイジーモンキー笑拳」の8本足の麒麟
ロンは赤鼻としてヤスやその舎弟に醒拳を教えるが、
それがきっかけで極悪兄弟に見つかり、
舎弟、ペイ、ついでにペイらを匿っていた頭首の娘リンも殺される。
この次のシーンでは復讐のために修行するロンとヤス。
いや、説明省き過ぎでしょ(^◇^;)
この修行シーンも未公開素材が少ないためかすぐ終わるw
そのため、このすぐあとのシーンで
急に強くなっているロンとヤスに違和感ありまくりw
極悪兄弟の金色服の部下達との戦い。
ブービートラップに引っ掛かり、次々と残酷死。
最後に極悪兄弟と戦うのだが、本物ジャッキーの顔アップのシーンと、
笑拳のラストバトルに新規追加シーンを組み合わせているのだが、
ジャッキーがヤスと同じ画面に収まるシーンは過去映像にも存在しないため、
たくみに後頭部しか見せない偽ジャッキーが演じているw
そして極悪兄弟を倒したジャッキーが膝から崩れるシーンを終わるのだが、
笑拳のラストと全く同じだ。デジャブーw

 

かくしてジャッキーが一度も撮影に参加していない
ジャッキー映画が生まれたわけだが、
意外と初めて見るジャッキー本人のシーン(他作品のNGシーン)も多くて、
ファンとしては嬉しい貴重映像となっている。

この頃、日本はジャッキーブームも定着し、
拳シリーズ最新作として「醒拳」も公開予定だった。
その撮影時期も見込んで
「ジャッキーチェンに会いに香港へ行こうツアー」など組んでしまう始末。
その頃ジャッキーは渡米しており、
ツアーに参加したファンはジャッキーに会えないというズンドコ騒ぎに。
でも日本は日本で、本編を60分に編集した上で
「ジャッキーチェンの醒拳」などという邦題をつけ、
さもジャッキー作品であるかのように公開し、
ビデオリリース時には「新・クレージーモンキー 大笑拳」などと言う
デタラメなタイトルをつけるしで、
インチキ映画の神輿を担いだように思える。

なお、日本での公開時はジャッキー映画のハイライトシーンを編集した
ジャッキー・チェンスペシャル」という映像、
またはアニメ「北斗の拳」との同時上映作品として公開されているので、
本作単品での映画ポスターは存在しない。