「魔法使いの妹子(でし)」シナリオログ


「魔法使いの妹子(でし)」
ツクモ
PC-8801
1986年5月(同人ソフト版は1985年)
3500円

本作はコマンド入力式アドベンチャーゲームで、
日本語の名詞や動詞を単体で入力するだけで反応してくれるお手軽な仕組み。
コマンドで「セーブ」「ロード」と入力すると進行を保存・再開する事も可能。
以下は入力したコマンドは省力して、展開のみを残したログである。

 


リア「こんにちわ、あたしリアです。
マニュアルのオープニング漫画を読んでくれたかな?
読まないと魔法が使えないわよ!
魔法は大事だからちゃんと覚えてね」
さあアドベンチャーの始まりです。
Hit Any Key!!

 


旅を続けていたリアは小さな村の入口にやってきました。


村の広場です。
村人達が集まって何やら相談をしているところです。
村長「おおこれは旅の魔法使い。あなたの噂はかねがね伺っておりますぞ」
リア「あたし、魔法使いじゃありません。
それに噂になるような事何もやってません!」

村長「いやいやご謙遜を。
その身なりを見ただけでも貴方のお力は知れるというもの」

リア「何を言ってるですか!」
村長「いや、実はほかでもない。
北の岩屋にトロールが棲み着いてしまって難儀していますのじゃ。

貴方様のお力で退治して頂きたい」
リア「冗談じゃないわ!」
村長「そこを何とか。助けると思って。魔法使い様」
リア「あたし魔法使いなんかじゃないって言ってるのに!」
村長「いやいや貴方は断れませんぞ・・・」


リア「キャー、何するのよ!!」
村長「さあ、ご謙遜などせずに行きなされ」
リア「あたし嫌だって言ってるのに!!」

 


深い切り通しです。
東と西はとても登れそうにありません。

 


トロール「おお、これは美味そうな娘だ。
村人め、ちゃんと生贄を寄越すとは関心関心」

リア「あー、あの村人達め、そういう魂胆だったの!」


呪文を唱えるとトロールの腹巻きが透けて見えました。
リア「あ、デベソ!やーい、デベソー!!」


トロール「このアマ・・・!
ヘソの事はパパとママにしか知られた事は無かったと言うのに!」

リア「ワァ、大きな目玉・・・目玉焼きにちょうど良いわね」


トロールは巨大な目玉焼きになりました。
リア「おそろしい魔法だったんだわ・・・」

 


村人「村長、本当です!トロールはいません!!」
村長「うむむ、貴方にそれほどの力があったとは・・・
生贄にしようとした無礼は許して下され。
重ね重ね恐縮じゃが、
実は東の城にトロールより凶悪な悪霊が棲み着いているのじゃ。

ついでに退治してくれぬか?」
リア「冗談じゃないわ!なに考えているの、この狸ジジイ!」
村長「いや、お怒りはごもっとも。ワシも村のため、辛いのじゃ。
どのみち悪霊がこの辺りの空間を封鎖しているから、
倒さぬ限りこの村から外へは出られんのじゃ」
リア「!!!!」
村長「とりあえず東の城に行ってみなされ。
悪霊は見たものを即座に殺したりはせぬゆえ・・・」


リア「もう!こうなったら何でもやってやるわよ!!」

 


立て札があります。
リア「な、何よコレは・・・」


立て札の後ろに斧があります。
リア「何でこんなところにあるんだろう・・・」
斧を手に入れました。

 


亀「ヒエー、お嬢さん。良いところに来た。
ひっくり返ってしまって難儀しています。助けて下さい!」


亀「ああ、助かった。死ぬかと思った」
亀「ああ、亀は辛い。ひっくり返ったらそれっきり」
亀「貴方、亀に生まれなくて良かったですよ」
亀「亀の良いところと言ったら家がいらない事だけ」
亀「何でコケたんだろ。この辺に次元の断層でもあるのかな・・・」
亀「亀がひっくり返ってメカ。なんちゃって。
おっとこれはファンタジーでしたな。メカは似合わないと」
亀「お礼に龍宮にでも行きますか。年取るのは嫌だ?ああ、ごもっとも」
亀「悪霊の事は知りません。わたしは。西の泉の女神なら知ってますがね」
亀「カムシ?・・・なんですか、それは」
亀「もう話す事はありませんよ」
亀「話す事は無いっつってるのに」
亀「貴方も疑り深い人だね」
亀「・・・」
亀「貴方のしつこさに免じて隠しコマンドを教えてあげましょう。
“タイダン”って打ってみなさい」

笛有「わはは。こういうところで対談やるとは前代未聞。世界初」
小松「ったりめーだ。このアホ」
笛有「一般版、お買い上げの皆さん。ありがとうございました」
小松「我々は帝国ソフトと申します。
主にコミケット等でソフトを売っています。

今回は金欠対策のため一般販売する事になりました。
お気に召したかどうか・・・」

コミケではもっと安く売っていたんですが・・・
一般販売するとなるとこんな値段が限界です」

「我々は安く簡単でちょっと面白いエンターテイメントを目指しています」
「この値段でも良いから、もっと出して欲しいという方。
アンケートにその旨書いて送って下さい」

「続けて一般販売するかどうかはアンケート次第ですが、
コミケットには出ます。

機会がありましたら帝国ソフトのブースまでよろしく」
「宣伝でした。ところでどうも今回のストーリー、
ラストのツメがイマイチだったような気がして」

「うーむ。推理物の雰囲気を出すのは無理があったか・・・」
「唐突なんだよね、あの本体」
「ああ、楽しいアドベンチャーと言うのはむつかしい」
「しかしアンタ。これ対談っつうほどのものじゃないじゃないの」
「うー。文句言ったらあかん」

 


いわくありげな泉です。
リア「斧か・・・泉に落とすと女神がどうとかって言う話があったわね。
投げてみよう」


女神「これ、娘。お前が落としたのはこの斧ですか?」
リア「あ、金の斧!女神様、あたし悪霊退治してるんです」
女神「おお、それならこの斧をあげよう」
金の斧を手に入れました。

 


妖精がいます。
妖精「こんにちは。貴方がトロールを倒したという旅の魔法使いですの?」
リア「こんにちは、あたしリアよ。もうそんなこと知ってるの?
話せば長くなるけど、あたし魔法使いなんかじゃないの。困ってるのよ」
妖精「まあ、大変ね。
でも本当に悪霊を何とかしないとここからは出られないのよ。

みんな困っているの。村人達もどうにも出来ないし・・・
貴方が何とかしてくれれば良いのだけど色々と・・・」
リア「あの悪霊、何者なの?」
妖精「わからないわ。
でもあの姿は仮の姿で、どこかに本体がいるらしいんだけど」

リア「本体ねぇ・・・」
妖精「金が大好きだって噂よ」
リア「あなた、倒し方を知らない?」
妖精「ごめんね、知らないわ。ただ、悪霊は金は好きだけど、
金の斧にだけは弱いって話を聞いた事があるけど・・・
あたしが知ってるのはそのくらいよ」
リア「金の斧?どこにあるのかしら」
妖精「あたしもこの辺はあちこち行ってるけど、見たこと無いわ」
リア「金って言えば、あなたカシムって知ってる?」
妖精「カムシ?・・・そんなもの見たことないわ」
リア「どうすればいいのかしら・・・」
妖精「わからないわ。でも貴方だけが頼りなの。頑張ってね」

 


カエルが草むらからじっとリアを見つめています。


カエルが巨大化しました。
リア「キャー、カエル嫌い!!」


リア「あ、悪霊?!」
悪霊「フフフ、貴様の弱点、しかと見届けたぞ。
あとをつけていた甲斐があったわい。」

 


小さな城の入口です。東に入口が見えます。


城に入った途端、空中から笑い声が聞こえてきました。
悪霊「フフフ、この娘が。この俺も倒そうと言うのか」


悪霊「う、金の斧・・・」


悪霊は消え去りました。
リア「ふう、終わった・・・わりあい呆気なかったわね」

 


突然、家の影から男がリアにナイフを突きつけました。
男「おい、ねぇちゃん。金出せや」


男「わー、俺のナイフが火ぃ吹いた!!!」


男「俺が悪かった!!もうこんな恐ろしいナイフはいらない。
お姉様に差し上げます!」

ナイフを手に入れました。

 


村長「なに悪霊を消しなさったと?そんな筈はない。
まだ結界は解けていませんぞ。
もう一度、城に行ってみなされ」

 


呪文を唱え終わった瞬間、空中から金塊が降ってきました。
リア「キャー、やった!!カシムってこの事だったのね」

 


村長が金塊に興味を示しています。
村長「魔法使い。その金塊どこで手に入れなすった?
私にも金塊の在り処を教えて下さらぬか?」

リア「たぶんもう出ないと思うわよ」
村長「それは残念。その金塊、私に下さらぬか?」
リア「ダメ!これは魔法使いの先生に叩きつけてやるの!!」


村長がリアにカエルを突きつけてからかっています。
村長「ホーレ、カエルだぞー。怖いだろう」
リア「やだ!!・・・この非常時に何するのよ!」


村長「き、貴様・・・なぜ私が悪霊の本体だと分かった?!」
リア「金塊なんか欲しがるからよ!」
村長:悪霊「バカな、金塊なら誰でも欲しがるではないか!」
リア「あなた、金の斧は欲しがらないじゃないの!」
悪霊「う・・・そうだったのか・・・」
リア「まだあるわ。
あたしがカエルに弱いって知ってるのは悪霊だけのはずよ!」

悪霊「うむむ・・・そこまで気がついていたとは。私の負けだ」


村人「ああ、村長が悪霊の本体だったなんて。
私達、ちっとも気が付きませんでした。

そう言えば最近村長、様子がおかしかったですわ・・・」

 


リアは礼を言う村人を振り切り村を後にしました。


リア「先生どうしてるかな・・・」
リアの旅はまだ続きます。でもひとまず・・・Happy End!!

 


本作は帝国ソフトという同人サークルが作った同人ソフトである。
それをツクモが一般流通で委託販売したような形であった。
(九十九電機秋葉原のパソコン量販店だ)

ゲームプレイ中には魔法の呪文を唱えるシチュエーションが何度か訪れるが、
その呪文はマニュアルに描かれた漫画を読まないと
知る事が出来ないようになっている。


これはマニュアルプロテクトとして組まれたものなのだろうか?
ゲーム中に唐突に「カムシ」という言葉が登場するが、
これもマニュアル漫画にしか登場しない名詞である。

ゲーム中に対談コーナーがあり、
まだプレイ途中なのに「ラストのツメがイマイチ」などと
結末の反省を読まされたりと
同人ソフト特有の破天荒さを感じる事ができる。
ちなみにこの対談で登場する「笛有」と「小松」という人は同一人物である。
(余談だが「同人ソフト」という呼称を生み出したのも帝国ソフトだと言われている)

本作には「東国の使者 魔法使いの妹子II」という続編があるが、
そちらは同人ソフトとしてのみのリリースで、市販ソフト化はされていない。

本作のシナリオとプログラムを担当した小松浩章さんと、
グラフィックを担当した上野健司さんのコンビは、
その後、アスキーからリリースされた
「カオスエンジェルズ」を生み出したのであった。


MEMO
九十九電機のゲームソフト販売は本作が最後になっている。
・本ソフトの5インチフロッピーディスク版は、88でもFM-7でも遊べる。